30 / 1,668
ギルドを立ち上げてみよう
PHASE-30【壁上から王都を見てみよう】
しおりを挟む
「先生、助けてください」
単刀直入に頼めば、
「喜んで」
二つ返事ですよ。
あまりにもすんなりだから、逆に不安になったけど、プレイギアに映し出されたパラメータを見れば――――、
武力34
知力100
統率98
そして――、そして――、待ってましたよこの数字!
忠誠100
100ですよ! 流石はゲーム内で親密をマックスにして、忠誠もマックスにしただけあったよ。
「それで、ご用件は」
俺に向ける笑顔。
その笑顔だけで、女性の心を容易に鷲づかみ出来そうですね。羨ましいです。
――――王都の絶望的な人手不足と、人間サイドの惰弱さを伝えた。
如何にして人を集めて王都を立て直しつつ、力を付けていくか。その為に同じ志を持った人々を集わせた組織であるギルドを結成する。
王側の家臣団の一部を刺激することは避けるってのが条件に入る。
理由は、内部からの侵略と思われたくないから――――。
「王側など、どうとでもなるでしょう。それよりも、ぎるどとは? 食客のようなものでしょうか?」
「ええ、食客と考えてください」
俺に返しつつ、軽快に壁上へと続く階段を一人で上がっていく。
どうとでもなる発言は心強い。言ってる人物に説得力があるから、とくにそう思える。
ギルドって横文字に弱いところは、ゲーム内に横文字が存在しないからだな。
先生は階段を上がる間も、いろんな箇所に目を向けていた。
櫓に、壁上で立哨する兵士たちを近くで眺め、「ふむふむ」と頷きつつ、壁上に立つと、王都から外を見るのではなく、内側を見渡している。
「ふむふむ――――」
ちなみに【ふむふむ】は、ゲーム内の先生の口癖である。
「どうです?」
追いついて、率直に意見を聞いてみる。
「いや~終わってますね。いっそ主が国主になられては?」
「それはちょっと……」
漢室の復興を考えていた人の発言ではないな。
それくらいこの世界は退廃しているということなのだろうか。
――――問題点が一目で分かるほど沢山あるそうだ。
城壁の修理の遅延。それどころか作業を行っているようにも見えない。
せめて瓦礫の中から、使えそうな煉瓦なんかで応急的にもいいから穴埋めをすればいいのに、それをしていない。
住民が農耕を行おうとする気概がない。
ないのは心身が恐怖に支配されているから。
そして、恐怖を払拭してくれるだけの武に長けた者がいない。
この辺りはベルも同じようなことを言っていたな。
加えて、初対面である自分を目にしても、なんの行動もせずに、壁上までのぼらせた兵士の警戒感のなさ。
一つが機能しなくなれば、そこから詰まっていき、結果、全てが機能しなくなる。
「ふむふむ」
と、腕組みして考え事だ。
で、空を眺めて動きが止まる――――。
その後、俺へと顔を向けて口を開く。
「兎にも角にも、人材。この一言ですね。都、以外からも人を集めねばなりません。その為には大仰な事を実行しないといけませんね」
「大仰?」
「そうですね~。例えば大きな戦を行い、敵に対して完全なる勝利を得る。それこそ主が有する奇跡の御業で」
御業って言われてもな~。
現状、この王都で戦える数は三百程度。
戦えるといってもすぐに逃げ出す弱卒ばかり。そんな兵達で、この広大な王都を守り戦うのは無謀。
でもって、防戦となっても、この城壁では敵の出入りは自由だ。
「よくもまあ、陥落しなかったもんです」
こんな状態でなぜ耐えたのか……。
「人が狩を楽しむように、相手もそれを楽しんでいたのでしょう。それが分かっていたから、王側もそれを利用していたのです」
「利用?」
ベルやゲッコーさんとは違う見識を聞けるようだ。
「なぜ王たちは、民を避難させないのでしょうか。主の説明では、王城には新たに門が造られ守りを堅牢にしているそうですが」
「そうです。城に避難させるべきですよね」
「そうしないのは、民を盾として全体を守っていたのです」
「どういうことです!」
これにベルが怒気を混じらせて問う。
――――民を外へと繋がる城壁付近へと住まわせ、侵攻があれば攫われる。
相手からしたら王都への攻めは、余裕から遊戯に変わり果てていたと先生は推論。
人を狩って、楽しめば立ち去る。
これを繰り返させて、今まで王都は耐えてきた。
はたして、それが耐えているのか? とも反論したくもなるけども。
先生の推論で、ベルがますます怒りを滲ませる。
しかし先生は、追い詰められた状況では仕方が無い苦肉の策で、大抵の権力者は民を盾にすると語る。
最小限の被害ですむなら尚更、実行するそうだ。
