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ギルドを立ち上げてみよう
PHASE-45【訪都】
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「おお!」
話をしてから一日が過ぎ、北門の前に人が集まっていた。
本当に来た。昨日の今日でだ。
鎧皮製の軽装な鎧。重厚な金属の鎧。シーフのような身軽な装備。
冒険者然たる統一性のない装備だ。
顔に大きな傷があったり、無精髭だったり、目つきのきつい美人。見るからに荒くれ者といった感じだ。
だからこそ、心がへし折れることなく、戦い続けてきたというのも頷ける風体。
集まってきてくれたのは喜ばしいが、明らかに冒険者とは違う、襤褸を纏った流民が目立つ。
俺の世界でも難民は問題になっている。
この王都の食料状況でまかなえるのか? 以前も危惧してたけど、中にはスパイもいると思う。
これだけの人数を一人一人チェックする事は、王都の兵士では難しいだろう。
今日でこれだ。明日以降も人々が流れてくると考えられる。対応に追われるぞ。
「ふむふむ。目に力のこもったよき士がおります」
先生は壁上で、額に手を当てて眺めている。ご満悦である。
装飾の無い無骨な大剣を担ってる男に、視線が向けられていた。
どうやらあの中で、一番に目を引く人物だったようだ。
――――遠路はるばるの旅路を労う先生は、横に立つ俺の説明を行い、俺に視線が注がれる。
大抵の冒険者の視線は怪訝なものだ。アレが勇者? と、心では思っているのだろう。
「開門!」
快活良く先生の声が響くと、北門が開かれる。
勝手に開門して良かったのかとも思ったが、王様からは先日、許可を取っていたとのこと。
開いた先では炊煙が上がり、空腹であった流民が一斉に走り出した。
懸命に堰き止めるのが兵士の仕事。整列させてから麦粥を振る舞っていく。
やれやれだ。元々王都に住んでる人達だって食事を欲するのに、豪快に炊煙を上げて、住人と流民の間に軋轢が生まれそうだよ……。
冒険者の方々は流石というべきか、食事には飛びつくことなく、気になるのか、王都兵士の質を外見から値踏みしているようだ。
「これから本格的に忙しくなりますよ。主は前線で威光を見せつけてください。私は後方で人の選定と、復興の職務に従事しますので」
推挙して、適材適所に人を配置することに神がかった力を持つ先生は、早速、冒険者たちのところへと単身で駆け出していく。
全て先生に任せておけば、心配は無用だな。
駆け出していく前に、「後は間者の問題ですな」ってポツリと漏らしていたが……。
やっぱり問題なんじゃん!
でもって、どうやって対処していくつもりなのだろうか。
次の日に、選定した人材を引き連れた先生と挨拶。
一筋縄ではいかなそうな筋骨隆々な従者が二人。ギルドも正式に立ち上げていないのに、すでに取り巻きを侍らせるとは、自由を謳歌する冒険者たちを一日でまとめ上げたようだ。
その内の一人は、先日の大剣持ち。
「主は修練に励んでください」
そう言うと、先生は従者と共に、王城へ行くと言い、馬車に乗り込んだ。
修練に励んでくれと言われるので、キエ―って叫ぼうかな。
「キエェェェェェェェェェ!」
そして次の日、俺たちは広場に集められた。
ベルとゲッコーさんを横に立たせる俺。
兵に住人、王都へと流れてきた人々もおり、ガヤガヤである。
この世界は風呂に入る習慣があまりないのか、密集する人々の臭いは凄い……。
「はあ……」
ベルも精神的にまいっているようだ。不衛生なのは嫌なんだな。
よし、浴場建設を最優先にするように、先生にお願いしてみよう。
で、お願いしようとする先生が、今回の言い出しっぺ。
広場の中央にある、急ごしらえで設営された壇上に立っていた。
「え~。本日は天候に恵まれた中。皆様、お忙しいところ、ご足労いただき有り難うございます」
うん。曇ってます。雨が降りそうですよ。
先生は晴れ晴れとした笑顔ですけども。
その笑顔で集まった女性たちはメロメロだ。イケメンはやはり得だよな。
「まずは皆様にお知らせを――――」
言うと、後ろ手に縛られた五人の男たちが、壇上にあがってくる。
あがらせているのは先日、先生が連れ立っていた冒険者たちだ。
気になったのは五人の内の一人だ。濃い緑に金刺繍のはいった派手な服の男。
王様と謁見の間で一緒にいた、出っ歯の男。ミルトンだ。
ギルドを立ち上げることに、難色を示していたというおっさんだ。
そういえば、先生は何かを理解したとか言っていたが、その理解の答えをまだ教えてもらっていなかった。
捕らえたミルトンが答えに繋がるのだろうか?
話をしてから一日が過ぎ、北門の前に人が集まっていた。
本当に来た。昨日の今日でだ。
鎧皮製の軽装な鎧。重厚な金属の鎧。シーフのような身軽な装備。
冒険者然たる統一性のない装備だ。
顔に大きな傷があったり、無精髭だったり、目つきのきつい美人。見るからに荒くれ者といった感じだ。
だからこそ、心がへし折れることなく、戦い続けてきたというのも頷ける風体。
集まってきてくれたのは喜ばしいが、明らかに冒険者とは違う、襤褸を纏った流民が目立つ。
俺の世界でも難民は問題になっている。
この王都の食料状況でまかなえるのか? 以前も危惧してたけど、中にはスパイもいると思う。
これだけの人数を一人一人チェックする事は、王都の兵士では難しいだろう。
今日でこれだ。明日以降も人々が流れてくると考えられる。対応に追われるぞ。
「ふむふむ。目に力のこもったよき士がおります」
先生は壁上で、額に手を当てて眺めている。ご満悦である。
装飾の無い無骨な大剣を担ってる男に、視線が向けられていた。
どうやらあの中で、一番に目を引く人物だったようだ。
――――遠路はるばるの旅路を労う先生は、横に立つ俺の説明を行い、俺に視線が注がれる。
大抵の冒険者の視線は怪訝なものだ。アレが勇者? と、心では思っているのだろう。
「開門!」
快活良く先生の声が響くと、北門が開かれる。
勝手に開門して良かったのかとも思ったが、王様からは先日、許可を取っていたとのこと。
開いた先では炊煙が上がり、空腹であった流民が一斉に走り出した。
懸命に堰き止めるのが兵士の仕事。整列させてから麦粥を振る舞っていく。
やれやれだ。元々王都に住んでる人達だって食事を欲するのに、豪快に炊煙を上げて、住人と流民の間に軋轢が生まれそうだよ……。
冒険者の方々は流石というべきか、食事には飛びつくことなく、気になるのか、王都兵士の質を外見から値踏みしているようだ。
「これから本格的に忙しくなりますよ。主は前線で威光を見せつけてください。私は後方で人の選定と、復興の職務に従事しますので」
推挙して、適材適所に人を配置することに神がかった力を持つ先生は、早速、冒険者たちのところへと単身で駆け出していく。
全て先生に任せておけば、心配は無用だな。
駆け出していく前に、「後は間者の問題ですな」ってポツリと漏らしていたが……。
やっぱり問題なんじゃん!
でもって、どうやって対処していくつもりなのだろうか。
次の日に、選定した人材を引き連れた先生と挨拶。
一筋縄ではいかなそうな筋骨隆々な従者が二人。ギルドも正式に立ち上げていないのに、すでに取り巻きを侍らせるとは、自由を謳歌する冒険者たちを一日でまとめ上げたようだ。
その内の一人は、先日の大剣持ち。
「主は修練に励んでください」
そう言うと、先生は従者と共に、王城へ行くと言い、馬車に乗り込んだ。
修練に励んでくれと言われるので、キエ―って叫ぼうかな。
「キエェェェェェェェェェ!」
そして次の日、俺たちは広場に集められた。
ベルとゲッコーさんを横に立たせる俺。
兵に住人、王都へと流れてきた人々もおり、ガヤガヤである。
この世界は風呂に入る習慣があまりないのか、密集する人々の臭いは凄い……。
「はあ……」
ベルも精神的にまいっているようだ。不衛生なのは嫌なんだな。
よし、浴場建設を最優先にするように、先生にお願いしてみよう。
で、お願いしようとする先生が、今回の言い出しっぺ。
広場の中央にある、急ごしらえで設営された壇上に立っていた。
「え~。本日は天候に恵まれた中。皆様、お忙しいところ、ご足労いただき有り難うございます」
うん。曇ってます。雨が降りそうですよ。
先生は晴れ晴れとした笑顔ですけども。
その笑顔で集まった女性たちはメロメロだ。イケメンはやはり得だよな。
「まずは皆様にお知らせを――――」
言うと、後ろ手に縛られた五人の男たちが、壇上にあがってくる。
あがらせているのは先日、先生が連れ立っていた冒険者たちだ。
気になったのは五人の内の一人だ。濃い緑に金刺繍のはいった派手な服の男。
王様と謁見の間で一緒にいた、出っ歯の男。ミルトンだ。
ギルドを立ち上げることに、難色を示していたというおっさんだ。
そういえば、先生は何かを理解したとか言っていたが、その理解の答えをまだ教えてもらっていなかった。
捕らえたミルトンが答えに繋がるのだろうか?
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