54 / 539
第54話 ……どうしてこうなった? at 1995/5/2
しおりを挟む
……あれ?
「ちょっとっ! 聞いてるの、ケンタ!?」
どうしてこうなった。
「そうだよっ! みんなで見学コース決めなきゃいけないんだよ、ケンタ――君!?」
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
『僕は小山田の前で、佐倉君と五十嵐君と班を組む、と言ったのに、いつのまにか増えていた』
な……何を言っているのかわからねーと思うが、僕も何をされたのかわからなかった……!
「あ……あの……こ、古ノ森君? 僕、みなさんと一緒の班でいいんです?」
「説明が必要だと思うのですけどね、古ノ森君? しかし……実に興味深い」
ここで状況を整理させて欲しい。
まず、今まさに僕に噛みつかんばかりに立ち上がって机に手をつき詰問――じゃなかった、質問しているのが、上ノ原広子ことロコと河東純美子ことスミちゃんである。そして、僕の両隣に座り、かたや小動物のようにカタカタと身を震わせて僕に寄り添っている――なんか凄くいい匂いがする――のが佐倉君であり、その反対側で、ふむ、と行動心理学の研究者さながらの好奇心をみなぎらせて僕を含めた他の四人の動向を観察しているのが五十嵐君なのであった。
あれ? あれれ?
「な、なんで、ロコと河東――ぐはっ――ス、スミちゃんがここにいるのさ!? なんで!?」
「な・ん・で、じゃないですよっ!」
純美子は僕のうっかりをしっかり聞き逃さずに、目の前に突き出された人差し指を掴んでへし折らんばかりに捻じ曲げてから声を張り上げて言い返す。痛い! 痛いってば! 折れる!
「ケ、ケンタ――君から誘ったくせにっ、突然抜けてどこか行こうとするからでしょっ!?」
「不可抗力っ!」
すると、横合いからロコが手を伸ばして折れそうな僕の指を――ぎゃ、逆に曲げるなぁ!!
「ア、アンタが余計な口出ししちゃったせいで、ダッチの班が気まずい空気になっちゃったからわざわざ抜けてきてやったんじゃない! 大体、ケンタのくせにナマイキだってーのっ!!」
「ジャイアン理論っ!」
要するに、男三人だけの悲しい校外活動になってしまうところを、スミちゃんとロコが加わったことでドキドキワクワク鎌倉旅行になったってことか。いや、ちっともわかんねえって。
「え、えっとー……とりあえず悪かった。そんでもって、来てくれてありがとうな。こっちの小動物的かわいらしさを発揮してるのが佐倉かえで君(男)で、こちらのハカセが五十嵐君だ」
佐倉君を紹介する時、念のため『男』と付け加えておいたのは正解だったようだ。誰この女……が一瞬にして、あーそうなの!? に変わった。当の佐倉君はちょっと涙目だったけど。ハカセと呼ばれた五十嵐君はまんざらでもないらしい。てか、特に表情が変わんないんだよなー。
「五人は確保できたけど、あとひとりは無理そうなんだ。だから、水無月さんを入れて六人だ」
「水無月さんって……あの、教室のすみっこの席の子でしょ? 一、二回しか見てないわよ?」
「来れば来たで、仲良くすればいいじゃんか。にしても……どうして休んでるんだろうな?」
あいかわらず水無月さんに関する思い出が出てこない僕だったが、ロコが戸惑いもせずこたえたところを見ると、単純に印象が薄かっただけなのかもしれない。すると、五十嵐君が言う。
「彼女は、カラダが弱いんです」
「うん、シブチン――渋田もそう言ってたっけ。でも、具体的にどうとかまでは誰も――」
「単なる虚弱体質、というわけではなさそうですね。他人が口出しすることではないですが」
「?」
五十嵐君はそれ以上語ろうとはしなかった。
もしかすると……何か知っているのか?
