49 / 1,668
ギルドを立ち上げてみよう
PHASE-49【前夜】
しおりを挟む
「さあ、明日には敵が攻めてくるでしょう。皆さん急場で集ってはいますが、今までの経験を活かしてくださいよ」
この先生の発言に驚きを禁じえないのは仕方が無いだろう。
攻めてくるって言い切ったからね。なんで分かるんだ? とも思っているようだけど、間者を捕らえる人物なのだから、情報もすでに得ているのだと冒険者たちは見解したようで、無用にツッコミを入れることもなく、
「やってやろうぜ! 俺たちの力を勇者とその一行に見せてやろう」
先ほど戻したばかりのカイルが、早速、鼓舞している。
それに呼応する面々。暑苦しいが、頼れる声だ。
王都の兵士では、こういう声を聞けなかったから。
でも――――、
「我々も負けてられん」
と、一人の兵士が発せば、賛同する他の兵士たち。
今までと違って活力が漲っている。
「お互いに触発されるといい。カイル」
「は!」
おう、まるでベルの忠実な部下みたいになってるな……。
「今までは有り余る膂力に頼って生き抜いてきたようだが、刀剣の使い方ではトールの技量に劣る」
え!? そうなの!
「膂力を更に活かせるように、振りの鍛錬を共に行え」
「分かりました!」
てなわけで――――、
夕暮れまでキエェェェェェェ! って叫び声が王都に響き渡った。
明日には攻めてくるって事で、俺も兵士も冒険者も、気合いを入れて振りに振った。
大軍ともなれば、不安に押しつぶされそうになる。
それを振り払うように、振って振って振りまくる。
「……痛い……」
手の皮がベロベロだ……。
こういうのを目にすると、チート能力にしとけばよかったと、思ってしまう弱い俺がいる。
「見せてみろ」
ふぇ!? 白魚のような細くて綺麗なベルの手が、俺の手を掴んでくれる。
ドキドキが止まらない童貞がここにいる。
傷薬を塗ってくれた。
「戦う者の手になってきたな」
口元に笑みを湛えてくれる。
チート能力にしとけばよかったと思ったな――――。あれは嘘だ。
最高の美人様に治療してもらえるイベントは、チートボディでは発生しないからね!
「ふむふむ。急場しのぎですが、現状での人材を適した所へと配置できました」
小屋の中で、いつもの四人で明日のことで話し合い。
相変わらずな固形レーション。
ゲーム内には、ヒートパックに入れて暖める、ビーフシチューハンバーグとご飯ってのもあるんだけどな……。それ出してくれないかな。
匂いで他の方々に気付かれると気まずいから、出してくれないんだろうな。
「――――頼りになる音だ」
もぐもぐと甘ったるいレーションを食べながら、小屋の中まで響いてくる冒険者たちのいびきは雷の如し。
小屋の隣に持参したテントを設営して、そこで寝食。
「明日の戦いを終えたら、ここらにギルドに加入している者たちの宿場兼、クエストの依頼と受注を担う受付も含めた、建物建設を開始しましょう」
もう、横文字はすらすらだ。
「一階が受付と、食事処に酒場ですね」
「酒場ですか? ふむ、いいですな。酒を飲むことで疲れを癒やしてもらいましょう。流石は主です」
ギルドといえば、酒場というテンプレイメージを発言しただけなんだけどな。
いまはまだ、小屋とテントの集合体だが、ギルドが出来たのかな?
明日は戦いだし、バタバタとしているからまだはっきりとはしていないが、俺たちのギルドは今日より始まるんだろう。
ギルド名もまだ決まっていないけど。
「荀彧殿。出来れば浴場もお願いしたい」
「そうです。それも第一に考えてください」
ベルを擁護してやる。
「お任せください。いつまでも水浴びだけでは辛いでしょうから」
「え!? 水浴び!!」
してるの! どこで!! そこはギルド名なんかより遙かに重要だよ!
