世界樹の反抗期〜世界樹と呼ばれて一万と二千年〜「もう、じっとしているの我慢出来ない!」

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第二章 冒険者 編

13 世界樹の冒険者デビュー

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 「お嬢ちゃん!私はね…今…悩んでる!」

レナ・バースに連れられギルドへ来たマナ。壁に貼り出された沢山の依頼書を大きな緑色の瞳で物色中だ。

 「マナちゃん!お嬢ちゃんって言うのやめてほしいのだけれど…」

 毎回会うたびにレナ・バースをお嬢ちゃんと呼ぶマナに困惑している。

 マナは話しを聞いているのだろうか?依頼書が次々と冒険者達に剥がされていく。

 あ!それ狙っていたのに…

デコルギルド長の命で、マナには普通の冒険者でいてもらう事となった。ごくごく自然に、この冒険者の街エバーダにとけ込んでもらう為に。

 フォローはレナ・バースが努める。マナは彼女に懐いているしレナ・バースもマナがお気に入りだからだ。

 「お嬢!あの上のとって!」

どうやらレナ・バースの話しは聞いていた様だ。お嬢ちゃん呼びから、お嬢に変わっていた…

 「害獣駆除系ね…」

マナは、レナ・バースに頼んで剥がしてもらった依頼書を見つめる。

 畑を荒らす魔物討伐。報酬は1体につき10G。

 10G?

 レナ・バースはお金だと教えてくれた。袋からコインを取り出しマナに見せる。

 マナはお金がなにかよくわからない。しかし、コインから放たれる小さな輝きは不思議と、マナにお金を沢山集めさせたくなる気持ちを植え付けた。

 お金には危険な魅力がある…

 受付嬢に依頼書を渡し説明を受ける。

街を出て西にある農村地帯で最近、作物が荒らされ家畜が襲われている。近くの森に生息するシルバーウルフの群れが犯人らしい。

 「ウルフさん達を倒したら、お金を貰えるのね!」

その言葉に受付嬢は優しく微笑んだ。受付嬢の胸には、
マリィと書かれた名札があった。

 マナはマリィ受付嬢のわかりやすい説明に感謝した。
マリィ受付嬢は自分の仕事をしただけなのだが…

 「貴女も良い人ね!これあげる!」

マナの身長より高いテーブル。マナはつま先立ちをし、手を伸ばしテーブルの上に何かをおいた。

 マリィ受付嬢は笑顔だ。笑顔だが…汗がとまらなくなった。

 マリィ受付嬢はギルド職員となって5年目だ。顔立ちが良いから受付嬢に抜擢されたわけではない。確かに、見た目は美しい方に属するが、彼女は度胸があり咄嗟の判断も的確だ。報連相も怠らない。そして鑑定眼が素晴らしい。日々持ち込まれる素材や珍しい物を適切に見抜く力はギルド内…冒険者達からも評判が高い。レナ・バースがエバーダの街の冒険者達の中でエース級なら、今営業スマイルをしているマリィ受付嬢はギルド職員の、エース級だろう。

 「討伐証明はシルバーウルフの牙です。忘れずにお持ちください。」

 「牙を持ってくるのね?ありがとう。じゃあ…いってきます!」

 リボンを揺らし、ギルドを出ていくマナとレナ・バース。

 マナ達の背中を見送った後、マリィは机の上にマナが置いていった物を目を細めながら見つめている。

 「これ…世界樹の葉よね?」

葉は卵形だ。葉縁は波状…そしてまるで生きているかの様に青白く不定期に発光する。

 「図鑑でしか見た事ないけれど…」

 報連相をしなければ!私は冒険者ギルドの受付嬢。上司に報告する義務があるのよ!

世界樹の葉を手にとるマリィ。どうしてなのかしら?報告しなければいけないのに、私の手が勝手に世界樹の葉を胸元へ隠したがるの…

 誰にも見られていない。あの子は外…

 今日の私…何かいけない事をしている。

汗は拭いた!笑顔も引きつってない。お化粧直しも完了した。
 
 そう…今の私はいつもの私!

 …胸元に何かあるけど私は知らないの!

 マリィは初めて横領した。マナは御礼をしただけで、あの葉は軽い気持ちで差し出しただけ。

 マリィは味わった事がないドキドキ感を覚えた。

 この葉を売ればギルドなんか、あっという間に再建可能だけど…

 これは私のものだから…

 ……………………

 「お嬢!あれよね?あれが農村よね?」

 マナが指差す方向には一面の畑が広がっていた。

 皆を助けないと!

 「お嬢!あの場所へ突撃だよ!」

 マナが農村の入口へ到着すると老夫婦が迎えてくれたが、二人の痩せた姿にマナはお腹が空きすぎているんだと勝手に思い込んだ。

 老夫婦は害獣に困り果ててはいるが、ご飯が食べれないほどではない。二人は元々細見の体型なだけだ。今日も朝食はしっかり食べている。

 「これ飲んで!元気になるよ」

 この子は冒険者だよな?老夫婦は渡された金色の液体が入った小瓶を見ている。自分の孫より幼そうな少女の笑顔は老夫婦を笑顔にさせた。

 笑ってくれた!

 マナは二人の笑顔を見て喜ぶ。それを飲んだらもっと元気になるんだから!

 老夫婦は、ありがとうと言いながら金色の液体を飲み干した。

 「母さんや!オラは今晩お前をだけそうじゃ!」
 「父さんや私も抱いてもらいたいのじゃ!」

 二人は杖を捨て抱き合う。

 夜まで…待てない!

 イチャイチャを始めた老夫婦を見て、レナ・バースは頭を抱える。

 「マナちゃん…エリクサーの安売りはやめてくれないかな?」

 安売り?マナは意味が分からない。

 だって一万年分は作り込んだから…

 貴方達が名前を付けた薬は、まだまだ大量にあるんだよ?

 皆が元気なら…それで良いじゃない!

 

 
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