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第230話 『西中まつり』(17) at 1995/9/15
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「――くそ、また違ってやがる! こいつ、ちゃんと動いてんのかよ? あぁん?」
「そ、そんなに乱暴にキーボード叩くなって……コンピューターは正しい。答えが違うんだよ」
いくら僕がなるべく刺激しないように優しく諭そうとも、小山田の怒りは一向に収まる様子はなかった。『スウジ ヲ イレヨ』と書かれた文字が、とうとう一〇回目の挑戦に挑もうとする小山田を小馬鹿にするように、ぴょん、ぴょん、とCRTモニターの中で跳ねている。
にしても、頑固な奴だ。
意地っ張り、という方が正しいかもしれない。
一番最初の、『機械神を蘇らせるための古代遺物の復元』――つまるところは、ブロックパズルなのだけれど――からずっと小山田は、ガイド役である『モーリ』こと僕のサポートをことごとく突っ撥ねて、すべて自力で解いてやるからな! と頑として譲らないのだった。
本来なら、頃合いを見計らって『古文書』と称して、コンピューター――『98』のことだが――の簡略化した構造図を渡してやる段取りになっていた。前にも言ったとおり、僕らは脱落させたいのではなく、すべての参加者にゲームクリアして欲しい。理解してもらうのが目的だからだ。
「ん、んなもん、いらねぇ! もうちょっとで解けるから、そこで少し見物してやがれって!」
次の水無月さん考案、『機械神へ捧げる祈りの言葉翻訳』――つまるところは、一〇進数の数字の、二進数と十六進数への変換なのだけれど――でも、その剛情さは少しも軟化することがなかった。元々、小山田と桃月は勉強が不得意な部類の生徒なのであって、お世辞にも頑張ればどうにかできるというレベルにはない。けれど、絶対に僕からのヒントを受けとろうとはしなかったのだ。
「うっせえなあ……誰かのチカラを借りたら意味ねえんだよ。これは、俺が実力で解いてやる」
「わ、わかった! わかったって! けどさ? 一〇進数で『12』は、二進数だと『1100』になって、16進数だと『0C』になるって書いてあるだろ? だから、これは、さ――」
「ああああああ! わかってんだよ、そんなモン! 今度は正解してやるから黙って見てろ!」
ミーッ――無情にも不正解を示す耳ざわりなビープ音が鳴り響いた。
「ね、ねぇ、ダッチ? ここはこの、モリ――モーリとか言う人にヒントもらうべきじゃん?」
「おま――っ、モモまで俺様のことを馬鹿にすんのかよ……?」
「ば、馬鹿になんてしてないってば! わかんなくて当然なんだもん。聞いてもいいじゃんか」
「くっ……気に喰わねぇ……」
それでも、最後まで辿り着けないとお楽しみの相性診断ができない、ということを僕と桃月が何度も何度も辛抱強く言い聞かせて、ようやく小山田は第二の関門をクリアしたのだった。
そして、ようやく佐倉君考案の三つ目の関門、『呪文で敵を打ち倒せ』――つまるところは、表示された文字列を入力するタイピングゲームなのだけれど――へ到達した。ルールは単純で、行く手を阻む敵の頭上に表示された文字を、素早く正確に五回入力して撃破すればクリアだ。
最初は一文字――『F』。
「よ、よしっ! ざまあみろだ!」
次からは一文字ずつ増えていく。二文字――『FO』。
「おっ――おおっ! あ、あぶねえ、あぶねえ! セーフだろ! な? な?」
そして三文字――『FOR』
「あ、『R』!? どこだよ……って、これか! 時間ギリギリだったな! いけるいける!」
さらに四文字目――『FORC』。
「おっ! 三文字目までは同じだな……!? なら、あとは……ここだ! はっ! どうだ!」
そして遂に。五文字――『FORCE』。これさえクリアできれば――!
「ここと、ここと、ここ……。あとは……ええと……ええと……ここだろ!」
――パッパパー♪
CRTモニターの中の『オールクリア!』の文字を見るのが、こんなに嬉しいとは思わなかった……。
「そ、そんなに乱暴にキーボード叩くなって……コンピューターは正しい。答えが違うんだよ」
いくら僕がなるべく刺激しないように優しく諭そうとも、小山田の怒りは一向に収まる様子はなかった。『スウジ ヲ イレヨ』と書かれた文字が、とうとう一〇回目の挑戦に挑もうとする小山田を小馬鹿にするように、ぴょん、ぴょん、とCRTモニターの中で跳ねている。
にしても、頑固な奴だ。
意地っ張り、という方が正しいかもしれない。
一番最初の、『機械神を蘇らせるための古代遺物の復元』――つまるところは、ブロックパズルなのだけれど――からずっと小山田は、ガイド役である『モーリ』こと僕のサポートをことごとく突っ撥ねて、すべて自力で解いてやるからな! と頑として譲らないのだった。
本来なら、頃合いを見計らって『古文書』と称して、コンピューター――『98』のことだが――の簡略化した構造図を渡してやる段取りになっていた。前にも言ったとおり、僕らは脱落させたいのではなく、すべての参加者にゲームクリアして欲しい。理解してもらうのが目的だからだ。
「ん、んなもん、いらねぇ! もうちょっとで解けるから、そこで少し見物してやがれって!」
次の水無月さん考案、『機械神へ捧げる祈りの言葉翻訳』――つまるところは、一〇進数の数字の、二進数と十六進数への変換なのだけれど――でも、その剛情さは少しも軟化することがなかった。元々、小山田と桃月は勉強が不得意な部類の生徒なのであって、お世辞にも頑張ればどうにかできるというレベルにはない。けれど、絶対に僕からのヒントを受けとろうとはしなかったのだ。
「うっせえなあ……誰かのチカラを借りたら意味ねえんだよ。これは、俺が実力で解いてやる」
「わ、わかった! わかったって! けどさ? 一〇進数で『12』は、二進数だと『1100』になって、16進数だと『0C』になるって書いてあるだろ? だから、これは、さ――」
「ああああああ! わかってんだよ、そんなモン! 今度は正解してやるから黙って見てろ!」
ミーッ――無情にも不正解を示す耳ざわりなビープ音が鳴り響いた。
「ね、ねぇ、ダッチ? ここはこの、モリ――モーリとか言う人にヒントもらうべきじゃん?」
「おま――っ、モモまで俺様のことを馬鹿にすんのかよ……?」
「ば、馬鹿になんてしてないってば! わかんなくて当然なんだもん。聞いてもいいじゃんか」
「くっ……気に喰わねぇ……」
それでも、最後まで辿り着けないとお楽しみの相性診断ができない、ということを僕と桃月が何度も何度も辛抱強く言い聞かせて、ようやく小山田は第二の関門をクリアしたのだった。
そして、ようやく佐倉君考案の三つ目の関門、『呪文で敵を打ち倒せ』――つまるところは、表示された文字列を入力するタイピングゲームなのだけれど――へ到達した。ルールは単純で、行く手を阻む敵の頭上に表示された文字を、素早く正確に五回入力して撃破すればクリアだ。
最初は一文字――『F』。
「よ、よしっ! ざまあみろだ!」
次からは一文字ずつ増えていく。二文字――『FO』。
「おっ――おおっ! あ、あぶねえ、あぶねえ! セーフだろ! な? な?」
そして三文字――『FOR』
「あ、『R』!? どこだよ……って、これか! 時間ギリギリだったな! いけるいける!」
さらに四文字目――『FORC』。
「おっ! 三文字目までは同じだな……!? なら、あとは……ここだ! はっ! どうだ!」
そして遂に。五文字――『FORCE』。これさえクリアできれば――!
「ここと、ここと、ここ……。あとは……ええと……ええと……ここだろ!」
――パッパパー♪
CRTモニターの中の『オールクリア!』の文字を見るのが、こんなに嬉しいとは思わなかった……。
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