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戦場の少年少女

幕間・数ヶ月前

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 真っ暗な部屋に1人の男がいた。
 光をつけようともせず、椅子にゆったりと座っている。デバイスから漏れる光が男の顔を照らしていた。
 男は机に埋め込まれたデバイスで世界地図を開く。いつの時代であっても勢力図であった世界地図は、大混乱期から24世紀にかけて。その地図の中東辺りに赤い印があった。
 定刻になると、男のデバイスにSoundOnlyの文字が表示される。

「久しぶりだな、レン。いや、もうこの名前では無かったな。こちらのデコードの準備は完了した。18年ちょっとあったとはいえ、この量のデコードの生産は骨が折れたぞ。人型ならまだしも、まさかあの形をデコードで再現しようとは。天才の考えは相変わらず理解できんよ」

 男のデバイスから老人の声が響く。

「計画を遂行するにはこうするしかない。お前もわかっているはずだ。ましてやその年で竜が実際に存在すると妄想しているわけでもあるまい」
「まぁ、そうだな。今までも散々お前の頭脳には世話になったからな。だが、鍵となる剣はどうするんだ。技術が進歩したとはいえ、聖遺物を人類の手で作るわけにもいくまい」

 男は「安心しろ」というと、先ほど見ていた世界地図を老人に転送する。

「地図に記された赤い印に剣はある。お前は地上を離れて久しいからな、知らないと思うが我が国は地上の領土拡大を優先した」
「剣の探索を見越して、か。相変わらず利用できるものはとことんするたちだな。だが、国を利用するとなればそんなものが見つかったら怪しまれるだろ。お前だからそんなヘマはしないと思うが」
「国土の拡張は資源の確保としか計画書には書いてないからな。混乱期に大部分が崩壊したとはいえ、中東あたりには大量の海水淡水化施設があるからな。ほぼ全ての土地が砂漠に覆われている今、その施設の役割は重大だ。俺にとっては二の次だが、この計画を実行するにあたっては便利な駒になった。この計画で発見した遺跡なりなんなりは、計画発案者の俺の管轄下だ。そもそも中央はそんなものに興味はない。どうせセントラル博物館に展示するだけだからな。奴らは国の維持と戦争に手一杯だ」
「運が味方したな。まぁ、それさえ手に入れていれば特に問題はないだろう。デコード自体の準備は済んだ。四騎士の準備にも既に取り掛かっている。あとはお前の合図次第だ。後戻りは、もうできないからな」
「そんな事するつもりなどない。たとえ世界を滅ぼそうと、我々が真に必要なのは恒久なる平和だ」

 男は通信切断と表示された所をタップし通話を終える。背後に、ぼんやりと光る7つの光源が現れ、男をうっすらと照らしていた。

「あと少しで、時は満ちる。もう、お前のような犠牲は出させはしない。待っててくれ、サユキ。俺たちの望んだ平和はそこに…」
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