49 / 128
この世界で魔法は一般的でした
しおりを挟む
美亜が一度は捕まえて食べようとした白い猫のような動物、ツカサ。ツカサはこの世界では聖獣と呼ばれる生き物らしい。
「……あ、ああ。ツカサのことですね。あれは、魔法で姿を変えたんです」
「魔法で姿を変えた? なるほど、幻影魔法か」
わたしの魔法は、幻影魔法と言うのだろうか。立派に実体化しているし、決して幻影では無いような気もする。だけど、なるほど言い得て妙だとも思った。この世界で目覚めた時、魔法は自分だけに与えられた特別な力だと思っていた。だけど、空を飛ぶ人間の存在を目の当たりにしたことで、この世界でわたしの考える常識は通じないのだと理解した。更には彼らが魔力とか魔族とかいう言葉を使っているのを聞いて、魔法というものが一般的な存在であることを確信する。
「わたしは聖獣ではないですよ。普通の人間です」
「その様だな。私にもそう見えている。クリラが不思議なことを言っていたが、それはありえないことだ……」
白髪紳士ハインケラが、そこで言葉を切って速度を落とした。いつの間にやら上空は薄紫色のオーロラのような煌めきに覆われており、雲が厚みを増して辺りが少し暗くなってきた。
「これって、魔法で空を飛んでいるんですか?」
「そうだ。お前は空力魔法を使えないのか?」
「はい。たぶん。試したことはないですけど」
もしかして、自分も魔法で空を飛べるんだろうか。屋上に向かってジャンプしようと思ったとき、脚力に頼らず魔法で念じれば飛べたんだろうか。しかし、同じ魔法でも得意不得意があるのかもしれない。とは言え理不尽な程に思ったモノを出せるくらいだから、思ったことを何でもできる方が、むしろ理にかなっているような気もする。
「魔眼や幻影魔法は、お前の魔力によるものなのか?」
望遠鏡を魔眼というのだろうか。モノを出現させることを幻影魔法というのだろうか。多少疑問はあるものの、この世界では、きっとそういう解釈なのだろう。
「はい。おそらく」
「やはりそうか。お前からそれ程強力な魔力は感じないのだが、クリラが言うように魔力ゼロというのは間違いのようだな。ましてや、レビアスとの調和率ゼロなどありえない」
ハインケラは何やら納得した様子だけれど、わたしには盛大に疑問が残った。レビアスって何だろうか。人の名前ではなさそうだ。それに調和率ゼロって……。何となく協調性なしと言われたような気がして不愉快だ。だからと言って、人からの評価なんて今更この世界で気にしたってしょうがない。
美亜がそんなことを考えていると、飛ぶ速度がさらに遅くなった。同時にハインケラが体制を垂直方向に戻していく。美亜が振り向くと、急角度にそびえ立つ塔のような山頂を持つ巨大な山々が迫っていた。
「……あ、ああ。ツカサのことですね。あれは、魔法で姿を変えたんです」
「魔法で姿を変えた? なるほど、幻影魔法か」
わたしの魔法は、幻影魔法と言うのだろうか。立派に実体化しているし、決して幻影では無いような気もする。だけど、なるほど言い得て妙だとも思った。この世界で目覚めた時、魔法は自分だけに与えられた特別な力だと思っていた。だけど、空を飛ぶ人間の存在を目の当たりにしたことで、この世界でわたしの考える常識は通じないのだと理解した。更には彼らが魔力とか魔族とかいう言葉を使っているのを聞いて、魔法というものが一般的な存在であることを確信する。
「わたしは聖獣ではないですよ。普通の人間です」
「その様だな。私にもそう見えている。クリラが不思議なことを言っていたが、それはありえないことだ……」
白髪紳士ハインケラが、そこで言葉を切って速度を落とした。いつの間にやら上空は薄紫色のオーロラのような煌めきに覆われており、雲が厚みを増して辺りが少し暗くなってきた。
「これって、魔法で空を飛んでいるんですか?」
「そうだ。お前は空力魔法を使えないのか?」
「はい。たぶん。試したことはないですけど」
もしかして、自分も魔法で空を飛べるんだろうか。屋上に向かってジャンプしようと思ったとき、脚力に頼らず魔法で念じれば飛べたんだろうか。しかし、同じ魔法でも得意不得意があるのかもしれない。とは言え理不尽な程に思ったモノを出せるくらいだから、思ったことを何でもできる方が、むしろ理にかなっているような気もする。
「魔眼や幻影魔法は、お前の魔力によるものなのか?」
望遠鏡を魔眼というのだろうか。モノを出現させることを幻影魔法というのだろうか。多少疑問はあるものの、この世界では、きっとそういう解釈なのだろう。
「はい。おそらく」
「やはりそうか。お前からそれ程強力な魔力は感じないのだが、クリラが言うように魔力ゼロというのは間違いのようだな。ましてや、レビアスとの調和率ゼロなどありえない」
ハインケラは何やら納得した様子だけれど、わたしには盛大に疑問が残った。レビアスって何だろうか。人の名前ではなさそうだ。それに調和率ゼロって……。何となく協調性なしと言われたような気がして不愉快だ。だからと言って、人からの評価なんて今更この世界で気にしたってしょうがない。
美亜がそんなことを考えていると、飛ぶ速度がさらに遅くなった。同時にハインケラが体制を垂直方向に戻していく。美亜が振り向くと、急角度にそびえ立つ塔のような山頂を持つ巨大な山々が迫っていた。
10
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる