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必死の弁明
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アルジェラ様の名を告げたものの、掠りもしなかった。それは誰だと言われても、それ以上の情報は特にない。そもそも知らない。どうしたものか、と押し黙ってしまった美亜。
「そのアルジェラ様と言う方は、どこかの王族の方ですか?」
しらけた雰囲気の中、沈黙を破って質問をしてくれたのは、ナターシャ。この人、いい人だ……。
「いや、そんな名の奴、俺は知らん! 魔族に違いない!!」
ナターシャの言葉を遮るように、アレックスが声を荒げる。こいつやっぱ、やな奴。しかも、なんで怒り気味なんだ。
「た……確かに。アルジェラ様は、人間ではなさそうでした。肌の色は血の気の引いた変な色で、頭からは角とか生えちゃってましたし……」
少し慌てて説明した。もはやその表現の仕方からして、アルジェラ様の地位は、だだ下がりだ。ただし、異常にデカかったということは、言及しないでおいた。それが大魔王の特徴だったら、更に追求が面倒になると咄嗟に思ったからだ。
その説明に対し、ガストールが口を開いた。
「角か……。角があったってこたぁ、魔人だな……。しかも転移魔法を使えるとなると、かなり上位の魔人だ……」
ガストールの言葉の途中で、アレックスが立ち上がった。
「つまり! 貴様らは、その魔人の手先なんだな!? そうでもなければ、あんなに巧みにドラゴンの力を封じられるわけがない!!」
しかも大剣を今にも振りかざさんとして握りしめている。
あまりの勢いに若干身を引いて、座っていた岩場からずっこけそうになった美亜。ツカサは平然として岩場に腰掛けている。
「ま、待てよ! アレックス!!」
素早くガストールが、アレックスの大剣を握りしめた腕を掴む。
「ご、誤解です。わ、わたしたちは、その魔人だか何だかに、連れ去られたんです。草原で楽しく暮らしていたら、攫われたんです。つ、つまり、被害者なのです。結局は、何かの間違いだったらしいんですけど。ほんと、いい迷惑ですよ。そして用無しということで、ここに飛ばされたんです」
ちょっと必死に弁明した。言ったことは嘘ではない。しかし何だか、このところひたすら弁明しているばかりの様な気がする。アルジェラ様の前に呼び出されて覗きの現行犯ではないと弁明し、また今ここで、助けてやった筈の三人に囲まれて魔族の手先ではないと弁明している。
一体何なんだろう……。
「そのアルジェラ様と言う方は、どこかの王族の方ですか?」
しらけた雰囲気の中、沈黙を破って質問をしてくれたのは、ナターシャ。この人、いい人だ……。
「いや、そんな名の奴、俺は知らん! 魔族に違いない!!」
ナターシャの言葉を遮るように、アレックスが声を荒げる。こいつやっぱ、やな奴。しかも、なんで怒り気味なんだ。
「た……確かに。アルジェラ様は、人間ではなさそうでした。肌の色は血の気の引いた変な色で、頭からは角とか生えちゃってましたし……」
少し慌てて説明した。もはやその表現の仕方からして、アルジェラ様の地位は、だだ下がりだ。ただし、異常にデカかったということは、言及しないでおいた。それが大魔王の特徴だったら、更に追求が面倒になると咄嗟に思ったからだ。
その説明に対し、ガストールが口を開いた。
「角か……。角があったってこたぁ、魔人だな……。しかも転移魔法を使えるとなると、かなり上位の魔人だ……」
ガストールの言葉の途中で、アレックスが立ち上がった。
「つまり! 貴様らは、その魔人の手先なんだな!? そうでもなければ、あんなに巧みにドラゴンの力を封じられるわけがない!!」
しかも大剣を今にも振りかざさんとして握りしめている。
あまりの勢いに若干身を引いて、座っていた岩場からずっこけそうになった美亜。ツカサは平然として岩場に腰掛けている。
「ま、待てよ! アレックス!!」
素早くガストールが、アレックスの大剣を握りしめた腕を掴む。
「ご、誤解です。わ、わたしたちは、その魔人だか何だかに、連れ去られたんです。草原で楽しく暮らしていたら、攫われたんです。つ、つまり、被害者なのです。結局は、何かの間違いだったらしいんですけど。ほんと、いい迷惑ですよ。そして用無しということで、ここに飛ばされたんです」
ちょっと必死に弁明した。言ったことは嘘ではない。しかし何だか、このところひたすら弁明しているばかりの様な気がする。アルジェラ様の前に呼び出されて覗きの現行犯ではないと弁明し、また今ここで、助けてやった筈の三人に囲まれて魔族の手先ではないと弁明している。
一体何なんだろう……。
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