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火龍
PHASE-134【バインドボイス】
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「ふう!」
思っていてもしかたない。眼前の相手はまだまだいるんだ。
あと、六体。
「一気に行こう。こいつでどうだ」
もう一人の頼りになる渋い声。
ゲッコーさんが虚空から何かを取り出したようだ。
目を向ければ、諸手で持つのは、XM25IAWS。
エアバーストグレネードランチャーだ。
俺もゲーム内でよく使っていた。
別称はパニッシャー、罰を与える者。
中二精神をくすぐるネーミングである。
ポンって発射音からグレポンと呼ばれるようになったという由来があるらしいが、このXM25は他のグレポンと違い、パシュン、パシュンと、キレのある音を出す。
気持ちよくトリガーを引くゲッコーさん。
黒いの近くで曳火。つまりは空中炸裂する。
炸裂が扇状に広がれば、その衝撃で黒いヤツが吹き飛んでいく。
素晴らしき性能。
素晴らしきオーバーキル。
25㎜の口径から、次々にキレのある音が響けば、響く分だけ黒いのがいなくなる。
つまりは全てを倒した事になる。
箱形マガジンには六発が入っており、ベルが倒した二体。ゲッコーさんのワンショットワンキルで万事解決だ。
比べて俺は、刀で少しずつ削る事しか出来なかった……。
「なんも出来なかった……」
「いや、相手の動きを止める事はやっていた。それに、ゴブリンなどよりも素早く動く相手に、よく対応していたぞ」
「そうか」
ベルに言われれば自信もつく。
というか、最近はよく褒めてくれる。
「さて、いつまでもこの陰湿な穴蔵に、世界の調律を担う存在を閉じ込めておくのはよくないよな」
メタリックな赤色は美しい。
四大聖龍の一柱を救いだそう。
火龍の体をがんじがらめにしていた黒い帯状のものも、クリスタルと、それが変化した存在がいなくなったら消えた。
後はあの額にある、楕円のクリスタルを破壊すれば完了だろう。
「お~い」
いつまで寝てんだ? 俺たちが――、ほぼゲッコーさんが倒してくれたんだぞ。
それに結構な戦闘音だっただろ、さっさと起きろよ。終わらせようぜ。
「――お?」
大きな瞼が見開けば、ギョロリと動く瞳はルビーアイ。
ライトノベルの金字塔に出て来る、超常的存在の魔王の名の如し。
俺を見る赤い瞳の中央にあるのは、縦長の黒目。
爬虫類のような黒目が、俺を凝視している。
こうやってドラゴンの瞳やら体を見てると、俺の世界で空想の生物を生み出した人達って、蛇やらワニからヒントを得たんじゃなくて、俺同様に、異世界に転生してたんじゃないかと思ってしまうね。
ま、それはさておき、この世界の調律者が俺を凝視してんだ。礼儀は大事だな。
「初めまして、俺、いや僕は、遠坂と――――」
「トール! さがれ!」
どうしたベル? 火龍の前でそんな大きな声を――――。
「ゴグラァァァァァァァァァ」
おっと、その火龍が誰よりも大声ですよ。
しかもなんで俺に向かって、鋭利な爪が生えた前脚を振り下ろそうとしているのか。
まるで、俺を叩きつぶそうとしているようじゃないか……。
「ほう!?」
とっさに横っ飛びで回避。
さっきまで立っていた所には、ドズンと大きく鈍い音を響かせた前脚が叩き付けられていた。
衝撃で地面が揺れる。
「グァァァァ――――」
ええ……。これがこの世界を調律する立場のドラゴンなの?
全然、意思疎通がとれないんだけど……。
完全に敵対行動だし。
「バァァァァァァァァァァァ――――」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
耳が潰れる咆哮だ。
一狩行こうぜ! な、ゲームを彷彿させるバインドボイス。
思っていてもしかたない。眼前の相手はまだまだいるんだ。
あと、六体。
「一気に行こう。こいつでどうだ」
もう一人の頼りになる渋い声。
ゲッコーさんが虚空から何かを取り出したようだ。
目を向ければ、諸手で持つのは、XM25IAWS。
エアバーストグレネードランチャーだ。
俺もゲーム内でよく使っていた。
別称はパニッシャー、罰を与える者。
中二精神をくすぐるネーミングである。
ポンって発射音からグレポンと呼ばれるようになったという由来があるらしいが、このXM25は他のグレポンと違い、パシュン、パシュンと、キレのある音を出す。
気持ちよくトリガーを引くゲッコーさん。
黒いの近くで曳火。つまりは空中炸裂する。
炸裂が扇状に広がれば、その衝撃で黒いヤツが吹き飛んでいく。
素晴らしき性能。
素晴らしきオーバーキル。
25㎜の口径から、次々にキレのある音が響けば、響く分だけ黒いのがいなくなる。
つまりは全てを倒した事になる。
箱形マガジンには六発が入っており、ベルが倒した二体。ゲッコーさんのワンショットワンキルで万事解決だ。
比べて俺は、刀で少しずつ削る事しか出来なかった……。
「なんも出来なかった……」
「いや、相手の動きを止める事はやっていた。それに、ゴブリンなどよりも素早く動く相手に、よく対応していたぞ」
「そうか」
ベルに言われれば自信もつく。
というか、最近はよく褒めてくれる。
「さて、いつまでもこの陰湿な穴蔵に、世界の調律を担う存在を閉じ込めておくのはよくないよな」
メタリックな赤色は美しい。
四大聖龍の一柱を救いだそう。
火龍の体をがんじがらめにしていた黒い帯状のものも、クリスタルと、それが変化した存在がいなくなったら消えた。
後はあの額にある、楕円のクリスタルを破壊すれば完了だろう。
「お~い」
いつまで寝てんだ? 俺たちが――、ほぼゲッコーさんが倒してくれたんだぞ。
それに結構な戦闘音だっただろ、さっさと起きろよ。終わらせようぜ。
「――お?」
大きな瞼が見開けば、ギョロリと動く瞳はルビーアイ。
ライトノベルの金字塔に出て来る、超常的存在の魔王の名の如し。
俺を見る赤い瞳の中央にあるのは、縦長の黒目。
爬虫類のような黒目が、俺を凝視している。
こうやってドラゴンの瞳やら体を見てると、俺の世界で空想の生物を生み出した人達って、蛇やらワニからヒントを得たんじゃなくて、俺同様に、異世界に転生してたんじゃないかと思ってしまうね。
ま、それはさておき、この世界の調律者が俺を凝視してんだ。礼儀は大事だな。
「初めまして、俺、いや僕は、遠坂と――――」
「トール! さがれ!」
どうしたベル? 火龍の前でそんな大きな声を――――。
「ゴグラァァァァァァァァァ」
おっと、その火龍が誰よりも大声ですよ。
しかもなんで俺に向かって、鋭利な爪が生えた前脚を振り下ろそうとしているのか。
まるで、俺を叩きつぶそうとしているようじゃないか……。
「ほう!?」
とっさに横っ飛びで回避。
さっきまで立っていた所には、ドズンと大きく鈍い音を響かせた前脚が叩き付けられていた。
衝撃で地面が揺れる。
「グァァァァ――――」
ええ……。これがこの世界を調律する立場のドラゴンなの?
全然、意思疎通がとれないんだけど……。
完全に敵対行動だし。
「バァァァァァァァァァァァ――――」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
耳が潰れる咆哮だ。
一狩行こうぜ! な、ゲームを彷彿させるバインドボイス。
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