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火龍

PHASE-120【ミッソー】

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「なんだ?」

「ゲッコーさんならすぐに理解しますよ」
 光が消えていく――。
 
 そして現れたのは――――。

「筒? なのか?」
 口を最初に開いたのはベルだ。

「なるほど――」
 続くのはゲッコーさん。
 
 ミズーリの百を超える各対空砲が消え去り、12.7㎝は八門が削減。

「1944年使用から、1983年使用になったわけだ。1991年に始まった湾岸戦争ガルフウォーにて活躍したミズーリか」

「その通りです」
 やはりゲッコーさんは俺なんかより遙かに詳しい。

「主砲の40.6㎝九門だけでも相手は太刀打ち出来ないのに、ここにトマホークとハープーンの両ミサイル搭載型とは。オーバーキルだな」
 渋く重厚なゲッコーさんの口ぶりから、ただならぬ力を更に解放したと理解したのか、ベルの喉がコクリと動いた。
 
 ベルが生唾を飲んでしまうほどに、今のミズーリはこの世界における、完全なるバランスブレイカーとなってしまった。

 トマホーク巡航ミサイルが搭載された、四連装装甲ボックスランチャーが八基。

 ハープーン対艦ミサイルが搭載された、四連装ランチャー四基。

 取り除かれた対空兵器の代わりに、四基のファランクス20mmCIWSが搭載。
 多分だけど、ファランクスだけでも容易くシーゴーレムは破壊できるだろう。

 この世界でのオーバースペック。オーバーテクノロジー。オーバーキル。
 それが、今のミズーリだ。
 
 ――まずは小手調べ。
 
 ――ディスプレイに映る敵の反応。そこに視点を合わせれば、ロックオンの文字。

「対艦ミサイルハープーン。四連装から一斉発射!」
 ピシュゴォォォォォォ―――――。
 と、耳を劈くような轟音とともに、勢いよく炎を発しながら軌跡を残しつつ飛翔する。

 ミズーリは発射の時の白煙に包まれる。
 ミサイルを肉眼で追えば、低空飛行で目標に向かっていく。

「シースキマーと呼ばれる超低空飛行だ」
 ゲッコーさんが知識を俺たちに与えてくれる。

「あれは以前、ゲッコー殿がヒッポグリフを落としたのと同じ原理ですか」

「ああ、デカさも威力も段違いだけどな」
 ベルは目にしている経験から飲み込みが早いが、火を尻から出して生き物のように相手へと迫っていく、鉄の巨大な矢を目にしたコクリコは、あまりの現実離れした存在に棒立ち。

 魔法こそ俺らの世界では現実離れだが、コイツにとっては、科学技術は現実離れのもののようだ。
 
 ミサイルの映像は、プレイギアのディスプレイの端っこにワイプで映し出されている。
 ご丁寧に、カウントダウンまで表示だ。

「――――弾着まで十秒」
 カウントを始める。
 海面付近を高速で飛翔するハープーン。

「8――7――6――5――4――3――弾着――――今」
 それっぽく言うと、ハープーン四機は目標の手前で跳ね上がり、シーゴーレムの頭上に目がけて叩き込まれる。
 ポップアップからのダイブである。
 
 一気に四隻を破壊した。
 相手である魔王軍はいったい何が起こったのか理解できないであろう。

「港を攻撃してきたシーゴーレムの射程が二百メートルとするなら、ハープーンのSSM型は百キロ以上。相手からすれば、40.6㎝以上のアウトレンジからの、一方的な攻撃を受けることになる」
 最早、勝負にすらなっていないと、ゲッコーさんは煙草を吸い始める。
 
 勝負になっていないとしても、こっちが圧倒的な力を持っているとしても、手抜きは出来ない。

「やるからには徹底する」
 自分に言い聞かせると、

「リロード」
 言えば、ミサイルは再装填。

「まったくこの艦は怪物だな。元々、怪物ではあったが、お前の力によって、手のつけられん怪物になっている」
 紫煙が俺の方に流れてくる。
 
 慣れたもんで、煙草の臭いをそこまで不快には思わなくなっている。
 嘆息の含まれた驚きも仕方が無い。
 
 これはストーリーモードのクリア特典、完全お遊び仕様。
 なので、クールタイムがバカ早いのだ。
 
 四連装ランチャーには、直ぐさまハープーンが再装填される。
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