上 下
187 / 539

第186話 夏の宿題バスターズ at 1995/8/21

しおりを挟む
 新しい週のはじまりだ。
 早いもので、今週そして来週が終わってしまえば、九月四日からは二学期のスタートである。

 そんな今日、月曜日なのだが、


「えええー……!? マジでやんの? 文化祭の準備もしないで? うへぇ……」

「おいおいおい。主にお前のためにやってやってるんだぞ、ロコ? 文句言うなって」


 午後から集まった僕ら『電算論理研究部』、総勢八名の部員たちは、ロコの言葉どおり作業の手を止め、休み前に配布された大量のプリントを前に頭を悩ませ、悪戦苦闘していた。


「あー! もー! ……ね? ね? いっそあたしの分も書いてくんない、かえでちゃん?」

「ダ、ダメですよぅ。丸写しはなし、って最初に決めたじゃないですかー」

「ちぇー。けちー」


 佐倉君のすげない返事に、ロコは頬をふくらませると、手にしたシャープペンを放り投げ、どさり、と仰向けに寝転がった。僕らの『電算論理研究部』には、机らしい机といったらちゃぶ台と壁側の文机二つきりしかないので、まるで満員電車で宿題をするようなもんである。


「おい、ロコ……やたらと放り投げるなって……。まったくもう……」


 ぶつぶつと文句を言いつつも、ちゃぶ台の反対側に座る僕のところまで転がってきたシャープペンを拾おうと、身を屈めてなにげなく下を覗き込んだ僕だったのだが――。





 う、うおっ!?
 こ、これは……マズい……!





「なんでさー。よりにもよって、あたしとスミがわざわざあっちの部活休んだ時にやんのよー」


 薄暗がりの中の、制服のスカートに隠されていた妙になまめかしく浅黒く日焼けしたロコの足がもぞもぞとすり合わされ、そのさらに奥にある白い布切れがうねるようによじれる。


「そ、それは……そうでもしないと、夏休みの宿題をやるヒマも……ないだろうとだな……」



 ――ごくり。



 いかんいかん、と思いつつ、どうしても僕の目は釘付けになってしまっていた。唾を飲み込んだ音がいやに大きく響いた気がする。ロコが駄々をこねるように姿勢を変えるたび、ついつい目で追ってしまう。その上、肝心なシャープペンを拾い損ねて指先で弾いてしまった有様だ。



 ころころ……。



「でも、よかったよね、ロコちゃん。このままだと最終日に徹夜だって言ってた――ひゃん!」

「? どしたの、スミ?」

「な、なんでもないなんでもない……あはははー……」



 ――きっ!



 ち、違う違うんです、スミちゃん!

 ぼ、僕はころがっていったシャープペンを追って手を伸ばしただけで、わざと触ろうだとかそんなことは決して思ってなかったというか、いや、触れたのはそれはそれでラッキーと――。





 んんっ!?





 僕は不測の事態に目を白黒させつつ純美子の目を見つめて、半泣きの表情でいやいやと首を振った。どうなってるの、と聞きたいのは僕の方だ。やばい、触っちゃった! と思って手を引っ込めようとしたら逆に純美子に掴まれて。ぎゅっ、と僕の手は純美子の両膝の間に挟まれてしまい。


「……あれー? どーしたのかなー、ケ・ン・タ・君?」


 悪戯っぽく尋ねてくる純美子の頬がほんのり上気している。あ、あれ? 純美子ってこんなSっ気ある子だったっけ!? それに、こんなダイタンなことヘーキでする子だったっけ? と、ともかく、他のみんなにバレる前に僕の手を放して……ああ、温かくて……じゃねえ!?


「な、なんでもないなんでもない……です。………………あの、ごめ……ちょ――っ」

「んー? なんでそんなに慌ててるのかなー? それとも、みんなには言えないことなのー?」



 解放された!

 急いでシャープペンを回収して元の体勢に戻ろうとしたとき、耳元で囁きが。



「………………ケンタ君のー、え・っ・ち・さ・ん」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

坊主女子:友情短編集

S.H.L
青春
短編集です

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

処理中です...