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身軽なわたしたち
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川原を後にした美亜たち。
ドラゴンの落とし物を根こそぎ持って帰ることにしたガストールたち三人は、かなりの大荷物を背負う形となった。象牙のように大きな一本の爪は、ガストールが肩に担いでいる。その上ホームベースのような鱗を各々5~6枚背負っている。鱗は硬い割にそれほどの重さはないみたいだけど、なに分その大きさが嵩張る。しかも、エッジが鋭く下手すると皮膚がスパッと切れる。足に落としでもしようものなら、確実に指が飛ぶだろう。布で包んではいるものの扱いに注意が必要だ。
○ロハリとか○モアみたいに頑丈そうな、旅行用のスーツケース。そんな物を魔法で出してあげた方が良いかな、とも思った。だけど、彼らには彼らのスタイルがある。スーツケースをずるずる引き摺る姿はあまり似合うとは思えない。それにあれは、滑らかな床や絨毯でもない限り、かなりうるさい音がする。出張の時に持参して、思いがけない騒音に恥ずかしい思いをした記憶がある。いずれにせよ、今のところ事も無げに運んでいる様なので、余計な口出しは無用であろうと判断した。
ドラゴンの落とし物の他にも、彼らが元々持っていた荷物もある。それにも関わらず軽快に歩いていくガストールたち。細身に見えるナターシャも例外ではない。脱いだらバキバキに腹筋が割れてたりするんだろうか。そもそも育ち方が違うのだろう。皆なかなか強靭な体力の持ち主だ。
一方で、あまりにも身軽なわたしたち。身軽どころか何も持っていない。ポケットにハンカチすら入っていない。冷静に考えると、ちょっとあり得ないかもしれない。
ガストールにドラゴンの鱗はいらないのかと聞かれたが、全くもって興味がない。蛇の皮とか、魚の鱗をいるか? と聞かれても、間違いなく、いらないと答えるだろう。だって、何だか生臭そうだし、汚らしい。仮に象牙が欲しいかと聞かれたとしても、別に欲しいものではない。非常に高額で売れると聞いても、お金の必要性を感じていない今は、特に食指が動くこともなかった。
先頭を歩くのはガストールとアレックス。その後に続いて、ナターシャとわたしが並んで歩いている。ツカサは少し離れた後ろの方を歩いている。
ナターシャとはすっかり仲良くなった。道すがら女子トークに花が咲く。長く暗い孤独な生活で幕を閉じたわたしにとって、ナターシャとの会話は、久しぶりに感じる楽しさだった。
かつて全てが信じられなくなって心を閉ざした。誰とだって初めはそう、感じの良い人だと思って関係がはじまる。だけど気がつくと、いつの間にか不快感が増してくる。それは、自分がどんなに心を開いても、それを受け入れてもらえないことが分かってくるから。受け入れないどころか、拒否をするところが見えてくるから。拒否するだけならまだしも、あろうことか攻撃に転じる人が現れるから。そして、一番厄介なのは、人を変えることが出来ると思う人が現れること……。
ナターシャとの女子トークを楽しみながらも、心の何処かで一歩引いている自分を感じる美亜であった。
ドラゴンの落とし物を根こそぎ持って帰ることにしたガストールたち三人は、かなりの大荷物を背負う形となった。象牙のように大きな一本の爪は、ガストールが肩に担いでいる。その上ホームベースのような鱗を各々5~6枚背負っている。鱗は硬い割にそれほどの重さはないみたいだけど、なに分その大きさが嵩張る。しかも、エッジが鋭く下手すると皮膚がスパッと切れる。足に落としでもしようものなら、確実に指が飛ぶだろう。布で包んではいるものの扱いに注意が必要だ。
○ロハリとか○モアみたいに頑丈そうな、旅行用のスーツケース。そんな物を魔法で出してあげた方が良いかな、とも思った。だけど、彼らには彼らのスタイルがある。スーツケースをずるずる引き摺る姿はあまり似合うとは思えない。それにあれは、滑らかな床や絨毯でもない限り、かなりうるさい音がする。出張の時に持参して、思いがけない騒音に恥ずかしい思いをした記憶がある。いずれにせよ、今のところ事も無げに運んでいる様なので、余計な口出しは無用であろうと判断した。
ドラゴンの落とし物の他にも、彼らが元々持っていた荷物もある。それにも関わらず軽快に歩いていくガストールたち。細身に見えるナターシャも例外ではない。脱いだらバキバキに腹筋が割れてたりするんだろうか。そもそも育ち方が違うのだろう。皆なかなか強靭な体力の持ち主だ。
一方で、あまりにも身軽なわたしたち。身軽どころか何も持っていない。ポケットにハンカチすら入っていない。冷静に考えると、ちょっとあり得ないかもしれない。
ガストールにドラゴンの鱗はいらないのかと聞かれたが、全くもって興味がない。蛇の皮とか、魚の鱗をいるか? と聞かれても、間違いなく、いらないと答えるだろう。だって、何だか生臭そうだし、汚らしい。仮に象牙が欲しいかと聞かれたとしても、別に欲しいものではない。非常に高額で売れると聞いても、お金の必要性を感じていない今は、特に食指が動くこともなかった。
先頭を歩くのはガストールとアレックス。その後に続いて、ナターシャとわたしが並んで歩いている。ツカサは少し離れた後ろの方を歩いている。
ナターシャとはすっかり仲良くなった。道すがら女子トークに花が咲く。長く暗い孤独な生活で幕を閉じたわたしにとって、ナターシャとの会話は、久しぶりに感じる楽しさだった。
かつて全てが信じられなくなって心を閉ざした。誰とだって初めはそう、感じの良い人だと思って関係がはじまる。だけど気がつくと、いつの間にか不快感が増してくる。それは、自分がどんなに心を開いても、それを受け入れてもらえないことが分かってくるから。受け入れないどころか、拒否をするところが見えてくるから。拒否するだけならまだしも、あろうことか攻撃に転じる人が現れるから。そして、一番厄介なのは、人を変えることが出来ると思う人が現れること……。
ナターシャとの女子トークを楽しみながらも、心の何処かで一歩引いている自分を感じる美亜であった。
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