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自分に負けない!①

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 ――あれ? ボク、どうしていたんだっけ? 急に目の前が暗くなって、倒れた感覚がしたのは覚えている。今、何時だ? あれ? なんか気持ちいい感じがする……。

「レックス君! だめ! そこ乱暴にグリグリしないでぇ! イクッ、イクイグッ!」

「おにいちゃ……! 戻って、もどっへぇ! ごめんなさい! もう悪戯なんてしないからぁ! 戻ってぇ! んぶっ! んむぅうううう!?」

 ――ヴァネッサ? サフィア? なんで苦しそうにしているんだ? ボク、ヴァネッサを押し倒している? ……ボクの体、大人みたいに大きかったっけ? それに、サフィアの舌を乱暴に吸い出しながらするなんて。

「レックス様、ご容赦ください。このアイヴィ、レックス様を死の直前まで搾り尽くさせていただきます」

 ――アイヴィ? どうしたんだ? そんなに、悲しそうで、辛い顔をして……。

「ハッ、搾り尽くすだと? やってみろよメイド風情が。このオレがさっきの2人みたいにヒィヒィ言わせてやるよ」

 ――これは、ボクの声? でも少し違う。体がボクのじゃない感じがする。意識もモヤモヤする。いったい、なにがどうなっているんだ?

「愛しておりますレックス様。だから元に戻ってください。さぁ、私の中に来て」

 時は少々前に、レックスが倒れた直後にまでさかのぼる……。



 談話室。そこにアイヴィとサフィアとマーガレットが難しい顔をして見合わせていた。

 レックスは自室で昏睡しており、ヴァネッサが看病を。そしてアイヴィとサフィアは目覚めたマーガレットから彼に何があったのか説明を受けようとしていた。
 事態は深刻そうで、マーガレットはいつにもなく真剣である。

「お母様、レックス様に何があったのです?」

「むぅ、少々ショッキングな内容を伝えなければならないな」

 一呼吸置いた後、彼女はレックスに何が起こっているのか説明し始めた。

「端的に言おう。レックスは今、インキュバス化が進行している」

 人間をやめ、魔族としてのインキュバス化が進行しているとの言葉。前日にサフィアによって枯れる寸前まで精力を搾られ、大量の淫気を流し込まれたことによる影響であると。

「待って。それって、アタシのせい……?」

「きっかけとしてはな。だがサフィア、今はお前を責めている場合ではない」

 しゅんと落ち込むサフィアを制し、マーガレットは精力と淫気、そしてインキュバスへの変化について説明をし出す。

「魔族の魔力、サキュバスやインキュバスの淫気を注ぎ込まれた人間は、体の中の精力が魔族の物と入れ替えられて魔族に近づく。だがしかし、それは時間の経過や精の放出で淫気が同時に出るため元に戻る。だが……」

 くるくると指を回してマーガレットは説明を続ける。

「今回はサフィアと交わり、サキュバスロード級の強い淫気を流し込まれたことでインキュバス化が進んでいる。しかし、流し込まれたとしても、それでも時間の経過や体力の回復で治るはずだ」

「それでは、レックス様もじきに元通りになるのではないですか?」

「いいや、様々な事象が絡み合ってインキュバス化がものすごい速度で進行している」

 ふぅと息を漏らし、ソファーに体を預けてこの頃起きた事象を語る。それは、レックスを追い詰めていた様々なものだった。

「たとえば妾が作った様々な薬の煙を吸い込んで免疫力が低下した。先日の事件だな。そして、サキュバスロードになったサフィアから強い淫気を流し込まれた。さらに、ここ数日で体力が低下した。……ここ数日でレックスと交わったもの、手を挙げよ」

 その場にいる全員がそっと手を挙げる。全員というのは、マーガレットも含んだためである。
 いつの間に兄をつまみ食いなんてしていたんだとサフィアは憤慨した。

「お母様!」

「ちょっ、ちょびっと味見をしただけだ! 三人のサキュバスを相手にできるなんて美味しそうにもほどがあるだろう! ゴホン。うむ、まぁ、妾も原因の一つであることに変わりはない」

「それでお母様。元に戻す方法はないのですか?」

「レックスとさらに交わり、精力ではなくインキュバスになるための淫気を吸い取る。しかしこれは精力と共に吸収しなければならないのでな……今回はインキュバス化が進んでいるため、レックスが枯れそうになるまで搾り取らなければならない。」

「お母様ももちろん協力してくれるんだよね?」

 精力だけではなく、別のものである淫気も搾り取るというのは難しい。この難しい状況を打破できるのは母だけだと、サフィアは期待を込めた目で彼女を見た。
 しかし――

「そうしたいのは山々なんだが……その、腹がまだ痛いし、殴られた衝撃で腰もやってしまってな。すまんが今の妾では役に立てぬ。正直、夢の世界を維持できぬほどに腹が痛いのだ……」

「ならば私達が、レックス様を元に戻してみせます」

「うん。アタシのせいだし、ちゃんとアタシがお兄ちゃんを元に戻してみせるよ」

 アイヴィとサフィアが顔を見合わせて頷く。慕う家族のために、己を投げ出してでも救うという覚悟。

「うむ、任せた。だがレックスのインキュバス化は思ったより早い。くれぐれも油断するんじゃないぞ。普段からあの子は精剛だ。本格的にインキュバスになれば、サキュバスといえどただでは済まないかもしれぬ」

 こくりと頷き、アイヴィとサフィアは談話室を後にした。向かうはレックスが眠る彼の自室。

 だが、その部屋に近づいた時、その中からヴァネッサの苦しそうな喘ぎ声が響くのだった。
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