上 下
16 / 539

第16話 リア充になるための傾向と対策 at 1995/4/9

しおりを挟む
 一夜明けた日曜日も、昨日の続きから始めることにした。


「あと目の前にある疑問点は……『一人増えたクラスメイトは一体誰か?』ってことか」


 現時点では不明。いやいや、本当にわからないのだ。こうもあっさり答えると、中学生活にどんな思い出があるにしろ、覚えているのがたった一〇人ぽっちってのはどうなんだ、と眉をひそめる奴もいるかもしれない。けれど、実際に考えてみて欲しい、思い出してみて欲しい。

 たとえ二十六年前じゃなくたっていい。たとえば小学校一年のクラスメイトを、顔と名前を一致させた状態で全員覚えている奴なんていない。絶対ごっちゃになる。いたら連絡PLZ。

 少なくとも勉強ばかりにうつつを抜かして学生時代を過ごしてきた僕は、クラスメイトのありがたみも素晴らしさもまったく感じなかった。そんな僕でも覚えている奴は覚えているもので、それがクラスのリーダー的存在、男子からの人気の高い女子、盛り上げ役のムードメーカー、そんな強く印象に残った『代表的な登場人物』たちだ。その結果が合計一〇人ということ。

 増えた謎の一人こそが、時巫女・セツナだという可能性は高そうだ。となると、疑わしいのは女子ということになる。けれど、地味で控え目で、目立ちもしなければいじめられもしてないモブキャラみたいな女子(おっと、失礼)のことまで、僕ははっきりと覚えてない。あんまりな言い方だが、向こうだってモブみたいな僕のことなどその程度にしか思ってないはずだ。きっと。

 ともかく、本当に当時の『四十二人』を再現しているのかそうでないのかすら断定できない僕には、『プラス一人』の謎を解き明かすことはできないのだった。引き続き確認が必要だ。


 さて、一通り確認できることは済んだ。
 ここからは、いよいよ本題の『今後の方針』決めをするとしよう。


 すでに僕は『好き勝手にやらしてもらう』宣言をした。それも『あの頃できなかったこと全部』だ。そのきっかけとヒントは、リトライ前に渋田と交わした会話の中にすでにあった。


「懐かしい思い出、古き良き時代、っていえばさ、シブチン?」

「ん? なにさ? というか、シブチン呼び、やめてってば。一応管理職なんだよ、俺」

「って嬉しいくせに。いや、な? あの頃の陽キャ連中って、結構やりたい放題だったじゃん」

「んー……たとえば?」

「ほら、アレだ。スカートめくりとか、手鏡でスカートの中覗いたりとか、抱きついたりとか」

「……まー中学生だし? そういう意味では、今ほど校則も先生も学校も厳しくなかったよね」

「そ。まさに『古き良き時代』ってやつだ」

「今のご時世じゃできないだろうし、いい歳した俺たちがやるとただの性犯罪になっちゃうよ」

「そういうこと。でも、それって不公平だと思わないか? 俺たちだけ損してるだろ、絶対に」

「損って……。でも、もうしょうがないでしょ。中学生ちゅうがくせいからからやりなおせる・・・・・って話なら別だけど」


 ――以上、回想シーン終わり。


 ……い、いや、違うんですよ?
 別に、えっちなことばかり考えてる、ってわけじゃなくてですね。


「まず最終的なゴールは……この一年間のうちに、河東純美子と仲良くなって付き合うことだ」


 これは確定。これだけは外せない。

 僕は、高三の、それも卒業式の前日に純美子から告白されて付き合いはじめた、逆に言えば『そこがスタートだった』ことがそもそもの間違いだったのだ、とずっと後悔していた。引きずっていた。

 もしも二人が中学時代から付き合っていたなら?

 恋に不慣れも不器用もお互い様で、無駄に照れたり恥ずかしがったりするのだって当然のことで、むしろ初々しく映ったはずだ。不甲斐ない無様な姿を晒して相手を失望させることもなかっただろう。そしてなにより、灰色に塗り潰され封印された俺の学生時代が七色に輝き出し、数え切れない思い出が生まれたはずなのだ。


 お互い中学時代から好意を持っていたってことは、もうわかっている。
 なんたって僕は――いや、俺は、二周目の『リトライ者』なのだから。


「ん? 待てよ……? でも、この僕のままでいいのか? 本当に? それで満足なのか?」


 ……いや、ちっとも良くないだろ。
 僕はかぶりを振って新しい『メモ』を作成すると、『やることリスト』を夢中で書き続けた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

処理中です...