上 下
97 / 99

95話 覚醒

しおりを挟む
「よし!これで大丈夫だろう。」

ゴードンは新しく書いた親書を木の箱に入れる。

「無理矢理開けて、食べるんじゃないぞカラ!」

カラはロイの脚の裏に隠れてウサミミをだして
耳でペコる。

「はは!我ながら嫌われたもんだな!最期位、怯えないでくれよ!」

脚の裏側でウサミミをペコペコするカラ。

ゴードンさん!最期じゃないよ。これから始まるんだ。

ゴードンはロイの言葉に頷く。

「そうだな。守る者が増えただけの事だ…」

ギルド長室の扉が勢いよく開く。アイラ達だ!

カラが来てから、丁度1週間が経った…
カラは沢山の事を学んだ。街の人達も良くしてくれたんだろう。ピンク色の小さなワンピースに赤い靴。
街の人達がカラに準備してくれたのだ。
小さな兎人の少女は、すっかり街の人気者に様変わり
したのだった。

「よし!行こうか兎人達の集落へ!」

テレポートをするロイ。

「頼むぞ!ロイ。」

カラは知らない。街で皆が良くしてくれたのは、間違いなくゴードンの活躍が大きい。
冒険者達に事情を説明し、自ら街に出て兎人達の話しをして歩き。街の人達に意識付けしていった。
もちろん、カラの人柄も有るのだがゴードンの活躍を忘れてはいけない。

「ふん!顔は勘弁してくれよ!」

強面な優しいゴードンさん。皆わかっているから、街が平和なのだろう。

「皆~!帰ったよ!」

カラは兎人達の元に走るのだが…様子が変だ。

あれ?イベリス何やってるんだ…

兎人達の前で千寿槍を構え突きを披露する。
兎人達は老若男女関係無く額に覚醒と手書きされた
ハチマキを巻き。竹槍でイベリスの槍術を模している。

「腰!腰を使え!手の力だけに頼るな!兎共!」

何て…言葉遣いだ!本当に目の前にいる。スレンダーで綺麗なエメラルドグリーン色の長い髪の女性は…
あのイベリスなのか?

「こら!突きが弱いぞ!」

見た目は間違いなくイベリスだが…中身が違うんじゃないか?
ロイだけでは無い。他のメンバーも同じ考えの様だ。

「ロイがイベリスを雑に扱うから…グレたんじゃないか?」

カーラさん!流石にそれは無いだろ。あれだけロイ様と迫ってくる人だぞ…

「ロイ様~!」

ほら!何時ものイベリスだ。俺のせいでグレたなんて、侵害だ。

何してるのかなイベリス?

風がエメラルドグリーン色の髪を靡かせる…

私…思い出したのです!

数千年前の魔王達との戦いで、彼ら兎人族は私達と一緒に「世界樹大好き会」の仲間として戦ったのです。

そう彼らはとても勇敢に飛翔し槍でモンスター達を、
これでもかと突き倒したんです。

簡単にペタんこする弱い種族じゃないです。
とても勇敢な戦う種族なんです本来は!

信じられない…兎人達が戦う種族なんて。
ペタんこをする兎人達しか知らないロイにはイベリスの言葉が信じられなかった。

髭兎人がロイに近づいてくる。

「ロイ様…今まで甘えて、すみませんですじゃ!」

そう言いながら覚醒と手書きされたハチマキを額に巻き
竹槍を突き出し、我々はもう大丈夫!とアピールしてくる。

本当に大丈夫だろうか?

カラとマイが駆け寄り髭兎人にゴードンの親書を手渡す。親書を受け取った髭兎人は、良くやったとマイを抱き抱えた。

「アタチは…マイだよ!カラは隣りだよー」

初めて見た大人の兎人達に驚いているマイ。

「すまんのじゃ!疲れで間違えてしまったのじゃ!」

その後、カラを抱きかかえた髭兎人。
カラは、複雑な表情を見せる。

集落の広場に集まりイベリスの石と彫られている石の上でイベリスが立ちながらゴードンの親書を読み出した。


【私達、サウスの街の全住人は貴方達兎人族を歓迎致します。共に進む未来の為に互いに協力しあいましょう。
また、有事の際には冒険者達が必ず助けます。私達を信じて街に訪れて下さい。集落から街までの街道整備にも取り掛かります。数年後、我々と兎人族の皆様が往来出来る様になるのが、今から楽しみです。 サウス街・ギルド長 ゴードン・モッペン 】

「おお…凄いのじゃ!人達との街に繋がりが出来たのじゃ良くやった…良くやったぞカラ!」

皆がカラの周りに集まり…カラの頑張りを称えた!

「だから…アタチはマイなのー!!」

皆がマイの頭を撫でる。その光景を複雑な表情で見ているカラ。

2人の少女は似ている。判断はウサミミ尻尾が1番分かりやすい。しかし兎人達が間違えるとは…
かなり疲れているんじゃないだろうか?

「イベリス…ちょっと厳し過ぎるんじゃないか?」

イベリスはイベリスの石から降りてロイに駆け寄る。

「厳しくないです!ロイ様の私の扱い方の方が雑で厳しいです!あ~数千年ぶりに再開した初恋の勇者様は…こんなに私を雑に扱うなんて…」

ほらなグレてるだろ!

カーラの言葉がロイの胸に刺さる…

確かに最近はメライア師匠と一緒だったしな。
オーランド王国との戦いの最中はイベリスはアイラを
守るポジションだしな。

……。確かに雑だな。

初めて世界樹であった時の事を思いだすロイ…

「ごめんねイベリス。」

ロイはイベリスに謝る…大事な仲間を雑に扱って悪い事をしたと。

「あは~ん!ロイ様~!!」

一生懸命に抱きついてくるイベリス。
もちろんロイは悪い気はしない。ロイ様~と、これでもか!と身体を押し付ける。

しかし他の女性陣の目線が痛い…

「私のロイだぞ!」

アイラは、ご立腹だ。
もちろん、カーラも師匠もご立腹だ。
マイも兎人達に囲まれて戸惑っている。
カラは…まぁ機嫌は良くはないだろな…

「ロイ様~!話しませんから!」

イベリスの千年愛が再発している。当分…こんな感じだろな彼女は…

どうせ俺が悪いって流れになるんだろう!

何時ものパターンだとロイはイベリスに抱きつかれたままテレポートしアイラ達の前から姿を消した。

唖然とするアイラ達…

兎人達と交流を深め、オーランド王国に喧嘩を売っている中での2人の愛の逃避行…

もちろん…他の女性陣達は許さない!

「2人を探すんだぞ!許さないんだぞ!」

おお!と手を挙げるブリリメンバーと兎人達。

今ここに…聖女達と兎人達の多種族部隊が結成された。

次回へ続く。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...