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ハザマの国・編
VS岩蜘蛛
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「ソラさんは、いつから旅に?」
「うーん、旅に出てから一ヶ月くらいな気がしますね。あ、フランシャさん、フーシャって女の人を知りませんか? 僕の母なんですけど、居なくなってしまって。今旅をしているのは、母を探してなんです」
「フーシャ——存じ上げませんね。力になれず申し訳ない」
「いやいや。こちらこそすいません、こんないきなりで」
今、僕達は大きく掘られた洞窟を進んでいる。
ここは金採掘を行うために掘り進められたもので、人がが歩いて通るために段々と階段のようになっている。その道の横には、見慣れないものが敷かれていた。木と鉄の……何これ?
四角く長い鉄が真っ直ぐと地下に向かっている。
その鉄の下には四角い木材が等間隔で敷かれており、縞縞模様になっている。何かの道か?
「何ですか? これ」
「知らね」
「これはレールです。魔道式トロッコが走るんですよ」
「レール? トロッコ?」
「何だそれ?」
「ふふっ。この先にありますから、見れば分かりますよ」
おぉ、気になる。走るってことは乗り物か何かなのか? 魔道式ってことは魔道具だよな。
トロッコに興味津々で洞窟を進み、数分。天井の高い広い空間に到着した。
「ここが採掘の拠点です」
「ここが、広いですね……」
「そうですね。ここで基本的に仕事を行なっているので、ちょっと生活感があったりしますね。あ! あれがトロッコですよ」
「「お?」」
フランシャさんが指差した所には、箱の連なった鉄の塊があった。
僕とトウキ君は、トロッコを興味津々に見に行く。
レールの端に停まっていたトロッコと呼ばれる乗り物? は錆びた鉄の色をしており、その体を砂埃で汚していた。触った感じ、鉄——という感想しか出てこない。
トロッコの上部には人が乗れるようになっている場所があり、そこには数多くのボタンがある。
ちょっと押してみたい気持ちになるな。
「これが動くんですか?」
「そうですよ。これは魔石を原動力にして動く乗り物です。これを使って掘り起こした鉱石や、採掘に必要な道具などを運んだりするんです」
魔石って、あの火の魔導具に付いてる赤い石かな?
「へー」
「便利だな」
トウキ君の言葉に「ね」と相槌を打つ。
「そうですよね。これがあれば馬を走らせる必要も無いですし。ただ、馬より高価なのが欠点ですかね」
「いくらくらい、なんですか?」
「たしか……四百万ルーレン?」
「ええっ⁉︎」
高え! これそんなにするの⁉︎ 馬って大体、二~四万ルーレンくらいだよな。
馬の百倍以上? どうりで見慣れないわけだなぁ……。
「ま、そんなもんだろ魔道具なんて。行こうぜ」
「あ、うん」
僕はトロッコから視界を外し、辺りを見回す。採掘道具がチラホラある。
真正面と右と左側に、さらに地下深くに続いてそうな大きな穴。多分だけど、あの先で金採掘をしているのだろう。三つの穴があるわけだけど……どうするんだ?
「どうしますか?」
「私は右の方へ向かいます」
「じゃ、俺は左」
「え、えっ?」
こ、個人で行くの? いやいや、無理無理無理だって!
人喰い蜘蛛なんて僕にどうにかできる訳ないでしょ!
「ぼ、僕は正面? 一人で……?」
「ええ。もしもの時は大声で呼んでください。すぐに向かいます」
マ、マジかぁ。ここは三人で行動するべきなんじゃないのか? 本当に危ないって。人喰い蜘蛛だよ?
四人食べてるって言ってたじゃん! いやいや死ぬよ、マジで。人喰い蜘蛛に喰われちゃうよ、僕が。
あ、足が震えてきた……どうしよう。自身ありげについて来たけど、それはトウキ君が居るからであってだな。子蜘蛛ならまだしも、親は無理だよ。僕一人は無理だって、ここは言うべきだよな……。
「ソラ」
「え?」
僕の怯えた様子に気付いたのか、トウキ君は僕の肩を叩き、笑いかけた。
「お前なら大丈夫だ」
「え、あ、そ、そう、かな……」
「オウ。お前はな、お前が思っているほど弱くないぞ。俺が保証する」
トウキ君……。そ、そうだよな。やってもいないのに弱気になっちゃダメだよな!
エナに、すぐに帰るって言ったろ、僕! 僕はやるぞ……やるぞっ!
