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73話 少女は姉を助ける

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ヌメヌメ騒動で絞られた魅惑の乙女組の3人。

その中でもリーダーアイラの落ち込み度は凄まじく
布団に潜り寝込んでしまう。

「もう嫌…ダンジョン嫌い…大嫌い!」

カーラとイベリスが励ますのだがアイラは塞ぎ込む!

「嫌ったら!嫌なの!」

あのヌメヌメがアイラを精神的に支配しているようだ。

「こりゃ重症だな…」

古株のカーラもお手上げ状態だ。頭をポリポリしながら困っている。

「そんな姿だとロイもアイラの事を嫌いになりますよ!」

奮起させようとイベリスが言葉を投げかけるのだが…

「ロイはイベリスが好きにしたら!」

と完全に弱っている。

2人は困り果てる。何時も無駄に元気なアイラの姿は、どこにもない。

「ただいま!」 

マイが部屋に戻ってくる!

「お菓子の評判良かったの~!」

マイが出合頭組の暑苦しい男達にお菓子を配り戻って来た。最近は出合頭組の暑苦しい男一人一人の好みを聞いて数種類のお菓子を手作りしているのだ。勉強大好きな9歳のマイ。

この齢にして料理と気配りの能力をあげる。
末恐ろしい少女だ!

「アイラお姉チャン!どうしたの?」

寝込むアイラを見るマイ。

カーラがマイに事の顛末を説明している。

話しを聞いたマイはアイラの布団を奪いとる。

「何するのよ~やめて!ほっといて!」

マイはアイラの腕をとり無理矢理、起こそうとする!

「寝てたら先に進めないよ~お姉チャン!」

必死にアイラの腕を引っ張るマイ。
しかし力的にもアイラを起き上がらせる事は出来ない!

それでもマイは必死に腕を引っ張る!

「少し嫌な事があったからって逃げちゃ駄目~!」

小さな少女の懸命な姿にカーラとイベリスも動く。

「さあ聖女様!行こうぜ!」

嫌!と駄々をこねるアイラの両脇に腕を入れ抱える
カーラ。

「私!こんな弱っちい聖女と恋の争いしたくないです!」

そう言いながら両足を持ち上げるイベリス!

「やめて!離して!」

アイラは暴れるが2人でガッチリ、ホールドする。

完全に持ち上げられたアイラ。
情けない姿をしている。

「リベンジに行くよ~!」

マイの掛け声と共にアイラは運ばれながら再びダンジョンへ向かう!

3人は平原を駆け抜ける!運ばれるアイラは叫ぶ!

「離して!離しなさいよーーーーーーーーーー!!」

しかし力を入れ暴れようとするのだが2人のガッチリホールドに完封されてしまう。
2時間平原を走りキャンプ地の冒険者達の間をすり抜ける!

冒険者「あれ…聖女様だよな?何してんだ?」

情けない姿の聖女様を冒険者達は不思議そうに見ている

「恥ずかしいの!離して!」

アイラは叫びまくるのだが3人は無視を貫く!

そのまま勢い良くダンジョンに突撃する3人と抱えられたアイラ。ドバットミミズが現れた3階層に到着する。

「居たぞ!」

カーラが指差す方向からドバットミミズが現れた!しかも5匹!

5匹のドバットミミズを見て震えるアイラ。
「嫌…嫌!嫌!嫌ーーーーー!!」

カーラとイベリスはアイラを振り子の様に揺らして
ドバットミミズの前に放り投げる。
「痛!」5匹のドバットミミズは餌を見つけたかの様にゆっくりアイラに近づく。アイラは逃げる事もなく、
只々…口をガグガクし、その場で怯えている。

放り投げた2人。
「這い上がって来い!聖女だろ!」
「壁は自分の力で越えるのです!」
まるで自分の子を崖に落とし自力で登るのを見守る
親獅子の様な顔をしている。

「タタタタタ!」怯えるアイラの側に駆け寄るマイ。

「お姉チャン…頑張れー」

杖をドバットミミズに向ける!

「小寒の氷大寒に解く。あなたの容姿は私を凍らせる」

杖の前に複数の氷の結晶が現れる…

「禍々しさを晒す者よ!我が心は冷淡なり!」

複数の氷の結晶が音も無く綺羅びやかに回転する。

「シングルマジック!」

「アイスプラント!!」

複数の氷の結晶がドバットミミズに向かい飛んで行く。
ドバットミミズに貼りついた結晶が輝き一瞬でドバットミミズ達を氷の柱の中に閉じ込める!

カーラとイベリスが驚く中、マイが叫ぶ!
「アタチのお姉チャンは!お前等なんかに…」
「負けないんだぞ!!」

アイラの震えが止まる。そして立ち上がる!

「ありがとう。マイちゃん!私…先に進む!!」

右腕を横に伸ばし左手で伸ばした右腕をなぞる。

アイラの右腕が金色の輝きを放つ。

「輝きを失った者は暗闇に消える。その深淵から救うのが我が役目にして我が正義!」

「私は墜ちない!!喰らえ!!」

「金剛獅子・聖爆腕!!」

金色の輝きを放つ右腕を振り回しながら氷柱に閉じ込められたドバットミミズに突撃するアイラ。

爆腕が唸りをあげる!
簡単に言ってしまえば…ただの助走をつけたラリアットなのだが、鬼気迫るアイラの表情に恐らくドバットミミズ達は氷の中で恐怖したに違いない!

「らー!おら!だー!ヨイショ!」

4匹の氷の柱に閉じ込められたドバットミミズを聖爆腕で砕きなぎ倒すアイラ。
最後の1匹の目の前で右腕をグルグル回しながら叫ぶ!

「ラスト~~!ふんが!!」

最後の1匹も粉々に砕け消え去る…

右拳にキスをし人差し指を天に向ける。

「アーイム聖女!!」

ヌメヌメ聖女アイラ。今ここに完全復活!!

聖女の復活を見届けたマイ。

「もう大丈夫なの~!アタチは明日のお菓子の支度があるから帰るの!」

タタタタタ!そう言いながら一人ダンジョンを戻って行くマイ。

カーラ「今度マイのお菓子作り手伝うか…」
イベリス「手伝いましょう…」

天にかざした人差し指を前に向けるアイラ。

「突撃…再開よ!」

魅惑の乙女組はダンジョンの奥へ走り出した!

アイラの気持ちを、へし折ったヌメヌメ感はもうアイラの心の中には居ない!!

次回へ続く。


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