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54)シユエト <戦闘再開1>
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「思ったよりも時間が掛かったけれど、帰ってきたよ」
敵の魔法使いが場違いなくらい朗らかに微笑みながら、そのようなことを口にした。
シユエトはその姿を呆然と見つめる。エクリパンも隣で、彼と同じくらい呆然としているようだ。
「君たちは僕を閉じ込めたつもりだったんだろ? 確かに出口には頑丈な鍵がかかっていた。この僕でもその暗号を解くのに、けっこう時間がかかった。実際、少し焦ったんだよ。もしかしたら現実界とそこでは、いくらか時間の流れ方が違うのかもしれないなんて思ってね。何とか暗号を解いて帰ってきたのに、既にこっちでは日付けが変わっていたなんてこともありえるかもしれない。そうなると、君たちを探し出すのに苦労する。それどころか、戻った瞬間に、毒が廻って死んでしまうかもしれない」
敵の魔法使いは窓のほうに目をやった。「しかしそんなことはなかったようだね。太陽の位置はほとんど動いていない」
彼は視線を上に向けるために、尖った顎を少し突き上げた。そのとき彼の首が無防備にあわらになった。
後宮の女性のように白くて、細い首だ。ポキリと片手で折れそうなほど脆い。
いや、脆そうなのは首だけではない。女性のように華奢な身体つき。顔立ちも女性的である。美しく整っている容姿であることは事実。
しかし若くて、目の惹くような美しさであるが、その表情には、残酷さと、不敵さと、抜け目のなさも刻印されていて、その男にとって美しさや若さなど、取るに足らない個性にしか見えなかった。
(お、おい、エクリパン。俺たちは勝ったんじゃないのか? それなのに、なぜこいつは還ってきたんだよ・・・)
シユエトはその残酷で、抜け目なさそうな、若くて美しい魔法使いを見つめた。
その魔法使いはブランジュの胸を締めるように抱きかかえ、冷然と微笑んでいる。
「あの、えーと、聞いてくれる?」
ブランジュがシユエトとエクリパンに向かって申し訳無さそうに言ってきた。「私、あのサソリに噛まれたんですけど・・・」
「そうそう。この女の命を助けたければ、解毒剤を出して欲しい。当然のこと、君は持っているはずだ。まあ、常に持ち歩いているかどうかは知らないが。いずれにしろ、そういうつもりで彼女の首筋に、このサソリの尻尾を突き立てたわけだけど」
敵の魔法使いは、その右手にサソリを握っているようであった。手の中の赤黒い生き物は活きが良いのか、奇妙な角度に身体をくねらせている。
(エクリパンが放り投げたサソリだろう。敵の魔法使いもこのサソリに噛まれたのだ。それを逆に利用して、こちらを脅そうとしているのか・・・)
シユエトは驚愕からいくらか立ち直り、少しずつ自体が飲み込め始めた自分を自覚した。
「しかし君たちは、何やら内輪揉めでもしているようだな」
敵の魔法使いは、デボシュの死体に目をやりながら言った。「これは僕の殺った仕事じゃない。だとすると、この女の命も取引材料になりはしないのかもしれないね」
敵の魔法使いはそう言うと、ブランジュを優しく、こちらに押し返してきた。
しかしブランジュは無様なくらい足を絡ませ、二、三歩も進まないうちに転んだ。
「誰かを人質にしても、解毒剤を分けてもらえそうにないね。だったら、力づくで奪うしかない」
「お、俺を殺せば、このサソリの解毒剤は手に入らないぞ。こいつはけっこう特殊なサソリなんだ。解毒剤なんて代物、簡単に手に入りはしない」
エクリパンが身構えながら、不必要なくらいの大声で言い返した。
彼のほうも何とかして、敵の魔法使いが帰還した衝撃を受け入れようとしているようだ。
エクリパンの作戦で、奴を殺すことに成功したはずだった。束の間、その事実を確信して、勝利の味に酔いさえした。
それなのに敵は戻ってきたのだ。すなわち作戦失敗。
それはあまりに衝撃な事実。エクリパンが、シユエト以上に落胆しているのは間違いない。
(しかもだ)
どう見積もっても、実力の違いは明らかなである。