さっきまでの足の震えは、もう止まった。僕は気合いを入れるため両頬をパンッと強く叩いた。
「よしっ。ガンバルゾ!」
「ククッ。オウ!」
「頑張りましょう!」
僕は二人と別れ、正面にある穴の方へ向かう。穴の大きさは二メートル以上ある。
横幅も広いし……これを人が掘ったのか。場違いかもだけど、ちょっと感慨深い。
穴の先は階段になっていた。明かりは点いてるけど、火じゃないな。照明の魔導具かぁ……。
『キョエエエエエエエエエエエエエエエッッッ⁉︎』
『グエッ——……』
『うあああああああああああああああああ⁉︎』
うん、いい思い出が無いな。今日初めて見たことにしよう。
「スゲー! これが魔導具かぁ! 便利だなぁ~!」
ふぅ……さて、行くか! 僕はどこまでも続く階段を降りていった。
* * *
地下道は蟻の巣を想起させるほど複雑で、どこまでも下に続いていた。
降りていった先の横道に入ると広い空間があり、その広い空間の先にもまた、別の地下道があった。
金を探って掘り進めているんだろうが、規則性がない。感想は、迷路——この一言に尽きる。
ここさっき通らなかった? と思えるほど風景というか、見た目が何も変わらない。
圧迫感もあるし、蜘蛛が飛び出てくるかもと気を張っているせいで余計に息苦しい……。
一体、どこにいるんだ。さっきから、小石をひっくり返しては安心するを繰り返している。
それにしても、上であんなにワラワラしていた子蜘蛛が、ここには全くいない。
てか、元々あの子蜘蛛たちはどこにいたんだ? 全部地下から出ていったのか?
地下を進むこと——数十分。耳を澄ませても、聞こえるのは僕の呼吸と足音だけ。
一向に親蜘蛛が見つかる気配——いや、生き物の気配がしない。
こういう所には多くいそうなのに、鼠もモグラもいないのか。 もしかして蜘蛛に食べられた的な?
怖っ。
さらに奥深くに進むこと——十数分。
「お?」
歩いていると、一際明るく光っている場所が見えた。薄緑色の灯りだ。
魔道照明の灯りは白光だったし、あれは照明じゃない?
行ってみるか。明かりを目指し進むと、さっきまでいた場所より大きな通路に出た。
デカくね? さっきまでの通路の大きさは縦二メートルだったのに対し、この薄緑に光った通路は縦四メートルはある。人力でこの高さまで掘れるものなのか? 道がガタガタだ。これは、もしかして天然の通路? 光ってるのは、この苔だな。薄緑色に光った苔——あっ、見たことあるぞ!
これ、カカさんが薬の材料になるって言って見せてくれたやつだ。こんな所に生えてるのか。
通路にはびっしりと光苔が生えており、視界を確保するのに十分すぎる程、光り輝いている。
持って帰ろうかな……? ま、後ででいいか。
辺りを見回すと、通路の至る所に無数の小さい穴があり、もしかしなくとも、これは人間の手で掘られたものではないと悟る。これを掘って進めたのって、もしかして蜘蛛?
そう考えると、この通路は天然というより蜘蛛が作ったもののように思えてくる。
無数の小さい穴は子蜘蛛。通路の先にある、広そうな空間には……親蜘蛛。
僕は無意識に喉を鳴らした。大声で助けを呼ぶか……? いや、ここからじゃ聞こえないだろうな。
仮に助けを呼んでも、先に気づくのは蜘蛛だろうし、やめておこう。一旦戻ろう。
ここは上に戻って、二人を呼びに行った方が良いと思う。
その方が蜘蛛討伐は着実だろうし、身の危険も少ないだろう。トウキ君なら、蜘蛛なんて一発だろうし。
よし、戻——
『ギキィ』
……ギキィ? 何か今、上から聞こえなかったか? ま、まさかな。全く~冗談キツイぜ~!
僕は自分の頭上——通路の天井をぎこちなく見上げた。
「ギ、ギキィ?」
『ギキッッ、キキキキキキキキキキキキ!』
上からの声の正体は、天井に張り付いていた大岩だった。
その大岩からが八本の足が生えており、岩から出ていた複数の目は、僕を真っ直ぐ見つめていた——!
「ギキャアアアアアアアアアアアアアアアアっ⁉︎」
『ギギャアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎』
岩は僕の叫びと同時に、天井から落ちてきた。
僕が咄嗟に避けると、大岩はドゴンっと大きな音を立て、僕が通ってきた地上へと続く道を、その身で塞いだ。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいぃ!」
嘘だろ? この蜘蛛、道を塞ぎやがったんだがっ⁉︎ え? ヤバくない? 戻れないじゃん……!
「だ、誰かアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ⁉︎」
蜘蛛がいるヨォーーーーーーーー‼︎ 僕の決死の叫びは、二人には届かなかった……。
本格的にヤバイ状況になってしまった。蜘蛛の大きさは、殻になってる岩が二メートルくらい。
本体を合わせて、大きさは二メートル強。あの超重量に押し潰されてたら死んでたな。
よく動けたな、僕! これは成長しているのでは? って、そんなこと考えてる場合じゃねえっ!
「ヤベエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ⁉」
僕はその場から逃走した。脱出口を塞がれたままじゃ、埒が明かない。
あの広い空間に行って、この蜘蛛を撒かないと!
『ギィ・・・・・・ギャアアアアアアア!』
来たっ! ドコドコ、と低い音を鳴らして僕を追ってくる!
あんな岩を背負っているくせに、意外と素早いな!
僕は三十メートルはあるだろう通路を走り、その先にある空間と入った。
その空間には夥しい数の白い球体——蜘蛛の卵と思われるものが壁一面にびっしりとくっついていた。
光苔で覆われたその空間は半径十五メートルはある。
ズザッ、と蜘蛛に追い込まれたような形で、空間中央で急停止する。
僕はすぐさま腰に差していた二本の短剣を抜剣。臨戦体制を取った。
……臨戦体制と言っても、僕は戦うつもりはない。隙を突いて、あの蜘蛛から逃げ出す。
そして上へ行き。トウキ君達を連れて戻る! それが確実にこの蜘蛛を倒す、僕の考え——作戦だ。
まあこの作戦は、僕がこの蜘蛛に勝てると思っていないからなのだが……。
『ギィ……』
「来いよ……」
お互いに、お互いの一挙手一投足を警戒する。しばらくの静観。しばらくの膠着。
先に動いたのは——僕だ!
「こっちから行くからなっ!」
『ギ、ギシャアアアアアアアアアアアアア』
全速力での直進。それを見た蜘蛛は一瞬固まり、すぐさま叫声を上げた。
僕が狙うのは、相手の動きを誘導し、それを回避。相手の行動後の隙を突き、この場から脱出!
この作戦……完璧だろっ⁉︎ 前傾姿勢で直進する僕に、蜘蛛も突撃を開始。
その巨体で⁉︎ と思えるような素早い身のこなし。でも——僕の方が速い。止まって見えるぜっ‼︎
「ふっ!」
『ギギ⁉︎』
僕は地に剣を突き刺して急停止。相手はそれに気づくも、その巨体で急停止はできないようで、凄まじい勢いでこちらに向かった来ている。僕はニヤッと笑い、横に飛んで突進を回避!
『ギギッ』
「ふっ……」
蜘蛛は僕の横を通り、凄まじい勢いで壁に激突した!
ドカンっと、小爆発が起こったような音が空間に響き、凄まじい超重量が激突した壁面は土埃を上げる!
『ギガッギギ…………』
「よっしゃあああ! 見たかぁっ⁉︎」
これは僕の脱出作戦じゃない——蜘蛛の自滅作戦だったんだ! 気付かなったぜ……!
いや、気づいていたことにしよう。
「へへっ」
壁に激突した蜘蛛の殻、大岩は大きな罅が入っていた。ボロボロと小さな岩片が地に落ち、音を鳴らす。
蜘蛛の動きはぎこちなく、かなりのダメージが入ったことが窺える。弱ってるな……。
この勝負——僕の作戦勝ちだ!
『ギィ……』
「まだやるか……?」
弱ってなお、その殺意を僕に向ける岩蜘蛛。正直、負ける気がしない。
このまま戦ってもいいんじゃないか? トウキ君の言う通り、僕って弱くないのでは?
行けるっ行ける! 爺ちゃん! 僕やってみるっ!
僕は背後に脱出口があるにも関わらず、両手の剣を構えて、岩蜘蛛に戦意を向けた。
その戦意に当てられてか、蜘蛛の八つの黒い目が真っ赤に染まった。
先ほど以上の殺意……僕は冷や汗をかき、唇を噛む。
足は震えない。目もしっかり開いている。頭もスッキリだ。
そう。そうだよ。負ける気がしない——コイツには!
「来いよ!」
『ギガクァアアアアアアアアアアアアア⁉︎』
「——はっ⁉︎」
蜘蛛が行ったのは、大跳躍。その巨体に見合わぬ身軽さで、天井スレスレまで飛んだ。
蜘蛛が飛んだっ⁉︎ 普通、その巨体で飛べないだろっ! な、おまっ……
「岩背負ってるだろうがアアアアアアアアアア⁉︎」
『ギバアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼︎』
「うわあああああ」と叫びながら緊急回避。ドゴーンっと爆発音が響き、少し地面が揺れた。
蜘蛛の飛びかかりは脱出口に直撃し、ガラガラと崩れて……完全に逃げ道が塞がれた。
「……へ、エエエエエエッッッ⁉」
ととと、閉じ込められたんですけどっ⁉︎ 来た道が無くなってるヨォ!