「ま、私も嫌いですがね。民が苦しむということは、それだけ王や臣下が凡庸なのです。いや――、反乱を起こさせなかったことから、非凡とも考えられますね。ともあれ、その苦しみに耐えたことで、逆転の一手が指せるわけです」
俺を指差しての発言。
俺が逆転の一手か。俺が転生する前に王都が陥落してたら、いま王都で生活をしている人達は生きていなかったかもしれないもんな。
そう考えるなら、今までの犠牲は無駄ではなかった。
ここは戦略家でもある先生。発言は冷たさも混じるが、戦いとなる場で、全てを救える者は存在しない。と言えば、ベルも軍人。目を閉じて、小さく頷いていた。
「実りもあります。相手方の指揮官の思考も少しは理解できました。最も得なければならない拠点を前にして、遊戯に走る。余裕の表れでしょうが、要所は素早く奪うべきです。いつでも奪えると過信したのでしょう。過信は当人の膂力からでしょうね。力で正面から攻めてくる戦巧者のようですが、政略、知略は乏しいようです。いずれまみえる時は、そこが急所になるでしょう」
自分の掌を食指で突いて、急所を突くジェスチャーを行いつつ、喋々と話してくださった。
「さて、そうなった時のために――――」
――――先生はここ最近の、俺たちの戦果を聞いてきた。
なので、ベルとゲッコーさんの活躍を伝える。
あり得ない活躍と力だと思うんだけども、あまり驚くことはなかった。
この世界に召喚されている時点で、不思議な力もあり得ると理解しているようだ。
「いけますね。民たちに、主の奇跡を御業を見せましょう。早速ですが、大戦を始めてやりましょう」
俺は当然だが、知力がすこぶる高いベルとゲッコーさんも、俺と同じで疑問符を浮かべた。
なんだろうか、大戦とは? そもそもこちらには大軍なんていないし、過信している敵が大軍で攻めてくるの?
単刀直入に頼めば、
「喜んで」
二つ返事ですよ。
あまりにもすんなりだから、逆に不安になったけど、プレイギアに映し出されたパラメータを見れば――――、
武力34
知力100
統率98
そして――、そして――、待ってましたよこの数字!
忠誠100
100ですよ! 流石はゲーム内で親密をマックスにして、忠誠もマックスにしただけあったよ。
「それで、ご用件は」
俺に向ける笑顔。
その笑顔だけで、女性の心を容易に鷲づかみ出来そうですね。羨ましいです。
――――王都の絶望的な人手不足と、人間サイドの惰弱さを伝えた。
如何にして人を集めて王都を立て直しつつ、力を付けていくか。その為に同じ志を持った人々を集わせた組織であるギルドを結成する。
王側の家臣団の一部を刺激することは避けるってのが条件に入る。
理由は、内部からの侵略と思われたくないから――――。
「王側など、どうとでもなるでしょう。それよりも、ぎるどとは? 食客のようなものでしょうか?」
「ええ、食客と考えてください」
俺に返しつつ、軽快に壁上へと続く階段を一人で上がっていく。
どうとでもなる発言は心強い。言ってる人物に説得力があるから、とくにそう思える。
ギルドって横文字に弱いところは、ゲーム内に横文字が存在しないからだな。
先生は階段を上がる間も、いろんな箇所に目を向けていた。
櫓に、壁上で立哨する兵士たちを近くで眺め、「ふむふむ」と頷きつつ、壁上に立つと、王都から外を見るのではなく、内側を見渡している。
「ふむふむ――――」
ちなみに【ふむふむ】は、ゲーム内の先生の口癖である。
「どうです?」
追いついて、率直に意見を聞いてみる。
「いや~終わってますね。いっそ主が国主になられては?」
「それはちょっと……」
漢室の復興を考えていた人の発言ではないな。
それくらいこの世界は退廃しているということなのだろうか。
――――問題点が一目で分かるほど沢山あるそうだ。
城壁の修理の遅延。それどころか作業を行っているようにも見えない。
せめて瓦礫の中から、使えそうな煉瓦なんかで応急的にもいいから穴埋めをすればいいのに、それをしていない。
住民が農耕を行おうとする気概がない。
ないのは心身が恐怖に支配されているから。
そして、恐怖を払拭してくれるだけの武に長けた者がいない。
この辺りはベルも同じようなことを言っていたな。
加えて、初対面である自分を目にしても、なんの行動もせずに、壁上までのぼらせた兵士の警戒感のなさ。
一つが機能しなくなれば、そこから詰まっていき、結果、全てが機能しなくなる。
「ふむふむ」
と、腕組みして考え事だ。
で、空を眺めて動きが止まる――――。
その後、俺へと顔を向けて口を開く。
「兎にも角にも、人材。この一言ですね。都、以外からも人を集めねばなりません。その為には大仰な事を実行しないといけませんね」
