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第二章 冒険者 編

20 世界樹の昇格試験

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 「マリィ氏よ!それは、おかしいだろ流石に」

平原を森に変えた翌日、二人はまたギルドに来ていた。マナは3連続依頼失敗に落ち込み普段の明るさはなかった。

 そして、専用窓口でレナ・バースがマリィ受付嬢に食って掛かっていた。

 「レナさん、何がおかしいのですか?」

 「今の話し全ておかしいだろ!」

 マナ様は3連続依頼失敗に滅気ずに依頼を受けにきたから、励ます為に昇格試験を執り行う。

 街の北側にある鉱山跡地に赴き、とりあえず何かの鉱石を持ち帰れたらDランクへ昇格させる。

 「こんな昇格試験なんか聞いた事がない!」

 マリィ受付嬢はレナ・バースを見ながら鼻で笑う。貴女は古い考えに縛られ過ぎているとマリィ受付嬢に言われたレナ・バース。

 こいつを斬りたい!私はこの憎たらしい笑顔の女を斬りたい!

 マナはレナ・バースの手を握り落ち着いてと言った。

 「私は失敗ばかりの駄目冒険者だよ?自分が情けないよ。だからねお嬢…私はこの試験を受けます!」

 なっ!

 だからマナちゃん。3連続依頼失敗で試験を受けるのはおかしい事なんだよ!

 結局、二人は試験会場となる北側の鉱山跡地に向かった。

 マナは3連続依頼失敗の汚名を挽回しようと表情が険しくなる。これ以上失敗したら私は一生Fランク冒険者のままだ。 

 納得ができない。納得はできないが私はマナちゃんをサポートするんだ。

 レナ・バースの表情もまた、険しくなる。何か怪しい感じがするのだが、今は深く考えるのはやめよう。考え過ぎると剣が鈍るから…

 …………だから、この試験はおかしいんだよ!

 2時間程歩くと二人は鉱山跡地の坑道入口に到着したのだが、入口前にあからさまに目立つよう不自然に鉄鉱石が置かれていた。

 ……しかも、わざわざ丁寧に木製の台座の上にだ。

 「こんなの…出来レースもいいとこだ!」

ギルド内にマナちゃんを利用しようとする奴がいるのだろうか?

 一番怪しいのは、受付嬢のマリィだが理由が不明だ。

 ギルド長か?

 いや…その可能性は低い。彼はマナの正体を知っているし、性格はあれだが街人達からの信頼はかなり高い。

 わざわざリスクを犯してまでマナを利用するとは思えない。

 もう一度…ギルドに戻ったらあの女を問い詰めよう。

 二人は来た道を戻る事にしたのだが、行きは魔物に遭遇する事はなく順調だった。しかし帰りもそうなるとは限らない。

 マナ達の周辺が度々暗くなる。お日様が雲に隠れたのだろうか?

マナは鉱石を落とさないように大事に抱え込んでいる。

 何かどんどん暗くなる気がするのだが…

レナ・バースは、頬に手を当て考え中だ。大事に鉱石を抱え込んでいるマナを見ながら、どうにもキナ臭いと考えている。

 頭上注意とは良く行ったものだ。北の街道を進む二人に襲いかかる影…それは前からでも後ろからでもなく、そして地中からでもない。

 空からの襲撃だった!

 「危ないマナちゃん!!」

 私としたことが油断した!

レナ・バースは、マナを押してあげることしか出来なかった。二人の間にできた空間を塞ぐように現れた巨大な目。

 マナ側からはどう見えただろうか?

その巨大な目は確実に私達を殺そうとする殺気を放っていた。

 レナ・バースは襲いかかってきたのが誰か直ぐにわかった。

 正確には種族がわかっただけで個体名はわからない。
しかし、非常に危険な状況にいることに変わりはなかった。

 ドラゴン…

 魔物…いや、この世界で頂点に君臨する種族。頭も良く身体は硬い。鋭い爪と牙は人間の武器を嘲笑かのような強度。そして街の建物程の面積がある翼は対峙した者の戦意を削ぐほどの風格がある。

 これも試験なのか?

 Fランク試験がドラゴン討伐?

 ありえない。これは不運なだけだ。

 ドラゴンは少女と剣士どちらが危険度が高いか瞬時に見極める。

 レナ・バースを見下ろし翼を広げ草木が揺れるほどの叫び声をあげた。

 先に、この女を喰らえば少女など…

 しかし、ドラゴンの考えはあくまで一般論の域での考えだった。常識が通用しない事は頂点の椅子に座る者にも起こる。

 「あ~!なんで私の石ころ壊すのよ!」

威風堂々と現れたドラゴンは自慢の尾を振り払う。もはやドラゴン登場には欠かせない初期動作。ドラゴンはわかっている。翼の動きと尾の動きを連動させると大概の奴等は臆すると…

 これは一般論。この世界の一般論だ。

 「お仕置きだよ!」

マナは世界樹風に改造した鞭を持ちドラゴンめがけ走りだした。

 お仕置きは確かにお仕置きだった。

鞭のクラッカー部分をドラゴンの左頬へ打ちつける。ドラゴンは微動だにしないが打ち終わりと同時に何もない空間から巨木が現れドラゴンの右頬を打ちつける。虚をつかれたドラゴンの顔がのけぞるがマナは鞭打をやめない。ダメージがない左頬に対し右頬には無数の巨木が突き刺さる。

 「あやまりなさいよ!」

マナはドラゴンの頭頂部を力いっぱい鞭打した。マナは鞭に私の力が上手く伝わった感覚に陥る。

 完璧な一撃…クリティカルヒット!!

 しかしドラゴンは微動だにしないが、鞭のクラッカー部分が地面に触れた時に地面から巨木が現れドラゴンの顎をとらえた!

 まさかの二段構え…

ドラゴンは意識が朦朧とする中、少女を見つめた。

 貴女は何者だ?

 腹を見せ倒れるドラゴン。

 地面に散らばる巨木の中へと消えていった…

 

 
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