戻ってきた敵の魔法使いは、少しその気になりさえすれば、我々を一瞬で抹殺することが出来る。まだ殺されていないのは、ただの偶然に過ぎない。
(いや、しかしまだ全ての希望が潰えたわけでもないはず)
シユエトもそう考えて、何とか絶望的な状況から目を逸らす。
(解毒剤を求めているということは、奴がサソリの猛毒に犯されていることは事実なのだ。時間稼ぎさえすれば、まだ逆転も可能の状態のはず。少なくとも、エクリパンはそう思い込もうとしているようだ)
「お、俺を殺せば、お前も死ぬ。確実に、間違いなく。解毒剤が手に入らなくなるのだから。なあ、命が惜しいだろ? 魔法使いだもんな。俺たちの命は、他とは価値が違う」
エクリパンが叫ぶように言った。
「ああ、その通りだ。死ぬつもりはない」
敵の魔法使いは冷静に返す。
「だ、だから、あんたはどうあっても、俺を殺すことは出来ない。なあ、あんたが望むのならば取引に応じてやってもいいぜ。俺たちはあんたの持っている塔の権利書が欲しい。それと解毒剤との交換だ」
「ああ、なるほど。それが望みで、僕を襲ってきたわけか。いつかそのような者が僕を襲来してくるとは思っていたけれど。まさかこんな大勢で来るとはね。と言っても、ほとんど死んでしまったようだが」
敵の魔法使いは幾つかの死体を見渡しながら言った。
エクリパンも余裕を見せるためか、その死体を見下ろす。
「そ、それが塔の権利を購入した者の宿命だよ。塔を正式に購入した魔法使いで、そのまま塔の主になれた者は、僅かと言うじゃないか。常に誰かに命を狙われる。完全に塔を手中に収めるまで、少しの油断出来ない。あんたもその維持に失敗したんだよ」
「そうだな。確かにこのサソリの毒は厄介だ。塔の権利書など、命に比べると、それほどの価値はない」
「そうだよ。この取引に応じなければ、あんたはサソリの毒が回って死ぬ」
「塔の権利なんて、いずれまた手に入る。命こそ、何より優先すべきかもしれないね」
敵の魔法使いがわざとらしい表情で、迷っている振りをした。
「そ、そうさ!」
しかしエクリパンはそれに騙されたのか、弾むような声を上げた。
敵の魔法使いはすぐに、彼の希望を打ち砕く。
「でも君はさっきから、この解毒剤を所有しているのは自分だけだと言い張っているが、それを鵜呑みにする気になれないね。君だって、どこから手に入れたに過ぎないはず。僕たち魔法使いに、距離などないも同然。まだ数時間は命が持つんだろ? 薬屋を訪ね回れば、いずれどこかで手に入るだろう」
「いや、それは希望的観測っていうもんだぜ」
エクリパンが精一杯の虚勢を張るようにして、大袈裟に笑った。
「でも僕はそれに賭けることにした。とにかく君を殺しておきたいんだ」
「な、何だと・・・」
「殺す」という言葉は衝撃だったようだ。エクリパンの顔から、全ての余裕が消え去った。
「僕は頭痛という持病があってね。それは本当にとてつもない激痛だよ。そのせいで、それなりに優秀な医師や薬屋の知り合いが多い。そこを廻れば、解毒剤もすぐに手に入る。今回に限っては、その持病が幸いしたのかもしれない。君に頼るまでも無さそうだ」
「・・・そ、そうかい」
「本当に落ち込んでいるようだね? 残念なことに君たちはさっきの攻撃で僕を殺すことが出来なかった。それに失敗した時点で負けたんだよ。素晴らしい攻撃だったと思う。しかし同じ魔法は二度と通用しない。それともまだ奥の手があるのか?」
「お、奥の手・・・」
エクリパンの表情に少しだけ生気が蘇った。最後にもう一度、そっちから攻撃を仕掛けて来いと、敵の魔法使いは言ってきているのだ。
ならばまだ、挽回のチャンスはあるのかもしれないということ。
「あ、あるぜ。見せてやる・・・」
しかしそんなものは到底ありそうになかった。エクリパンの表情は、どう見えても冷静に見えない。
どうにかしてこの窮地を逃れようと頭を回転させているようであるが、死の恐怖を前にして空回りしている。
(駄目だ。戦士としてのエクリパンは二流、いや、それ以下)
無様なくらいに取り乱しているエクリパンを観察しながら、シユエトは思った。
それにしても、こんなときにダンテスクは何をしているのだろうか?
戦場から遠く離れた場所で、冷静に新しい作戦を練れるはず。それなのに彼はアドバイスを寄こすこともなく、ずっと黙ったきりなのである。
(ダンテスクは俺たちを見限りつもりなのか? それとも、予想していない事態に、何も言葉が出ないのか? エクリパンも戦いの素人ならば、ダンテスクも同様だ)
負ける。
今度こそ、俺たちは殺される。
シユエトはそんな運命を、自分の確かな未来として見て取った。
敵の魔法使いが場違いなくらい朗らかに微笑みながら、そのようなことを口にした。
シユエトはその姿を呆然と見つめる。エクリパンも隣で、彼と同じくらい呆然としているようだ。
「君たちは僕を閉じ込めたつもりだったんだろ? 確かに出口には頑丈な鍵がかかっていた。この僕でもその暗号を解くのに、けっこう時間がかかった。実際、少し焦ったんだよ。もしかしたら現実界とそこでは、いくらか時間の流れ方が違うのかもしれないなんて思ってね。何とか暗号を解いて帰ってきたのに、既にこっちでは日付けが変わっていたなんてこともありえるかもしれない。そうなると、君たちを探し出すのに苦労する。それどころか、戻った瞬間に、毒が廻って死んでしまうかもしれない」
敵の魔法使いは窓のほうに目をやった。「しかしそんなことはなかったようだね。太陽の位置はほとんど動いていない」
彼は視線を上に向けるために、尖った顎を少し突き上げた。そのとき彼の首が無防備にあわらになった。
後宮の女性のように白くて、細い首だ。ポキリと片手で折れそうなほど脆い。
いや、脆そうなのは首だけではない。女性のように華奢な身体つき。顔立ちも女性的である。美しく整っている容姿であることは事実。
しかし若くて、目の惹くような美しさであるが、その表情には、残酷さと、不敵さと、抜け目のなさも刻印されていて、その男にとって美しさや若さなど、取るに足らない個性にしか見えなかった。
(お、おい、エクリパン。俺たちは勝ったんじゃないのか? それなのに、なぜこいつは還ってきたんだよ・・・)
シユエトはその残酷で、抜け目なさそうな、若くて美しい魔法使いを見つめた。
その魔法使いはブランジュの胸を締めるように抱きかかえ、冷然と微笑んでいる。
「あの、えーと、聞いてくれる?」
ブランジュがシユエトとエクリパンに向かって申し訳無さそうに言ってきた。「私、あのサソリに噛まれたんですけど・・・」
「そうそう。この女の命を助けたければ、解毒剤を出して欲しい。当然のこと、君は持っているはずだ。まあ、常に持ち歩いているかどうかは知らないが。いずれにしろ、そういうつもりで彼女の首筋に、このサソリの尻尾を突き立てたわけだけど」
敵の魔法使いは、その右手にサソリを握っているようであった。手の中の赤黒い生き物は活きが良いのか、奇妙な角度に身体をくねらせている。
(エクリパンが放り投げたサソリだろう。敵の魔法使いもこのサソリに噛まれたのだ。それを逆に利用して、こちらを脅そうとしているのか・・・)
シユエトは驚愕からいくらか立ち直り、少しずつ自体が飲み込め始めた自分を自覚した。
「しかし君たちは、何やら内輪揉めでもしているようだな」
敵の魔法使いは、デボシュの死体に目をやりながら言った。「これは僕の殺った仕事じゃない。だとすると、この女の命も取引材料になりはしないのかもしれないね」
敵の魔法使いはそう言うと、ブランジュを優しく、こちらに押し返してきた。
しかしブランジュは無様なくらい足を絡ませ、二、三歩も進まないうちに転んだ。
「誰かを人質にしても、解毒剤を分けてもらえそうにないね。だったら、力づくで奪うしかない」
「お、俺を殺せば、このサソリの解毒剤は手に入らないぞ。こいつはけっこう特殊なサソリなんだ。解毒剤なんて代物、簡単に手に入りはしない」
エクリパンが身構えながら、不必要なくらいの大声で言い返した。
彼のほうも何とかして、敵の魔法使いが帰還した衝撃を受け入れようとしているようだ。
エクリパンの作戦で、奴を殺すことに成功したはずだった。束の間、その事実を確信して、勝利の味に酔いさえした。
それなのに敵は戻ってきたのだ。すなわち作戦失敗。
それはあまりに衝撃な事実。エクリパンが、シユエト以上に落胆しているのは間違いない。
(しかもだ)
どう見積もっても、実力の違いは明らかなである。
戻ってきた敵の魔法使いは、少しその気になりさえすれば、我々を一瞬で抹殺することが出来る。まだ殺されていないのは、ただの偶然に過ぎない。
(いや、しかしまだ全ての希望が潰えたわけでもないはず)
シユエトもそう考えて、何とか絶望的な状況から目を逸らす。
(解毒剤を求めているということは、奴がサソリの猛毒に犯されていることは事実なのだ。時間稼ぎさえすれば、まだ逆転も可能の状態のはず。少なくとも、エクリパンはそう思い込もうとしているようだ)
「お、俺を殺せば、お前も死ぬ。確実に、間違いなく。解毒剤が手に入らなくなるのだから。なあ、命が惜しいだろ? 魔法使いだもんな。俺たちの命は、他とは価値が違う」
エクリパンが叫ぶように言った。
「ああ、その通りだ。死ぬつもりはない」
敵の魔法使いは冷静に返す。
「だ、だから、あんたはどうあっても、俺を殺すことは出来ない。なあ、あんたが望むのならば取引に応じてやってもいいぜ。俺たちはあんたの持っている塔の権利書が欲しい。それと解毒剤との交換だ」
「ああ、なるほど。それが望みで、僕を襲ってきたわけか。いつかそのような者が僕を襲来してくるとは思っていたけれど。まさかこんな大勢で来るとはね。と言っても、ほとんど死んでしまったようだが」
敵の魔法使いは幾つかの死体を見渡しながら言った。
エクリパンも余裕を見せるためか、その死体を見下ろす。
「そ、それが塔の権利を購入した者の宿命だよ。塔を正式に購入した魔法使いで、そのまま塔の主になれた者は、僅かと言うじゃないか。常に誰かに命を狙われる。完全に塔を手中に収めるまで、少しの油断出来ない。あんたもその維持に失敗したんだよ」
「そうだな。確かにこのサソリの毒は厄介だ。塔の権利書など、命に比べると、それほどの価値はない」
「そうだよ。この取引に応じなければ、あんたはサソリの毒が回って死ぬ」
「塔の権利なんて、いずれまた手に入る。命こそ、何より優先すべきかもしれないね」
敵の魔法使いがわざとらしい表情で、迷っている振りをした。
「そ、そうさ!」
しかしエクリパンはそれに騙されたのか、弾むような声を上げた。
敵の魔法使いはすぐに、彼の希望を打ち砕く。
「でも君はさっきから、この解毒剤を所有しているのは自分だけだと言い張っているが、それを鵜呑みにする気になれないね。君だって、どこから手に入れたに過ぎないはず。僕たち魔法使いに、距離などないも同然。まだ数時間は命が持つんだろ? 薬屋を訪ね回れば、いずれどこかで手に入るだろう」
「いや、それは希望的観測っていうもんだぜ」
エクリパンが精一杯の虚勢を張るようにして、大袈裟に笑った。
「でも僕はそれに賭けることにした。とにかく君を殺しておきたいんだ」
「な、何だと・・・」
「殺す」という言葉は衝撃だったようだ。エクリパンの顔から、全ての余裕が消え去った。
「僕は頭痛という持病があってね。それは本当にとてつもない激痛だよ。そのせいで、それなりに優秀な医師や薬屋の知り合いが多い。そこを廻れば、解毒剤もすぐに手に入る。今回に限っては、その持病が幸いしたのかもしれない。君に頼るまでも無さそうだ」
「・・・そ、そうかい」
「本当に落ち込んでいるようだね? 残念なことに君たちはさっきの攻撃で僕を殺すことが出来なかった。それに失敗した時点で負けたんだよ。素晴らしい攻撃だったと思う。しかし同じ魔法は二度と通用しない。それともまだ奥の手があるのか?」
「お、奥の手・・・」
エクリパンの表情に少しだけ生気が蘇った。最後にもう一度、そっちから攻撃を仕掛けて来いと、敵の魔法使いは言ってきているのだ。
ならばまだ、挽回のチャンスはあるのかもしれないということ。
「あ、あるぜ。見せてやる・・・」
しかしそんなものは到底ありそうになかった。エクリパンの表情は、どう見えても冷静に見えない。
どうにかしてこの窮地を逃れようと頭を回転させているようであるが、死の恐怖を前にして空回りしている。
(駄目だ。戦士としてのエクリパンは二流、いや、それ以下)
無様なくらいに取り乱しているエクリパンを観察しながら、シユエトは思った。
それにしても、こんなときにダンテスクは何をしているのだろうか?
戦場から遠く離れた場所で、冷静に新しい作戦を練れるはず。それなのに彼はアドバイスを寄こすこともなく、ずっと黙ったきりなのである。
(ダンテスクは俺たちを見限りつもりなのか? それとも、予想していない事態に、何も言葉が出ないのか? エクリパンも戦いの素人ならば、ダンテスクも同様だ)
負ける。
今度こそ、俺たちは殺される。
シユエトはそんな運命を、自分の確かな未来として見て取った。
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