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1廃墟
#2
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不測の事態に人影は動揺したもののすぐに体制を立て直し目の前の状況を分析した。
瓦礫の影からチラチラ覗く影は背格好から判断すると少女のようだ。少女は「スーツ」ではなく着古したデニムのワンピース姿に安物に見えるスニーカーを履いてごく普通のフェイクレザー製のリュックを背負っていた。
(まさか……こんな場所に子供がいるなんて)
人影はまず最初にそう思った。が、よく考えればこんな場所にヒトがいるのはおかしい。それにもしここにいるとすれば……
人影は当初、この闖入者をジェナー型の異形、即ち人型の異形(♀)だと思った。実際のところ♀かどうかは不明だがその体つきから分類上そう呼ばれている。人影はそれを直接目撃したことはなかったが「病院」のデータバンクや装備の都合で出入りする「ラボ」の知り合いに聞いてそれを知っていた。
(物思いに耽るのここまで、まだコイツはこの子に気がついていない……このまま気付かれずこの子がやり過ごせればそれでヨシと……)
人影はそう心の中で呟きながら訓練された無駄のない動きでスーツのバックパックに固定されていたジャベリ引き抜いた。穂先のモーターは現在主流の電磁加速式ではなく炸薬式の旧式だが効果は抜群だ。引き抜いたジャベリンを両手で構える。
(とにかく、先にコイツををどうにかする!)
ジャベリンを振り上げた勢いのまま異形の急所に一気に打ち下ろす。その一連の動作のさなか事態が急変した。
偉業の駆除作業は先手必勝だ。迅速に急所である「核」を破壊するのが鉄則である。何故ならば異形の反撃は型を問わず非常に激しく、仕損じると返り討ちにあい命を落とす可能性が非常に高いからだ。
(外した!?)
人影は子供の出現に無意識下で動揺し急所を外してしまった。ジャベリンを打ちおろす位置が僅かにずれたのだ。奥でスーツの下で顔をしかめ舌打ちする人影。
いくら強力な武器でも当たらなければ意味はない。
いつものように大通りを散歩していたらいきなり自分の背に飛び乗ってきた人影のの強烈な挨拶に異形は礼儀正しく返礼することにした。
幸い自分は腕も脚も沢山生やせる。この姿をとっているのも
まだヒトだった時にお気に入りだった動物キャラクターの姿を模倣しているに過ぎない。意識がほとんど向こうにあって思考することも最近はめっきり減ったがこの姿は割と気に入っている。とりあえず物をつかむのに使っている長い腕で背中のアイツを抱き締めてやろう。
人影は自分を捕らえようと異形が伸ばしてきた腕をジャベリンで必死に捌いていた。分かりきっていたことだか動き自体は緩慢だか尋常ではなくしつこい。
なかなか背中の人間をつかまえられない異形はその事に対する鬱憤を興味が無いので放置していたもっと小さい人間(?)で
晴らすことにした。
突然の激しい揺れ。その直後異形が伸ばしてきた腕を人影はジャベリンで必死に捌いていた。動き自体は緩慢だか尋常ではなくしつこい。異形は更に二本の腕を伸ばし、その先端の焦げた枯れ木ののような指で人影の身体を狙う。
──バシュッ! と、一際大きな音と共に黒い液体が飛び散る。どうやら異形の一撃を受けたらしい。だが、人影はそのまま凌ぎ続ける。と異形の腕が一旦全て引っ込んだ。
(……)
なかなか人影を捕らえられず業を煮やした異形は憂さ晴らしをするつもりなのか標的を切り替えて完全に放置状態だった現在は100mほど前方でテナントビルの廃墟を覗き込んでいる謎の少女に向き直りスルスルと緩慢だが影のように素早い動作で近寄っていった。
瓦礫の影からチラチラ覗く影は背格好から判断すると少女のようだ。少女は「スーツ」ではなく着古したデニムのワンピース姿に安物に見えるスニーカーを履いてごく普通のフェイクレザー製のリュックを背負っていた。
(まさか……こんな場所に子供がいるなんて)
人影はまず最初にそう思った。が、よく考えればこんな場所にヒトがいるのはおかしい。それにもしここにいるとすれば……
人影は当初、この闖入者をジェナー型の異形、即ち人型の異形(♀)だと思った。実際のところ♀かどうかは不明だがその体つきから分類上そう呼ばれている。人影はそれを直接目撃したことはなかったが「病院」のデータバンクや装備の都合で出入りする「ラボ」の知り合いに聞いてそれを知っていた。
(物思いに耽るのここまで、まだコイツはこの子に気がついていない……このまま気付かれずこの子がやり過ごせればそれでヨシと……)
人影はそう心の中で呟きながら訓練された無駄のない動きでスーツのバックパックに固定されていたジャベリ引き抜いた。穂先のモーターは現在主流の電磁加速式ではなく炸薬式の旧式だが効果は抜群だ。引き抜いたジャベリンを両手で構える。
(とにかく、先にコイツををどうにかする!)
ジャベリンを振り上げた勢いのまま異形の急所に一気に打ち下ろす。その一連の動作のさなか事態が急変した。
偉業の駆除作業は先手必勝だ。迅速に急所である「核」を破壊するのが鉄則である。何故ならば異形の反撃は型を問わず非常に激しく、仕損じると返り討ちにあい命を落とす可能性が非常に高いからだ。
(外した!?)
人影は子供の出現に無意識下で動揺し急所を外してしまった。ジャベリンを打ちおろす位置が僅かにずれたのだ。奥でスーツの下で顔をしかめ舌打ちする人影。
いくら強力な武器でも当たらなければ意味はない。
いつものように大通りを散歩していたらいきなり自分の背に飛び乗ってきた人影のの強烈な挨拶に異形は礼儀正しく返礼することにした。
幸い自分は腕も脚も沢山生やせる。この姿をとっているのも
まだヒトだった時にお気に入りだった動物キャラクターの姿を模倣しているに過ぎない。意識がほとんど向こうにあって思考することも最近はめっきり減ったがこの姿は割と気に入っている。とりあえず物をつかむのに使っている長い腕で背中のアイツを抱き締めてやろう。
人影は自分を捕らえようと異形が伸ばしてきた腕をジャベリンで必死に捌いていた。分かりきっていたことだか動き自体は緩慢だか尋常ではなくしつこい。
なかなか背中の人間をつかまえられない異形はその事に対する鬱憤を興味が無いので放置していたもっと小さい人間(?)で
晴らすことにした。
突然の激しい揺れ。その直後異形が伸ばしてきた腕を人影はジャベリンで必死に捌いていた。動き自体は緩慢だか尋常ではなくしつこい。異形は更に二本の腕を伸ばし、その先端の焦げた枯れ木ののような指で人影の身体を狙う。
──バシュッ! と、一際大きな音と共に黒い液体が飛び散る。どうやら異形の一撃を受けたらしい。だが、人影はそのまま凌ぎ続ける。と異形の腕が一旦全て引っ込んだ。
(……)
なかなか人影を捕らえられず業を煮やした異形は憂さ晴らしをするつもりなのか標的を切り替えて完全に放置状態だった現在は100mほど前方でテナントビルの廃墟を覗き込んでいる謎の少女に向き直りスルスルと緩慢だが影のように素早い動作で近寄っていった。
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