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第529話 ふたりはひとつ、ふたりでひとつ at 1996/3/30
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「僕は……知っていましたよ。あなたのことを。水無月コトセ……もうひとりのツッキー」
五十嵐君は優しく微笑みかけ、その足元に寄り添うと、そっと骨のような細い手をとった。
「それも含めて、僕の大好きなツッキーですから。やっと――やっと会えました」
「弓之助……。お前は……それを知っていて……。それでも……うううっ……!」
コトセは人目もはばからずに大声を上げ、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。その長い黒髪を、五十嵐君の手が静かに、ていねいに、丹念にすいていく。まるでその様は、こじれてすっかりからみついてしまったコトセのココロまでをも解きほぐしていくかのようだった。
「弓之助! 弓之助ぇ! 私……私は……っ!」
「よくがんばりましたね。今まで、たったひとりきりで……。でも、もう僕がいますから――」
「ううっ……! ううううううううううぅーっ!!」
僕は知らずのうちに微笑んでいたらしい。
ちょん、とロコがそれをつつく。
ロコも同じ顔で嬉しそうに笑っていた。
その時だった。
――どくんっ!!
「が……は……っ!!」
大きく脈動するような音とともに、水無月さんのカラダが跳ね、その姿が二重にブレた。
「お、おい! コトセ!?」
「コトセ! しっかりして!」
コトセは五十嵐君の手をしっかりと、血管と骨がくっきり浮き出るほど握りしめて告げる。
「琴世が……目覚める……! 弓之助……頼む……! 私の妹を救ってやってくれ……っ!!」
「……約束します、必ず。……ええ、もちろん可能ですとも!」
「たった一瞬でも……お前に会えて……よかっ……た……。ぐっ……! ぐぅうううううっ!」
――どくんっ!!!
ひときわ大きく水無月さんのカラダが脈打ち、ぱたり、と白く細い手が滑り落ちる。
そして――。
ぱちり――と、長いまつげに縁どられたまぶたがまたたき、驚いたように丸みを帯びた。
「ゆ、弓之助……君……!? ど、どうして……ここにいるんです……!? なんで……!?」
「ツッキー……。君のあやまちを止めにきたのです。三人で、ね?」
ツッキーは、次にロコを、最後に僕を見つめ、いやいやをするように何度も首を振った。
「ど、どうして……!? どうしてあたしの邪魔をするんですか……っ!?」
「そんなの、決まってるだろ、ツッキー――?」
僕のセリフは、ロコが受け継いだ。
合図なんて必要なかった。
「――あたしたちのこと、全部忘れるだなんて、絶っ対に許さないんだから!」
「ど、どうしてぇええええええええええ!!」
ツッキーは狂ったように髪を振り乱し、僕らを振り解こうとする。何度も、何度でも。
「あ、あたしは、あたしには『未来』なんてないのに! 『夢』も『希望』もないのにっ!!」
「ねぇ? 知ってましたか、ツッキー?」
「……っ!?」
五十嵐君は――。
僕らの有能で、理論的で、冷静な判断が下せる『ハカセ』は、こう告白する。
「この僕がですね……実は、本当は、誰よりも『可能性』だなんて不確かなモノがスキだってことを――」
『――現在の現実乖離率:97パーセント』
五十嵐君は優しく微笑みかけ、その足元に寄り添うと、そっと骨のような細い手をとった。
「それも含めて、僕の大好きなツッキーですから。やっと――やっと会えました」
「弓之助……。お前は……それを知っていて……。それでも……うううっ……!」
コトセは人目もはばからずに大声を上げ、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。その長い黒髪を、五十嵐君の手が静かに、ていねいに、丹念にすいていく。まるでその様は、こじれてすっかりからみついてしまったコトセのココロまでをも解きほぐしていくかのようだった。
「弓之助! 弓之助ぇ! 私……私は……っ!」
「よくがんばりましたね。今まで、たったひとりきりで……。でも、もう僕がいますから――」
「ううっ……! ううううううううううぅーっ!!」
僕は知らずのうちに微笑んでいたらしい。
ちょん、とロコがそれをつつく。
ロコも同じ顔で嬉しそうに笑っていた。
その時だった。
――どくんっ!!
「が……は……っ!!」
大きく脈動するような音とともに、水無月さんのカラダが跳ね、その姿が二重にブレた。
「お、おい! コトセ!?」
「コトセ! しっかりして!」
コトセは五十嵐君の手をしっかりと、血管と骨がくっきり浮き出るほど握りしめて告げる。
「琴世が……目覚める……! 弓之助……頼む……! 私の妹を救ってやってくれ……っ!!」
「……約束します、必ず。……ええ、もちろん可能ですとも!」
「たった一瞬でも……お前に会えて……よかっ……た……。ぐっ……! ぐぅうううううっ!」
――どくんっ!!!
ひときわ大きく水無月さんのカラダが脈打ち、ぱたり、と白く細い手が滑り落ちる。
そして――。
ぱちり――と、長いまつげに縁どられたまぶたがまたたき、驚いたように丸みを帯びた。
「ゆ、弓之助……君……!? ど、どうして……ここにいるんです……!? なんで……!?」
「ツッキー……。君のあやまちを止めにきたのです。三人で、ね?」
ツッキーは、次にロコを、最後に僕を見つめ、いやいやをするように何度も首を振った。
「ど、どうして……!? どうしてあたしの邪魔をするんですか……っ!?」
「そんなの、決まってるだろ、ツッキー――?」
僕のセリフは、ロコが受け継いだ。
合図なんて必要なかった。
「――あたしたちのこと、全部忘れるだなんて、絶っ対に許さないんだから!」
「ど、どうしてぇええええええええええ!!」
ツッキーは狂ったように髪を振り乱し、僕らを振り解こうとする。何度も、何度でも。
「あ、あたしは、あたしには『未来』なんてないのに! 『夢』も『希望』もないのにっ!!」
「ねぇ? 知ってましたか、ツッキー?」
「……っ!?」
五十嵐君は――。
僕らの有能で、理論的で、冷静な判断が下せる『ハカセ』は、こう告白する。
「この僕がですね……実は、本当は、誰よりも『可能性』だなんて不確かなモノがスキだってことを――」
『――現在の現実乖離率:97パーセント』
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