9 / 128
未開の土地のサバイバル
しおりを挟む
美亜は、森の中を歩き続ける。
森はまばらに木々が立ち並ぶ雑木林なので、比較的歩きやすい。鬱蒼としたジャングルの様な森だったら、わざわざ分け入って突き進むというようなことはしなかっただろう。しかし雑木林のようなその風景は、進めどもいっこうに何も変わらず、どこまでいっても高い木々が立ち並ぶばかりだ。
わたしは、人も存在しないようなとんでもなく未開の土地に、一人放り出されたのだろうか。
微かに不安がよぎる。だけど、その不安て何だろう。未開の土地に放り出されて、わたしはいったい何が困るのだろうか。電気・ガス・水道とか、生活に必要な設備が無いってことだろうか。水道が無くても、川か何かを見つければいい気がする。ガスが無くても、自力で火を起こせば済むことだ。電気なんてスマホも持ってないし、はなから必要な気がしない。結局のところ、別に困ることなんてないじゃない。と、あっけらかんと考えた。
まあそうは言っても、生活するなら未開の土地より、ある程度の文化圏の方がいいにこしたことはない。でも文化圏に辿り着いたら、人と会うことになる。せっかく一人になれたのに、また人との葛藤に巻き込まれて、そんなことで悩むのは嫌だ。
だったら、このまま一人ぼっちでもいいんじゃないか。
と、これまたあっけらかんと考えた。
では何を求めて、わたしは歩いていくのか。
それをあえて考えるとすれば、居心地の良い場所を探すくらいの理由でしかない。例えば、静かな山間の湖畔とか。できれば温泉も近くにあって欲しい。文化圏に入り込みたくはないけれど、近所に街というか人里があるくらいの安心感はあっても悪くない気もする。人とは関わりたくないけど、存在は感じたい。ぶっちゃけ便利なサービスがあれば利用したい。それって、何とも自分勝手な考えだ。
でも、せっかくだから自分勝手に生きよう。
そう思った。
ところで人との関わりを心配してみたものの、美亜を取り囲んでいる森は、完全なる自然林。人の手が加わっている様子は、微塵もない。もしかして、この世界に文明はないのだろうか。まさか、人自体が存在しないのだろうか。そもそもこの世界の生物はどの様なものなのだろうか。
時々木々の間で物音がする。スズメやカラスくらいの大きさの鳥が飛び交っているのは何度も見た。木の幹をつたうリスのような生き物や、枝の間を飛び移る猿のような生き物も見た。遠くの方で犬の遠吠えのような鳴き声は聞こえたが、狼とか熊とか大型の動物には遭遇していない。
よく知る森の動物とは別に、魔物や精霊みたいな得体の知れない何かが出てくることもない。エルフやトロールやゴブリンなど、美亜が思い描く異世界住人との出会いの気配もまるで無しだ。
森はまばらに木々が立ち並ぶ雑木林なので、比較的歩きやすい。鬱蒼としたジャングルの様な森だったら、わざわざ分け入って突き進むというようなことはしなかっただろう。しかし雑木林のようなその風景は、進めどもいっこうに何も変わらず、どこまでいっても高い木々が立ち並ぶばかりだ。
わたしは、人も存在しないようなとんでもなく未開の土地に、一人放り出されたのだろうか。
微かに不安がよぎる。だけど、その不安て何だろう。未開の土地に放り出されて、わたしはいったい何が困るのだろうか。電気・ガス・水道とか、生活に必要な設備が無いってことだろうか。水道が無くても、川か何かを見つければいい気がする。ガスが無くても、自力で火を起こせば済むことだ。電気なんてスマホも持ってないし、はなから必要な気がしない。結局のところ、別に困ることなんてないじゃない。と、あっけらかんと考えた。
まあそうは言っても、生活するなら未開の土地より、ある程度の文化圏の方がいいにこしたことはない。でも文化圏に辿り着いたら、人と会うことになる。せっかく一人になれたのに、また人との葛藤に巻き込まれて、そんなことで悩むのは嫌だ。
だったら、このまま一人ぼっちでもいいんじゃないか。
と、これまたあっけらかんと考えた。
では何を求めて、わたしは歩いていくのか。
それをあえて考えるとすれば、居心地の良い場所を探すくらいの理由でしかない。例えば、静かな山間の湖畔とか。できれば温泉も近くにあって欲しい。文化圏に入り込みたくはないけれど、近所に街というか人里があるくらいの安心感はあっても悪くない気もする。人とは関わりたくないけど、存在は感じたい。ぶっちゃけ便利なサービスがあれば利用したい。それって、何とも自分勝手な考えだ。
でも、せっかくだから自分勝手に生きよう。
そう思った。
ところで人との関わりを心配してみたものの、美亜を取り囲んでいる森は、完全なる自然林。人の手が加わっている様子は、微塵もない。もしかして、この世界に文明はないのだろうか。まさか、人自体が存在しないのだろうか。そもそもこの世界の生物はどの様なものなのだろうか。
時々木々の間で物音がする。スズメやカラスくらいの大きさの鳥が飛び交っているのは何度も見た。木の幹をつたうリスのような生き物や、枝の間を飛び移る猿のような生き物も見た。遠くの方で犬の遠吠えのような鳴き声は聞こえたが、狼とか熊とか大型の動物には遭遇していない。
よく知る森の動物とは別に、魔物や精霊みたいな得体の知れない何かが出てくることもない。エルフやトロールやゴブリンなど、美亜が思い描く異世界住人との出会いの気配もまるで無しだ。
10
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる