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第188話 それぞれの成果 at 1995/8/25
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「よし。これでようやく足並みがそろったね! 九月十五日の文化祭には間に合いそうだ!」
金曜日の今日、僕ら『電算論理研究部』の部室内には、大小さまざまなサイズと形をした文化祭の出し物に向けての資材と道具が一気に運び込まれていた。各部員たちは、他のメンバーが準備してきたシロモノをしげしげと見つめては、しきりに感心したような声をあげている。
なかでもみなの注目の的になっているのは、五十嵐君が苦心して持ち込んできた模型だった。
「ハカセのこれ、すっごいね! 僕が見ても視聴覚室だって一目でわかったよ! それに――」
「はい。ありがとうございます」
五十嵐君は渋田の興奮気味の声にいつものアルカイックスマイルがこたえた。
「そして、渋田サブリーダーもお気づきのとおり、当日を想定した壁やコンピューターや、必要な配線や物品の位置まで精密に再現してあります。あとはこれに沿って準備するだけです」
「ふーん、よくできてるわねー……もしかして、これってあたしたち?」
以前に見せてもらった時にはまだ視聴覚室のミニチュアでしかなかったが、その上に学校がはじまってから製作予定の段ボール製の壁や、技術工作部から借りる予定になっている照明やスピーカーなどの精巧な模型が込みこまれていた。そしてその中に、人を模した人形まである。
「そうです、野方さん。渋田サブリーダーとあなたは、この舞台に欠かせないパーツですから」
「リアルねー……あのさ、ハカセ? ここ……胸のところ、ちょっと盛ってもらってもいい?」
「サイズは完璧なはずですが?」
「……だから言ってるんだけど」
「ん? 合ってるよね、ハカセ」
「ええ、これで間違いないです」
渋田と五十嵐君にそろってクソ真面目なうなずかれた咲都子が暴れ出したのは放っておいて。
「うわぁ……この衣装、すごくかわいいですねー! ロコちゃん似合いそうだなー」
「き、着ないわよっ! それに、それを着る予定なのはシブチンとサトチンの二人でしょ?」
佐倉君がかぶりつきで魅入っているのは、咲都子の提案で急遽作ることになった『キャスト』の衣装だ。無機質なトルソーに飾られているだけでも存在感があり、今にも動き出しそうな気配すら感じる。全体的に派手な蛍光色でありながらも、普通に衣服としても機能的なつくりだ。
さんざんお姉さんたちに鍛えられたおかげで、裁縫の才能もある佐倉君も部分的にお手伝いしたらしいが、完成品を見るのは今日がはじめてなのだという。
「……へー。かえでちゃん、すっごくていねいで上手じゃん! このへん、手縫いでしょ?」
細部を観察していたロコが感心した声を出すと、佐倉君はもじもじしながら頬を赤らめた。
「う、うれしいなぁー。そんなところ気づくの、ロコちゃんくらいだよね」
「ほら、ウチはママが和裁士だからさー。上手い下手は、なーんとなく見たらわかるのよ」
「でも、いいなー。これ、ロコちゃんとおそろいで着てみたかったなー」
「着・な・い・か・ら」
そして、だ。
「これ、実際に触ってみてもいいの、ケンタ君?」
「もちろん大丈夫。……だよね、ツッキー?」
「は……はい! ば、ばっちりチェック済み……です!」
僕の横で、プログラムの守護女神・水無月さんが小さくガッツポーズを取りながら宣言した。カノジョの前に鎮座しているのは『電算論理研究部』のシンボル『98』だ。二台並ぶと余計にその存在感が大きくなった。もちろん、増えたもう一台は、僕の家にあったものである。
「じゃあ――」
「でもね? スミちゃん、覚悟はいいのかな――」
僕は視線を伏せながら、純美子の伸ばした手を掴んで続けた。
目が……合わせられない。
「僕とシブチンの作ったこの『相性診断システム』は、世界最強なんだぜ? これなら、スミちゃんの好きな人がばっちりわかっちゃうんだよ? 本当の本当に――ココロの準備はいい?」
「え……!? で、でも大丈夫だと思うよ……ケンタ君になら見られたって。……でしょ?」
金曜日の今日、僕ら『電算論理研究部』の部室内には、大小さまざまなサイズと形をした文化祭の出し物に向けての資材と道具が一気に運び込まれていた。各部員たちは、他のメンバーが準備してきたシロモノをしげしげと見つめては、しきりに感心したような声をあげている。
なかでもみなの注目の的になっているのは、五十嵐君が苦心して持ち込んできた模型だった。
「ハカセのこれ、すっごいね! 僕が見ても視聴覚室だって一目でわかったよ! それに――」
「はい。ありがとうございます」
五十嵐君は渋田の興奮気味の声にいつものアルカイックスマイルがこたえた。
「そして、渋田サブリーダーもお気づきのとおり、当日を想定した壁やコンピューターや、必要な配線や物品の位置まで精密に再現してあります。あとはこれに沿って準備するだけです」
「ふーん、よくできてるわねー……もしかして、これってあたしたち?」
以前に見せてもらった時にはまだ視聴覚室のミニチュアでしかなかったが、その上に学校がはじまってから製作予定の段ボール製の壁や、技術工作部から借りる予定になっている照明やスピーカーなどの精巧な模型が込みこまれていた。そしてその中に、人を模した人形まである。
「そうです、野方さん。渋田サブリーダーとあなたは、この舞台に欠かせないパーツですから」
「リアルねー……あのさ、ハカセ? ここ……胸のところ、ちょっと盛ってもらってもいい?」
「サイズは完璧なはずですが?」
「……だから言ってるんだけど」
「ん? 合ってるよね、ハカセ」
「ええ、これで間違いないです」
渋田と五十嵐君にそろってクソ真面目なうなずかれた咲都子が暴れ出したのは放っておいて。
「うわぁ……この衣装、すごくかわいいですねー! ロコちゃん似合いそうだなー」
「き、着ないわよっ! それに、それを着る予定なのはシブチンとサトチンの二人でしょ?」
佐倉君がかぶりつきで魅入っているのは、咲都子の提案で急遽作ることになった『キャスト』の衣装だ。無機質なトルソーに飾られているだけでも存在感があり、今にも動き出しそうな気配すら感じる。全体的に派手な蛍光色でありながらも、普通に衣服としても機能的なつくりだ。
さんざんお姉さんたちに鍛えられたおかげで、裁縫の才能もある佐倉君も部分的にお手伝いしたらしいが、完成品を見るのは今日がはじめてなのだという。
「……へー。かえでちゃん、すっごくていねいで上手じゃん! このへん、手縫いでしょ?」
細部を観察していたロコが感心した声を出すと、佐倉君はもじもじしながら頬を赤らめた。
「う、うれしいなぁー。そんなところ気づくの、ロコちゃんくらいだよね」
「ほら、ウチはママが和裁士だからさー。上手い下手は、なーんとなく見たらわかるのよ」
「でも、いいなー。これ、ロコちゃんとおそろいで着てみたかったなー」
「着・な・い・か・ら」
そして、だ。
「これ、実際に触ってみてもいいの、ケンタ君?」
「もちろん大丈夫。……だよね、ツッキー?」
「は……はい! ば、ばっちりチェック済み……です!」
僕の横で、プログラムの守護女神・水無月さんが小さくガッツポーズを取りながら宣言した。カノジョの前に鎮座しているのは『電算論理研究部』のシンボル『98』だ。二台並ぶと余計にその存在感が大きくなった。もちろん、増えたもう一台は、僕の家にあったものである。
「じゃあ――」
「でもね? スミちゃん、覚悟はいいのかな――」
僕は視線を伏せながら、純美子の伸ばした手を掴んで続けた。
目が……合わせられない。
「僕とシブチンの作ったこの『相性診断システム』は、世界最強なんだぜ? これなら、スミちゃんの好きな人がばっちりわかっちゃうんだよ? 本当の本当に――ココロの準備はいい?」
「え……!? で、でも大丈夫だと思うよ……ケンタ君になら見られたって。……でしょ?」
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