「大仰?」
「そうですね~。例えば大きな戦を行い、敵に対して完全なる勝利を得る。それこそ主が有する奇跡の御業で」
御業って言われてもな~。
現状、この王都で戦える数は三百程度。
戦えるといってもすぐに逃げ出す弱卒ばかり。そんな兵達で、この広大な王都を守り戦うのは無謀。
でもって、防戦となっても、この城壁では敵の出入りは自由だ。
「よくもまあ、陥落しなかったもんです」
こんな状態でなぜ耐えたのか……。
「人が狩を楽しむように、相手もそれを楽しんでいたのでしょう。それが分かっていたから、王側もそれを利用していたのです」
「利用?」
ベルやゲッコーさんとは違う見識を聞けるようだ。
「なぜ王たちは、民を避難させないのでしょうか。主の説明では、王城には新たに門が造られ守りを堅牢にしているそうですが」
「そうです。城に避難させるべきですよね」
「そうしないのは、民を盾として全体を守っていたのです」
「どういうことです!」
これにベルが怒気を混じらせて問う。
――――民を外へと繋がる城壁付近へと住まわせ、侵攻があれば攫われる。
相手からしたら王都への攻めは、余裕から遊戯に変わり果てていたと先生は推論。
人を狩って、楽しめば立ち去る。
これを繰り返させて、今まで王都は耐えてきた。
はたして、それが耐えているのか? とも反論したくもなるけども。
先生の推論で、ベルがますます怒りを滲ませる。
しかし先生は、追い詰められた状況では仕方が無い苦肉の策で、大抵の権力者は民を盾にすると語る。
最小限の被害ですむなら尚更、実行するそうだ。
「ま、私も嫌いですがね。民が苦しむということは、それだけ王や臣下が凡庸なのです。いや――、反乱を起こさせなかったことから、非凡とも考えられますね。ともあれ、その苦しみに耐えたことで、逆転の一手が指せるわけです」
俺を指差しての発言。
俺が逆転の一手か。俺が転生する前に王都が陥落してたら、いま王都で生活をしている人達は生きていなかったかもしれないもんな。
そう考えるなら、今までの犠牲は無駄ではなかった。
ここは戦略家でもある先生。発言は冷たさも混じるが、戦いとなる場で、全てを救える者は存在しない。と言えば、ベルも軍人。目を閉じて、小さく頷いていた。
「実りもあります。相手方の指揮官の思考も少しは理解できました。最も得なければならない拠点を前にして、遊戯に走る。余裕の表れでしょうが、要所は素早く奪うべきです。いつでも奪えると過信したのでしょう。過信は当人の膂力からでしょうね。力で正面から攻めてくる戦巧者のようですが、政略、知略は乏しいようです。いずれまみえる時は、そこが急所になるでしょう」
自分の掌を食指で突いて、急所を突くジェスチャーを行いつつ、喋々と話してくださった。
「さて、そうなった時のために――――」
――――先生はここ最近の、俺たちの戦果を聞いてきた。
なので、ベルとゲッコーさんの活躍を伝える。
あり得ない活躍と力だと思うんだけども、あまり驚くことはなかった。
この世界に召喚されている時点で、不思議な力もあり得ると理解しているようだ。
「いけますね。民たちに、主の奇跡を御業を見せましょう。早速ですが、大戦を始めてやりましょう」
俺は当然だが、知力がすこぶる高いベルとゲッコーさんも、俺と同じで疑問符を浮かべた。
なんだろうか、大戦とは? そもそもこちらには大軍なんていないし、過信している敵が大軍で攻めてくるの?
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄は結構ですけど
久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」
私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。
「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」
あーそうですね。
私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。
本当は、お父様のように商売がしたいのです。
ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。
王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。
そんなお金、無いはずなのに。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる