146 / 539
第145話 僕らの『がっしゅく!』二日目(2) at 1995/7/28
しおりを挟む
山中湖は「富士五湖」の中で最も富士山に近い、標高約一〇〇〇メートルの高原地だ。
気候的には北海道に似ているところがあって、冬は湖面が凍るほど寒さが厳しいものの、夏は涼しくて過ごしやすい避暑地として人気が高い。夏でも『朝晩は少し肌寒く感じることもあるから、一枚余計に羽織るものがあった方がいいぞ』という荻島センセイのアドバイスに従って、部員たちは昼の日差しと夜の寒さを避けるためパーカーやウインドブレーカーを着ていた。
「今日も天気いいなぁー! 吹き抜ける風も……うーん、爽快だね!」
「松林を抜けたあとの、湖沿いの景色、カラフルでキレイだよねー」
湖岸沿いの遊歩道にはひまわりが、太陽に笑顔を振りまきつつ生き生きと咲き乱れていた。春はチューリップ、秋はコスモスと、季節ごとの花々が楽しめる工夫が施されているという。
「大いに楽しむ……ってのはいいんだけど。とりあえずどうしようか? ……ハカセ?」
「無論、僕の意見でもよいのでしょうけれど、ここは地元のプロに聞いてみる、というのは?」
「観光協会がある、って言ってたっけ。ちょっと覗いてみるかー」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうもありがとうございましたー!」
「いえいえ。気をつけてねー」
というわけで、早速お邪魔した観光協会のお姉さん曰く、ここ山中湖は、運が良ければ白鳥の親子が湖で遊ぶ姿を見ることができることから「白鳥の湖」とも呼ばれているそうだ。
アクティビティとしては、ルアーを使った釣りやウインドサーフィンなどの水上スポーツが人気らしいが、僕らにその準備はなかったし、カラダの弱い水無月さんにはどれも難しい。
ならばと聞くと、優雅な白鳥の姿が目を引く遊覧船「プリンセス・オデット号」でのクルージングや、足漕ぎのスワンボート、あとは自転車を借りて湖をほぼ一周できるサイクリングなんてどうかしら? と勧められた。なるほど、これなら僕らでも気軽にできそうだ。
また周辺には「石割神社」や「平野天満宮」など、古くから続く伝統的な祭りが行われる神社が点在しているらしい。ここを見学するのも悪くない。中でも珍しい「山中明神安産祭り」は、「山中諏訪神社」で執り行われる子宝や安産を願うたくさんの人々が集まるお祭りで、
『諏訪の宮
御影さす
右龍がいにも
左龍がいにも
もそろげにもそろ』
という御神歌を唱えながら御神木の周りを神輿が回るクライマックスの光景が実に圧巻なのだそうだが……これはもう少し時期が先で、秋頃行われるとのこと。ちょっぴり残念だ。
また今朝は見逃してしまったけれど、富士山を背景に、朝焼けがあたり一面を真っ赤に染めた景色はとても幻想的で、息を飲むほどの絶景だからぜひ見て帰ってね、と教えてくれた。
「と、いうことで、だ――」
なぜだか自然と、軍隊よろしく横一列に整列している面々の前を往復しながら僕は言った。
「ぜ、全員で同じことをする、それもいいと思う。だが……こ、ここは、ふ、二人一組でだな」
「なーに面倒なこと言っちゃってんの! ほら! 遊覧船乗りたい、って人、手ぇあげてー!」
あ、くそ。
部長としての見せ場なのに!
下心と野望を隠した僕の密かな試みは、あっけなく体当たりしてきたロコに潰されてしまう。
その結果――。
「やったー! あたしとケンタ君はスワンボートね!」
「……ちょっと! ほら、あんたも来るんでしょ? あたしとシブチンもスワンボート乗るー」
「あたしとかえでちゃんとで、湖一周レースしてくる! 絶対に負・け・な・い・か・ら・!」
「ぼ、僕と水無月さんは――」
うぉっほん――どこからか聞こえた咳払いに、五十嵐君は肩をすくめて言い直すことにした。
「ぼ、僕とツッキーの、運動ニガテな二人は、遊覧船で優雅にのんびりと過ごすことにしました」
気候的には北海道に似ているところがあって、冬は湖面が凍るほど寒さが厳しいものの、夏は涼しくて過ごしやすい避暑地として人気が高い。夏でも『朝晩は少し肌寒く感じることもあるから、一枚余計に羽織るものがあった方がいいぞ』という荻島センセイのアドバイスに従って、部員たちは昼の日差しと夜の寒さを避けるためパーカーやウインドブレーカーを着ていた。
「今日も天気いいなぁー! 吹き抜ける風も……うーん、爽快だね!」
「松林を抜けたあとの、湖沿いの景色、カラフルでキレイだよねー」
湖岸沿いの遊歩道にはひまわりが、太陽に笑顔を振りまきつつ生き生きと咲き乱れていた。春はチューリップ、秋はコスモスと、季節ごとの花々が楽しめる工夫が施されているという。
「大いに楽しむ……ってのはいいんだけど。とりあえずどうしようか? ……ハカセ?」
「無論、僕の意見でもよいのでしょうけれど、ここは地元のプロに聞いてみる、というのは?」
「観光協会がある、って言ってたっけ。ちょっと覗いてみるかー」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうもありがとうございましたー!」
「いえいえ。気をつけてねー」
というわけで、早速お邪魔した観光協会のお姉さん曰く、ここ山中湖は、運が良ければ白鳥の親子が湖で遊ぶ姿を見ることができることから「白鳥の湖」とも呼ばれているそうだ。
アクティビティとしては、ルアーを使った釣りやウインドサーフィンなどの水上スポーツが人気らしいが、僕らにその準備はなかったし、カラダの弱い水無月さんにはどれも難しい。
ならばと聞くと、優雅な白鳥の姿が目を引く遊覧船「プリンセス・オデット号」でのクルージングや、足漕ぎのスワンボート、あとは自転車を借りて湖をほぼ一周できるサイクリングなんてどうかしら? と勧められた。なるほど、これなら僕らでも気軽にできそうだ。
また周辺には「石割神社」や「平野天満宮」など、古くから続く伝統的な祭りが行われる神社が点在しているらしい。ここを見学するのも悪くない。中でも珍しい「山中明神安産祭り」は、「山中諏訪神社」で執り行われる子宝や安産を願うたくさんの人々が集まるお祭りで、
『諏訪の宮
御影さす
右龍がいにも
左龍がいにも
もそろげにもそろ』
という御神歌を唱えながら御神木の周りを神輿が回るクライマックスの光景が実に圧巻なのだそうだが……これはもう少し時期が先で、秋頃行われるとのこと。ちょっぴり残念だ。
また今朝は見逃してしまったけれど、富士山を背景に、朝焼けがあたり一面を真っ赤に染めた景色はとても幻想的で、息を飲むほどの絶景だからぜひ見て帰ってね、と教えてくれた。
「と、いうことで、だ――」
なぜだか自然と、軍隊よろしく横一列に整列している面々の前を往復しながら僕は言った。
「ぜ、全員で同じことをする、それもいいと思う。だが……こ、ここは、ふ、二人一組でだな」
「なーに面倒なこと言っちゃってんの! ほら! 遊覧船乗りたい、って人、手ぇあげてー!」
あ、くそ。
部長としての見せ場なのに!
下心と野望を隠した僕の密かな試みは、あっけなく体当たりしてきたロコに潰されてしまう。
その結果――。
「やったー! あたしとケンタ君はスワンボートね!」
「……ちょっと! ほら、あんたも来るんでしょ? あたしとシブチンもスワンボート乗るー」
「あたしとかえでちゃんとで、湖一周レースしてくる! 絶対に負・け・な・い・か・ら・!」
「ぼ、僕と水無月さんは――」
うぉっほん――どこからか聞こえた咳払いに、五十嵐君は肩をすくめて言い直すことにした。
「ぼ、僕とツッキーの、運動ニガテな二人は、遊覧船で優雅にのんびりと過ごすことにしました」
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
初恋♡リベンジャーズ
遊馬友仁
青春
【第五部開始】
高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。
眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。
転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?
◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!
第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる