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PHASE-84【天才は参考にならない】

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「ベルはどうやって炎を」
 まあ、この世界とは関係ないが、天才がどういう風な感覚で炎を操っているのか、後学のため質問すれば、

「ボッと出して、バッと放つだ」
 ――……後の銀河帝国皇后は言った。【凡人が天才の発言、行動などを真似しても、天才と同じ結果は得られない】――――と、
 駄目だな。天才は感覚でやっちゃうからな。いちいち考えなくても出来ちゃうんだよな。
 故に天才なんだが。
 天才のことわりの外にいる俺では、ベルの域には到達できない。
 凄すぎて、全く参考にならないってやつだ。

「まず修行の一環として、瞑想をして、考えるのをやめる。無になるのです。大気と自分を一体化させるようなイメージを――――」
 でたよ矛盾! 考えるのをやめなきゃいけないのに、大気と一体化するイメージってなんだよ。考えてんじゃん!
 こんなんなら、スキルポイント制のある異世界が良かったわ!
 ――――あ、ポイントで思ったけども、

「マジックポイントとか減るの?」

「は? 何ですかそれは」

「魔法を使い続けると、枯渇するとかって事なんだけど」

「マナが存在する限り、使えなくなるということはありません。ですが、術者は集中することで精神的に疲弊するので、間断なく使えるというわけではないですが」
 確かに、初対面の時は、次を唱えるのに隙があったもんな。
 そこを突いたら、股間を突かれたんだけども……。

「とにかくマナの存在を知ることが第一歩。トールはその一歩を踏み出しました。これからはマナを受け入れるように体を解放するのです」
 だんだんと、怪しい宗教にも思えてきたんだが……。
 とりあえずは瞑想だな。やってる内に、ピカーン! と、俺の頭上に白熱電球でも出てくれれば重畳だけどな――――。

「道が整ってきた。大道にもなっているし、この先に町があるようだな」
 そう言うと、ゲッコーさんは速度を落としていく。
 地面に目を落とせば、確かに土道から石畳になってる。
 ここからはハンヴィーだと目立つから、歩きにチェンジ。

「――この辺は瘴気はないな」

「じゃないと、私たちは行動できませんよ」

「俺たちは関係ないから」
 
「いいですね。違う世界の住人は」
 と、羨ましがってくるコクリコ。

「これから行く町は、ちょっと前に、私が寝泊まりをしていた町です。話によると、四大聖龍リゾーマタドラゴンの一柱が近海にいるとか」

「「「はあ?」」」
 コクリコの発言に三人して驚く。
 攫われた人達がどうなっているかってのが、俺たちの現在の目標だったが、いきなりの大物だよ。救い出せれば、大きな成果だ。
 だがしかし――、

「なんで知ってんだよ。町でそんな話が出てたのか?」
 一般人が知ってるとは思えないし、冒険者だって得るにしても難しい情報だと思うんだが。

「海賊ですよ」
 ――――コクリコの話を聞けば、海賊たちは魔王軍に協力をするということで、亜人やモンスターたちと共に悪さをしているそうだ。
 これからいくレゾンという港町には、海賊がたむろしていて、搾取の限りをつくしている。
 コクリコは宿屋の一階にある酒場に忍び込んで食料を漁っていたそうだが、塒としていた海賊たちが、四大聖龍リゾーマタドラゴンの話をしていたのをそこでたまたま聞いたそうだ。
 コイツ、どこにでも忍び込んでるな……。
 ウィザードっていうより、身軽だし、シーフの方が向いてんじゃないの?

「でも、大事な話をでかでかと喋るってのが、海賊の底が知れているってもんだよな。なあ、ベル」

「なぜ私にだけ賛同を求めたのか分からんが、確かに。だな」

「いやいや、中々に狡猾でもあるかもな」
 ここでゲッコーさんが反論。
 なぜかと問えば、魔王軍に協力するという条件を出したことで、海賊たちは魔王軍の中でも一定の立場を確立させた。
 逆らって戦えば負けるのは必至。
 投降して配下となると、魔王軍の下っ端のさらに下に格付けされたはず。 
 それを回避したんだろうと、推測だ。
 だからこそ、亜人やモンスターを使って搾取も出来る。だそうだ。
 これには二人でなるほどと、首肯した。

「だが、トールの言は正しい。俺のは海賊たちの身の振り方であって、滑りやすい口とは関係ないからな」

「でも、狡猾だから、底が知れていると思わないで、慎重に対応しろって事でしょ」

「そういう事だ」
 肝に銘じておきましょう――――。



「…………さびれてるな……」
 港町レゾン。
 王都より西にある、海と面した町。
 豊富な漁獲から、小規模な町ではあるものの、旅商人の往来もあり、大変に栄えていたとの事。
 乾物などがヘルガー峡谷まで伸びた川を利用して、王都まで輸送されていたそうだ。
 しかし、それも過去のこと――――。
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