不死王の器

カイザ

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一章 屋敷での激動

1話 異世界グッドモーニング

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 目蓋を開け目に飛び込んできたのは、白い部屋だった。
 二十五畳ほどありそうな広い部屋で部屋には3人は余裕で入りそうなベッドと、その隣には机と椅子だけの広い部屋にしては質素なものだった。

「俺はアリルを助けた後、そのまま気を失った。そして今は知らない部屋。」

 ハルタは「うーん」と言いながら頷く。

「状況から察するにここはアリルの屋敷って事か?」

 上半身を起こし、伸びをしようとすると右腕に痛みが走る。

「……そう言えば魔獣に腕をカブられたんだっけ。………って処置の仕方すげーな!?」

 ハルタの右腕には包帯がぐるぐる巻きにされていた、物も掴めない状態だった。

「アリルが俺の為に一生懸命やってくれたと思うと癒されるな……」

 ハルタは微笑み、再び上半身を下げ、ベッドに体をつける。

「二度寝しようか。」

 目蓋を閉じ、体の力を抜く。

 すると扉の方からノックの音が聞こえる。
 しばらくした後、扉が開いき、何者かがやってくる。

「ハルタ。起きてる?」
「はいしっかりと。」

 寝て誤魔化そうとしたが、声の主。アリルの声を聞き、ハルタは起き上がる。

 ワンピースのような白い服を着たアリルに目を奪われるがそれと同時に、ここはアリルの屋敷だと疑惑から確信に変わった。

「腕は大丈夫?よく眠れた?」
「なんかあやされてる気分だな。……よく眠れたし、腕はあんまし動かさなかったら大丈夫。」
「そう。よかった。」

 アリルは胸に手をつけ安堵する。その様子を見た後ハルタは体を再び起こし、ベッドから降りる。

「一応聞くけどここはアリルの家で間違いないよな?」
「うん。今は私とハルタしかいないけど。」
「えっ、マジ?」
「マジ?」

 聞き慣れない単語にアリルは首を傾げるがハルタは今ここには自分とアリルの2人しかいないシュチュエーションに興奮する。

「………おっほん。アリル。いや、親しみを込めてアリー。屋敷の探検してもいい?」
「……うん。いいよ。」

 ハルタは扉を開け、廊下に出る。

「……長いな。」

 例えるなら学校の廊下の端から端の長さと同じぐらいの長さがある廊下にハルタは呆気に取られる。

 とりあえず廊下に出てハルタは、右へ進む。

「そう言えば俺の制服は?」
「服なら更衣室に直してあるよ。後あの変な物も。」
「変な物………あぁ。スマホの事か。」

 制服とスマホの無事を確認し、ハルタはほっとする。

 あれらは日本の思い出の物だ。残して置きたい。


 ようやく端に着き、そこには上と下に続く螺旋階段があった。

「とりあえず下に。」

 ぐるぐると下に降りると大広間があった。

「ここ、本当に1人で暮らしてたの?」

 この大きな屋敷を1人管理する様子を想像し、ハルタは思わず苦笑する。

「うん。でも前まではメイドを雇ってたんだけどね。今はいないの。」
「メイド。メイドか……。」

 と言う事は現在この屋敷は、アリル1人で管理しているって事か。

 ハルタはアリルに何か出来ないか考えた後、とある事を思いつく。

「なぁアリー。俺を住み込みで働かせてくれよ。」
「えっ?」
「お金はいらねぇ。俺がこの屋敷の管理を手伝うから部屋の一個借りさせてくれねぇか?」
「うーん。どうしよう。」

 アリルは頭を捻り、考える。

 ハルタは屋敷で働き住む場所を借りれる。
 アリルは屋敷の管理の負担が減る。

 2人にとってはWin-Winの関係なのだが。

「………いいよ。こちらこそよろしく。」
「うっし!これからもよろしく!アリー。」

 ハルタは手を伸ばし握手を求める。
 アリルは少し迷った後、ハルタの手を握る。

 ここにハルタとアリルの同居生活が始まった。
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