班も無事決まったことだし、見学コースは各自連休中に調べて持ち寄ることにして解散した。
「ちょっとっ! 聞いてるの、ケンタ!?」
どうしてこうなった。
「そうだよっ! みんなで見学コース決めなきゃいけないんだよ、ケンタ――君!?」
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
『僕は小山田の前で、佐倉君と五十嵐君と班を組む、と言ったのに、いつのまにか増えていた』
な……何を言っているのかわからねーと思うが、僕も何をされたのかわからなかった……!
「あ……あの……こ、古ノ森君? 僕、みなさんと一緒の班でいいんです?」
「説明が必要だと思うのですけどね、古ノ森君? しかし……実に興味深い」
ここで状況を整理させて欲しい。
まず、今まさに僕に噛みつかんばかりに立ち上がって机に手をつき詰問――じゃなかった、質問しているのが、上ノ原広子ことロコと河東純美子ことスミちゃんである。そして、僕の両隣に座り、かたや小動物のようにカタカタと身を震わせて僕に寄り添っている――なんか凄くいい匂いがする――のが佐倉君であり、その反対側で、ふむ、と行動心理学の研究者さながらの好奇心をみなぎらせて僕を含めた他の四人の動向を観察しているのが五十嵐君なのであった。
あれ? あれれ?
「な、なんで、ロコと河東――ぐはっ――ス、スミちゃんがここにいるのさ!? なんで!?」
「な・ん・で、じゃないですよっ!」
純美子は僕のうっかりをしっかり聞き逃さずに、目の前に突き出された人差し指を掴んでへし折らんばかりに捻じ曲げてから声を張り上げて言い返す。痛い! 痛いってば! 折れる!
「ケ、ケンタ――君から誘ったくせにっ、突然抜けてどこか行こうとするからでしょっ!?」
「不可抗力っ!」
すると、横合いからロコが手を伸ばして折れそうな僕の指を――ぎゃ、逆に曲げるなぁ!!
「ア、アンタが余計な口出ししちゃったせいで、ダッチの班が気まずい空気になっちゃったからわざわざ抜けてきてやったんじゃない! 大体、ケンタのくせにナマイキだってーのっ!!」
「ジャイアン理論っ!」
要するに、男三人だけの悲しい校外活動になってしまうところを、スミちゃんとロコが加わったことでドキドキワクワク鎌倉旅行になったってことか。いや、ちっともわかんねえって。
「え、えっとー……とりあえず悪かった。そんでもって、来てくれてありがとうな。こっちの小動物的かわいらしさを発揮してるのが佐倉かえで君(男)で、こちらのハカセが五十嵐君だ」
佐倉君を紹介する時、念のため『男』と付け加えておいたのは正解だったようだ。誰この女……が一瞬にして、あーそうなの!? に変わった。当の佐倉君はちょっと涙目だったけど。ハカセと呼ばれた五十嵐君はまんざらでもないらしい。てか、特に表情が変わんないんだよなー。
「五人は確保できたけど、あとひとりは無理そうなんだ。だから、水無月さんを入れて六人だ」
「水無月さんって……あの、教室のすみっこの席の子でしょ? 一、二回しか見てないわよ?」
「来れば来たで、仲良くすればいいじゃんか。にしても……どうして休んでるんだろうな?」
あいかわらず水無月さんに関する思い出が出てこない僕だったが、ロコが戸惑いもせずこたえたところを見ると、単純に印象が薄かっただけなのかもしれない。すると、五十嵐君が言う。
「彼女は、カラダが弱いんです」
「うん、シブチン――渋田もそう言ってたっけ。でも、具体的にどうとかまでは誰も――」
「単なる虚弱体質、というわけではなさそうですね。他人が口出しすることではないですが」
「?」
五十嵐君はそれ以上語ろうとはしなかった。
もしかすると……何か知っているのか?
班も無事決まったことだし、見学コースは各自連休中に調べて持ち寄ることにして解散した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる