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第二章 冒険者 編
28 同志
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マナが指名依頼を受けた日から、一年ほどが過ぎた。
マナとレナ・バースは冒険者として日々依頼をこなしている。しかし、一年経過したがマナはまだFランクで、サポートに徹しているレナ・バースは、Bランクのままだ。
「お嬢、今日こそゴブリンを倒すからね!」
マナは一年前まで西の平原と呼ばれていた森の中に来ていた。最近は西側での魔物の目撃情報が激減しているそうだが、マナは森に入りゴブリンを探している。
「マナちゃん、あまり急ぐと迷うよ!」
大木が生い茂る森の中をマナは、どんどん奥に進んでいく。レナ・バースは最近気がついたのだが大木達の幹は偶に青白く輝く。その近くに生える苔も大木達の光りに反応するかの様に青白く輝いている。
マナちゃんは、普通の木って前に言っていたけど…
「もう…いないよゴブリン!」
結局、二人はゴブリンを見つける事が出来ぬまま、街へ戻った。ギルドへ戻る途中、いつもの屋台通りを歩いている二人。一年経っても、マナの大好物は串焼きだ。朝昼晩、かかさず串焼きを食べるマナは屋台通りの人気者
だ。
唯一変わったといえば、あの世界樹味の串焼きをくれた馴染みの屋台が一軒家の店を構えたことだろうか?
屋台界では屋台ドリームと呼ばれているそうだ。
そしてギルドもボロ板造りから立派なレンガ造りの建物に建て替えられた。マナが破壊した時より頑丈な創りに変わった。
ギルド長はデコルのままだ。あまり姿は見かけない。忙しいのだろうか?
ギルドの中で一番大きな変化と言えば、マリィ受付嬢が、大きな出世をはたした。もともと優秀だとは言われていたが、今の彼女は副ギルド長まで昇進した。もう、マナやスフィアの専属受付嬢兼アドバイザーではなくなったがマナには良く声をかけている。
スフィアも今ではCランクだ。竜人族の彼女は、やはりポテンシャルが高い。通常なら複数人で対応する依頼も彼女は単体で達成してしまう。
スフィアは今、このエバーダの街で一番勢いのある冒険者として注目を集めている。
マナは以前ドドルに言われた通り、失敗の数は気にしていない。スフィアはどんどん先に行くがマナはマナなりに毎日頑張っているのだが、ギルドにくるとスフィアの話しをよく聞く。
内心…マナはどう思っているのだろうか?
…………
「え?グレイシア王国の騎士団が来ているのか?」
ゴブリンがいない!と受付で騒ぐ後ろでレナ・バースに顔馴染みの冒険者達が話しかけている。
グレイシア王国。エバーダの北の鉱山跡地の山を越えて数日歩いたところに有る国。グレイシア王国と言えば騎士団と言うほど騎士達の熟練度は高いと言われているのだが、エバーダの街とは然程関係性は強くなく、わざわざ騎士団が、この街に赴くとは思えない。彼等に何かあったのかとレナ・バースは考えている。
翌日…
マナはレナ・バースの手を握り、ギルドへ向かう。いつものように屋台通りを抜けて広場を通るのだが、この日は広場が騒がしかった。中心にある小さな噴水を囲むようにできた人集り。その中に昨日聞いたグレイシア王国の騎士達がいた。
何かトラブルがあってできた人集りと言うよりは、騎士達が街人を集めているように見える。
マナはエバーダの街以外の者を初めて見た。グレイシア王国の騎士達は冒険者のように武装しているのだが、冒険者達とは違い統一性のある白い武具がマナの目を引いた。
「エバーダの民達よ。集まってもらい感謝する!」
噴水の縁に立つ背の高い細みの女性が体格には似合わない程の大きな声で民達に話しかけた。
「私は、グレイシア王国騎士団第4師団隊長、ナイラ・レスオールだ。我がグレイシア王国は現在、イシュダル帝国と戦争状態にある。我が国をそして領土を守る為に、共に戦ってくれる同志を求む!」
ナイラと名乗った女性騎士の言葉に集まった街人達がざわめきだす。
確かにエバーダの街はグレイシア王国の領土にある。しかし、グレイシア王国には徴兵制度はない。
同志とは言うが、おそらくグレイシア王国はイシュダル帝国との争いが優勢ではないのだろう。
騎士達は広場に乱れなく綺麗に隊列を作る。そして、同志となる者が現れるのを待った。
マナは、話しの内容がいまいちわからなかったが、レナ・バースに、彼等は仲間を探していると言われ、あんなに沢山仲間が居るのに、欲張りな奴等だと言いながらレナ・バースの手を取り再びギルドを目指した。
そして、ギルド内も騎士団の話しでもちきりだった。
どうやら冒険者から同志になってくれる者には、騎士として採用すると確約があったらしい。
冒険者から騎士。しかもグレイシア王国騎士団は有名だ。今より良い生活が保証されるのは間違いない。
しかし冒険者の良い所は自由だ。騎士には規律が付きまとう。
長く冒険者をしている者程、規律に縛られるのは嫌うだろう。
冒険者達は互いに、今回の勧誘の件をどうするか伺い合っているように見える。
「えー!どうしてよ!」
冒険者達が互いに伺い合っているギルドのカウンターからマナの声がする。
どうやら、騎士団の件で本日の依頼は全てとまっているそうだ。
今日こそゴブリンを倒してやろうとしていたのに…
どうして、あの騎士団と呼ばれる人達は私の邪魔をするのかな?