「おい!」
はい、すいません……。
「というか、ベルは王城で風呂とか借りてもいいんだぞ」
「前線からは離れられん」
格好いい中佐様だ。王城から外へと繋がる門までの距離は結構あるからな。だが入浴機会が少なくて、元気が無いのも事実。うむ、乙女である。
「ジロジロと見るな」
「だい!」
蹴りが飛んでくるのだけはマジかんべんな……。全然、乙女じゃないから…………。
この先生の発言に驚きを禁じえないのは仕方が無いだろう。
攻めてくるって言い切ったからね。なんで分かるんだ? とも思っているようだけど、間者を捕らえる人物なのだから、情報もすでに得ているのだと冒険者たちは見解したようで、無用にツッコミを入れることもなく、
「やってやろうぜ! 俺たちの力を勇者とその一行に見せてやろう」
先ほど戻したばかりのカイルが、早速、鼓舞している。
それに呼応する面々。暑苦しいが、頼れる声だ。
王都の兵士では、こういう声を聞けなかったから。
でも――――、
「我々も負けてられん」
と、一人の兵士が発せば、賛同する他の兵士たち。
今までと違って活力が漲っている。
「お互いに触発されるといい。カイル」
「は!」
おう、まるでベルの忠実な部下みたいになってるな……。
「今までは有り余る膂力に頼って生き抜いてきたようだが、刀剣の使い方ではトールの技量に劣る」
え!? そうなの!
「膂力を更に活かせるように、振りの鍛錬を共に行え」
「分かりました!」
てなわけで――――、
夕暮れまでキエェェェェェェ! って叫び声が王都に響き渡った。
明日には攻めてくるって事で、俺も兵士も冒険者も、気合いを入れて振りに振った。
大軍ともなれば、不安に押しつぶされそうになる。
それを振り払うように、振って振って振りまくる。
「……痛い……」
手の皮がベロベロだ……。
こういうのを目にすると、チート能力にしとけばよかったと、思ってしまう弱い俺がいる。
「見せてみろ」
ふぇ!? 白魚のような細くて綺麗なベルの手が、俺の手を掴んでくれる。
ドキドキが止まらない童貞がここにいる。
傷薬を塗ってくれた。
「戦う者の手になってきたな」
口元に笑みを湛えてくれる。
チート能力にしとけばよかったと思ったな――――。あれは嘘だ。
最高の美人様に治療してもらえるイベントは、チートボディでは発生しないからね!
「ふむふむ。急場しのぎですが、現状での人材を適した所へと配置できました」
小屋の中で、いつもの四人で明日のことで話し合い。
相変わらずな固形レーション。
ゲーム内には、ヒートパックに入れて暖める、ビーフシチューハンバーグとご飯ってのもあるんだけどな……。それ出してくれないかな。
匂いで他の方々に気付かれると気まずいから、出してくれないんだろうな。
「――――頼りになる音だ」
もぐもぐと甘ったるいレーションを食べながら、小屋の中まで響いてくる冒険者たちのいびきは雷の如し。
小屋の隣に持参したテントを設営して、そこで寝食。
「明日の戦いを終えたら、ここらにギルドに加入している者たちの宿場兼、クエストの依頼と受注を担う受付も含めた、建物建設を開始しましょう」
もう、横文字はすらすらだ。
「一階が受付と、食事処に酒場ですね」
「酒場ですか? ふむ、いいですな。酒を飲むことで疲れを癒やしてもらいましょう。流石は主です」
ギルドといえば、酒場というテンプレイメージを発言しただけなんだけどな。
いまはまだ、小屋とテントの集合体だが、ギルドが出来たのかな?
明日は戦いだし、バタバタとしているからまだはっきりとはしていないが、俺たちのギルドは今日より始まるんだろう。
ギルド名もまだ決まっていないけど。
「荀彧殿。出来れば浴場もお願いしたい」
「そうです。それも第一に考えてください」
ベルを擁護してやる。
「お任せください。いつまでも水浴びだけでは辛いでしょうから」
「え!? 水浴び!!」
してるの! どこで!! そこはギルド名なんかより遙かに重要だよ!
「おい!」
はい、すいません……。
「というか、ベルは王城で風呂とか借りてもいいんだぞ」
「前線からは離れられん」
格好いい中佐様だ。王城から外へと繋がる門までの距離は結構あるからな。だが入浴機会が少なくて、元気が無いのも事実。うむ、乙女である。
「ジロジロと見るな」
「だい!」
蹴りが飛んでくるのだけはマジかんべんな……。全然、乙女じゃないから…………。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる