ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

文字の大きさ
上 下
264 / 539

第263話 波乱ぶくみの運動会(9) at 1995/10/10

しおりを挟む
『これから――二年生代表による――障害物競争が――はじまります――』

「がんばれー! スミちゃーん! サトチーン!」


 応援席から渋田と二人で腹の底から大きな声を出して二人を応援する。純美子と咲都子の二人は女子の部だから、まだ少しスタートまで猶予があるようだ。すし詰め気味の隊列の中から、純美子は恥ずかしそうに控えめな仕草で手のひらだけ振り返してきた。咲都子の方はというと、ただいまストレッチ中だ。


 障害物競走とひとくちにいっても、地域や年代によってバラつきがあると思う。

 白い粉の中から手を使わずに飴玉を探し出す関門があったかと思えば、平均台を落ちずに最後まで渡ったり、伏せられた網の中を潜り抜けたり、紐でぶら下げられたパンを口でキャッチするといった関門があるのが、一般的な障害物競争のイメージだろうか。

 ちなみに、あの飴玉探しの粉ってなんなの?
 小麦粉? 片栗粉?
 今だと衛生面ガーとかうるさく言われそうである。

 ともかく、僕らの西町田中学校の運動会においては、男子と女子で関門の内容が異なるという微妙に準備に手間のかかる特色があったりする。

 男子の場合はこうだ。

 第一の関門は『タイヤ引き』。やたらデカいトラックのタイヤが置いてあり、結わえ付けられたロープを両肩にかけて引っ張るパワー勝負だ。
 第二の関門は『麻袋跳び』。コースに置かれた麻袋の中に両足を入れ、両手で腰あたりまで引き上げた状態でぴょんぴょん跳ねて進むという地味にツラいアレである。
 第三の関門は『キャタピラ』。両端をつなげて輪っかにした段ボールの中に入り、ハイハイをするようにして文字どおりキャタピラのごとく進む割と腰に響く奴だ。
 そして、最後の第四の関門がさっきも出てきた『飴玉探し』だ。もうこの時点で参加者は大汗をかいて息も上がっているので、顔に粉はつくは飴を探そうにも息が続かない、という地獄のような組み合わせなのである。誰だよ、これ考えた奴。出てこい。

 そして、それが女子の場合にはこうなる。

 第一の関門は『ハシゴ抜け』。コースに横倒しにされた木のハシゴをくぐり抜けられたらクリアだ。
 第二の関門は『三輪車』。どこから持ってきたのか、代々受け継がれている三輪車がコース分の十二台あって、それを漕いで進むのだ。
 第三の関門は『リンボーダンス』。微妙に嫌な位置に棒が渡されていて、それを上半身を反らしてうまくかわさなければならない。
 そして最後の第四の関門は『パン喰い』だ。一応衛生面の危惧からか、おととしあたりから袋のまま吊るすようになったらしい。おかげで取りづらいとたいそう不評なようだ。そのため何度もジャンプしなければならないので、へそチラチャンスあり、と吉川のエロテクメモには書かれていたかと思う。女子にはナイショだよ!

 とまあ、二つを比較すると、難易度の違いももちろんそうなんだけれど、女子の方はやたらラッキースケベ的な要素が含まれているような気がしてならないのは僕だけなのだろうか……。

 いやいやいや、さすがに中学生女子が三輪車に乗っている姿にコーフンするセンセイやクラス委員はいないだろう。否、いないことを切に祈るばかりである。


「位置についてー! よーい!」


 ぱあん!!


 案の定、汚い絵面となった男子の部を眺めつつ、僕はまもなくやってくる『借り物競争』の対策を練ることにする。事前に部員たちの持ち物や色を確認しておけば役に立つかもしれない。


「なあ、シブチン? 去年の『借り物競争』のお題って覚えてる?」

「さすがに全部は覚えてないよー。インパクトの強かった奴なら少しだけ覚えてるけどねー」

「だよなぁ。こんな時に限って、ハカセがいないんだよなぁ……」


 五十嵐君ならばすべて記憶しているのではないかと期待していたのだ。ただ残念ながら、少し前に、貧血気味の症状を訴えた水無月さんを保健室へ連れて行ってしまったのでここにはいなかった。


「ぼ――僕はあんまり覚えてないんだよね……どんなのあったっけ?」


 なにしろ二十六年も前のハナシだからさ、とは口が裂けても言えない。
 渋田は、うーん……、とひとしきり唸り声をあげてからこう言った。


「そーだなー。確か……『赤いパンツを履いてる人』とか『片思い中の人』とか」

「プライベートの侵害だろ、それ……やめてやれよ……」

「あとは『物真似ができる人』ってのが面白かったよね! その場でやらされてて!」

「すでに拷問なんだよなぁ」

「そうそう! 『学校で一番怖いセンセイ』ってのは盛り上がったかも! 梅センが――!」

「そこは確定なんだ……梅セン、かわいそう……。確かに怖いけど」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

処理中です...