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シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
第五章 19)バルザ殿の返答
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「サンチーヌ殿ですか、はじめまして、バルザと申します」
バルザ殿はサンチーヌへ手を差し出し、握手を求める。サンチーヌもその手をグッと握る。
以前は騎士団団長にして、パルという王国の司令官だったという自己紹介を、バルザ殿は仰られたりしないか、私は冷や冷やしながら見守っていたが、バルザ殿自身、その事実をを大っぴらにしたくないのだろう、そんなことおくびにも出されなかった。
一方、サンチーヌは堂々たるバルザ殿の佇まいに圧倒さている様子。
バルザ殿の身長の高さ、そして鍛え上げられた肉体、あまりに鋭過ぎる眼差し、彼のそんな姿を見れば誰だってこの人物が只者ではないということを理解するだろう。
むしろ勘が良いサンチーヌならば、目の前のこの人物があの本物のバルザ殿であることに気づいてしまうかもしれない。
私はそんな危惧を抱きつつ、あの話題を切り出す。
「我々はこのたび、裏手の森を切り開こうと考えています。そこを耕し、農作物を育て、出来るだけ自給自足を図りたい考えなのです」
「素晴らしいことではないでしょうか」
「しかし我々にはあの森を切り開く知識も経験もありません」
「なるほど、それではこの仕事、バルザが請け賜りましょう」
バルザ殿は私の機先を制するようにあっさりと言われた。
「ほ、本当ですか?」
「シャグラン殿、もちろんあなたも、このバルザ以外、この仕事の適任者はいないとお考えのはず」
やはりバルザ殿は温かい御方であった。そしてとてつもなく明晰な人である。どうして私がバルザ殿の許を訪れたのか、完璧に理解されておられたようだ。
「は、はい、実はそうでした!」
「我々人類の歴史は、森との格闘の連続。森を切り開き、耕作地として開拓することで、このように快適で豊かな生活を享受することが出来るようになった。あの森にも我々の手が加えられるのは歴史の必然。その仕事、すぐに始めましょう」
「有り難いことです、バルザ殿。更に申し上げなければいけないことがあります。塔の主プラーヌスは、召使いや掃除夫として働いている者たちを、この作業に当たらせる考え。しかし彼らの仕事への熱意は薄く、どれだけ協力的なのか不透明なのです」
「与えられた条件の中で全力を尽くすのが私の仕事。何の問題がありましょう」
バルザ殿がその仕事を心から喜んで受けてくださったのかどうかはわからない。
私は彼の表情を伺って、その心の裡を推測しようとするが、何も読むことは出来ない。
どんなときでも、バルザ殿の大きな瞳にはありとあらゆる感情が漲っているかのようだ。
まるで子供のようにキラキラした希望、全てを諦めた修道女のような静けさ、怒りの中にある父親の激しさ、何も夢見ない母のような優しさ、それを全部合わせれば無になってしまう。
私のような者が彼の胸中を推し量ることなんて不可能。
とはいえ、バルザ殿がどのような思いを抱かれておられようが、彼がこの仕事を引き受けてくれたということは事実。
そして彼が引き受けてくれたのならば、その仕事はもはや為ったも同然ということ。帰路の足取りはとても軽い。
バルザ殿はサンチーヌへ手を差し出し、握手を求める。サンチーヌもその手をグッと握る。
以前は騎士団団長にして、パルという王国の司令官だったという自己紹介を、バルザ殿は仰られたりしないか、私は冷や冷やしながら見守っていたが、バルザ殿自身、その事実をを大っぴらにしたくないのだろう、そんなことおくびにも出されなかった。
一方、サンチーヌは堂々たるバルザ殿の佇まいに圧倒さている様子。
バルザ殿の身長の高さ、そして鍛え上げられた肉体、あまりに鋭過ぎる眼差し、彼のそんな姿を見れば誰だってこの人物が只者ではないということを理解するだろう。
むしろ勘が良いサンチーヌならば、目の前のこの人物があの本物のバルザ殿であることに気づいてしまうかもしれない。
私はそんな危惧を抱きつつ、あの話題を切り出す。
「我々はこのたび、裏手の森を切り開こうと考えています。そこを耕し、農作物を育て、出来るだけ自給自足を図りたい考えなのです」
「素晴らしいことではないでしょうか」
「しかし我々にはあの森を切り開く知識も経験もありません」
「なるほど、それではこの仕事、バルザが請け賜りましょう」
バルザ殿は私の機先を制するようにあっさりと言われた。
「ほ、本当ですか?」
「シャグラン殿、もちろんあなたも、このバルザ以外、この仕事の適任者はいないとお考えのはず」
やはりバルザ殿は温かい御方であった。そしてとてつもなく明晰な人である。どうして私がバルザ殿の許を訪れたのか、完璧に理解されておられたようだ。
「は、はい、実はそうでした!」
「我々人類の歴史は、森との格闘の連続。森を切り開き、耕作地として開拓することで、このように快適で豊かな生活を享受することが出来るようになった。あの森にも我々の手が加えられるのは歴史の必然。その仕事、すぐに始めましょう」
「有り難いことです、バルザ殿。更に申し上げなければいけないことがあります。塔の主プラーヌスは、召使いや掃除夫として働いている者たちを、この作業に当たらせる考え。しかし彼らの仕事への熱意は薄く、どれだけ協力的なのか不透明なのです」
「与えられた条件の中で全力を尽くすのが私の仕事。何の問題がありましょう」
バルザ殿がその仕事を心から喜んで受けてくださったのかどうかはわからない。
私は彼の表情を伺って、その心の裡を推測しようとするが、何も読むことは出来ない。
どんなときでも、バルザ殿の大きな瞳にはありとあらゆる感情が漲っているかのようだ。
まるで子供のようにキラキラした希望、全てを諦めた修道女のような静けさ、怒りの中にある父親の激しさ、何も夢見ない母のような優しさ、それを全部合わせれば無になってしまう。
私のような者が彼の胸中を推し量ることなんて不可能。
とはいえ、バルザ殿がどのような思いを抱かれておられようが、彼がこの仕事を引き受けてくれたということは事実。
そして彼が引き受けてくれたのならば、その仕事はもはや為ったも同然ということ。帰路の足取りはとても軽い。
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