マナはレナ・バースを連れて広場に戻った。
あの騎士達に文句を言ってやる!
マナとレナ・バースは冒険者として日々依頼をこなしている。しかし、一年経過したがマナはまだFランクで、サポートに徹しているレナ・バースは、Bランクのままだ。
「お嬢、今日こそゴブリンを倒すからね!」
マナは一年前まで西の平原と呼ばれていた森の中に来ていた。最近は西側での魔物の目撃情報が激減しているそうだが、マナは森に入りゴブリンを探している。
「マナちゃん、あまり急ぐと迷うよ!」
大木が生い茂る森の中をマナは、どんどん奥に進んでいく。レナ・バースは最近気がついたのだが大木達の幹は偶に青白く輝く。その近くに生える苔も大木達の光りに反応するかの様に青白く輝いている。
マナちゃんは、普通の木って前に言っていたけど…
「もう…いないよゴブリン!」
結局、二人はゴブリンを見つける事が出来ぬまま、街へ戻った。ギルドへ戻る途中、いつもの屋台通りを歩いている二人。一年経っても、マナの大好物は串焼きだ。朝昼晩、かかさず串焼きを食べるマナは屋台通りの人気者
だ。
唯一変わったといえば、あの世界樹味の串焼きをくれた馴染みの屋台が一軒家の店を構えたことだろうか?
屋台界では屋台ドリームと呼ばれているそうだ。
そしてギルドもボロ板造りから立派なレンガ造りの建物に建て替えられた。マナが破壊した時より頑丈な創りに変わった。
ギルド長はデコルのままだ。あまり姿は見かけない。忙しいのだろうか?
ギルドの中で一番大きな変化と言えば、マリィ受付嬢が、大きな出世をはたした。もともと優秀だとは言われていたが、今の彼女は副ギルド長まで昇進した。もう、マナやスフィアの専属受付嬢兼アドバイザーではなくなったがマナには良く声をかけている。
スフィアも今ではCランクだ。竜人族の彼女は、やはりポテンシャルが高い。通常なら複数人で対応する依頼も彼女は単体で達成してしまう。
スフィアは今、このエバーダの街で一番勢いのある冒険者として注目を集めている。
マナは以前ドドルに言われた通り、失敗の数は気にしていない。スフィアはどんどん先に行くがマナはマナなりに毎日頑張っているのだが、ギルドにくるとスフィアの話しをよく聞く。
内心…マナはどう思っているのだろうか?
…………
「え?グレイシア王国の騎士団が来ているのか?」
ゴブリンがいない!と受付で騒ぐ後ろでレナ・バースに顔馴染みの冒険者達が話しかけている。
グレイシア王国。エバーダの北の鉱山跡地の山を越えて数日歩いたところに有る国。グレイシア王国と言えば騎士団と言うほど騎士達の熟練度は高いと言われているのだが、エバーダの街とは然程関係性は強くなく、わざわざ騎士団が、この街に赴くとは思えない。彼等に何かあったのかとレナ・バースは考えている。
翌日…
マナはレナ・バースの手を握り、ギルドへ向かう。いつものように屋台通りを抜けて広場を通るのだが、この日は広場が騒がしかった。中心にある小さな噴水を囲むようにできた人集り。その中に昨日聞いたグレイシア王国の騎士達がいた。
何かトラブルがあってできた人集りと言うよりは、騎士達が街人を集めているように見える。
マナはエバーダの街以外の者を初めて見た。グレイシア王国の騎士達は冒険者のように武装しているのだが、冒険者達とは違い統一性のある白い武具がマナの目を引いた。
「エバーダの民達よ。集まってもらい感謝する!」
噴水の縁に立つ背の高い細みの女性が体格には似合わない程の大きな声で民達に話しかけた。
「私は、グレイシア王国騎士団第4師団隊長、ナイラ・レスオールだ。我がグレイシア王国は現在、イシュダル帝国と戦争状態にある。我が国をそして領土を守る為に、共に戦ってくれる同志を求む!」
ナイラと名乗った女性騎士の言葉に集まった街人達がざわめきだす。
確かにエバーダの街はグレイシア王国の領土にある。しかし、グレイシア王国には徴兵制度はない。
同志とは言うが、おそらくグレイシア王国はイシュダル帝国との争いが優勢ではないのだろう。
騎士達は広場に乱れなく綺麗に隊列を作る。そして、同志となる者が現れるのを待った。
マナは、話しの内容がいまいちわからなかったが、レナ・バースに、彼等は仲間を探していると言われ、あんなに沢山仲間が居るのに、欲張りな奴等だと言いながらレナ・バースの手を取り再びギルドを目指した。
そして、ギルド内も騎士団の話しでもちきりだった。
どうやら冒険者から同志になってくれる者には、騎士として採用すると確約があったらしい。
冒険者から騎士。しかもグレイシア王国騎士団は有名だ。今より良い生活が保証されるのは間違いない。
しかし冒険者の良い所は自由だ。騎士には規律が付きまとう。
長く冒険者をしている者程、規律に縛られるのは嫌うだろう。
冒険者達は互いに、今回の勧誘の件をどうするか伺い合っているように見える。
「えー!どうしてよ!」
冒険者達が互いに伺い合っているギルドのカウンターからマナの声がする。
どうやら、騎士団の件で本日の依頼は全てとまっているそうだ。
今日こそゴブリンを倒してやろうとしていたのに…
どうして、あの騎士団と呼ばれる人達は私の邪魔をするのかな?
マナはレナ・バースを連れて広場に戻った。
あの騎士達に文句を言ってやる!
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