これじゃあ帰れないじゃねぇかっ! ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイぞッッッ⁉︎
『ギヒシャアアアアアアアア……』
——っ⁉︎ 今コイツ笑わなかったか? ふざけんなぁっ!
「おま、お前っ、ふざけんなよっ!」
『ギギギィ』
あっ! コイツ、完全に殻の岩が砕けてる。もう少し何か当てたら崩れそうだぞ。
……殻の中ってどうなってんの? って、そんなこと考えてる場合かっ! どうすれば——
そう思考した瞬間——足に、ドンっと衝撃が走った。
「ッッッ⁉︎」
咄嗟に足を見ると、白い糸が僕の右足に引っ付いていた。これは、まさか……
『ギガアアアアアアアアアアアア!!』
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉︎」
蜘蛛の叫声と同時、蜘蛛が身を暴れさせ、僕の足に付いた糸が引っ張られる。
蜘蛛の怪力に抗えることなく、僕は宙を舞った。
「ぐうううううううううう⁉︎」
蜘蛛の暴力に振り回され、目が回りそうになる。
ドコッ、と天井に打つかり「グウッ」と苦悶の声を漏らした。
「ヅゥッ——テメエッッッ⁉︎」
僕は咄嗟に右手の剣で、右足に引っ付いた糸を切り裂く。
切った瞬間、僕に掛かっていた重圧は解かれ、その身は自由に——落下した!
「うおわああああああああああああああ⁉︎」
見た感じ十メートルはあるなぁ……高えっ!
この高さから落ちるのは初めてだなぁ……高えっ!
受け身とれるか…………これは痛いっ!
『ソラ、クッキーがあるぞ』
爺ちゃん、クッキーは——って走馬灯じゃねえか! ここで死ねるわけないだろっ!
「ッッッ! 風えええええええええええええええっっ⁉︎」
僕は掌にに暴風を溜め、地に向けて撃つ。その風は瞬く間に空間を満たし、蹂躙する。
僕はその暴風のダメージを受けず、ゆっくりと降下した。
暴れ回る風が壁面に貼り付けられていた蜘蛛の卵を吹き飛ばし、まるで竜巻の中のような光景を作った。
——蜘蛛はっ⁉︎
僕は舞い散る土埃と卵の中から、今もこの空間にいる、あのクソ蜘蛛を探す。
「……いたっ!」
視界の端、風に耐えるように壁に張り付く蜘蛛を発見。僕はこの風の影響を受けない。
無意識に風を纏い、全速力で駆ける。尋常ではない加速を剣に乗せ、蜘蛛に突撃した。
「ッッッ‼︎」
岩殻がこの風で砕けた——それを認め、さらに加速。右手の剣を両手で持ち、刺突の構えで突き進む。
蜘蛛は僕の雄叫びに気づくも、その風で自由な身動きが取れないでいた! 絶好——!
「食らえエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ‼︎」
『ギギャアアアアアアアアアア⁉︎』
僕の一撃は蜘蛛の横っ腹に直撃し、蜘蛛は絶叫を上げた。
そして——風を乗せた刺突は、蜘蛛の腹に風穴を開けた!
『ギギ……ギィ——……』
蜘蛛は臓物を開いた穴から出し、その場にへたり込む。
その体から生気が抜け、丸見えになっている八つの眼球から光を消す。僕は蜘蛛の死を黙って見届けた。
「や、やったよね……? やっ、た。やったああああああああああああああああっ!」
風は僕の勝利と共に落ち着き、ゆっくりと収まった。
嵐の余韻が残る空間には、僕の勝利の雄叫びが響いていた——
「うーん、旅に出てから一ヶ月くらいな気がしますね。あ、フランシャさん、フーシャって女の人を知りませんか? 僕の母なんですけど、居なくなってしまって。今旅をしているのは、母を探してなんです」
「フーシャ——存じ上げませんね。力になれず申し訳ない」
「いやいや。こちらこそすいません、こんないきなりで」
今、僕達は大きく掘られた洞窟を進んでいる。
ここは金採掘を行うために掘り進められたもので、人がが歩いて通るために段々と階段のようになっている。その道の横には、見慣れないものが敷かれていた。木と鉄の……何これ?
四角く長い鉄が真っ直ぐと地下に向かっている。
その鉄の下には四角い木材が等間隔で敷かれており、縞縞模様になっている。何かの道か?
「何ですか? これ」
「知らね」
「これはレールです。魔道式トロッコが走るんですよ」
「レール? トロッコ?」
「何だそれ?」
「ふふっ。この先にありますから、見れば分かりますよ」
おぉ、気になる。走るってことは乗り物か何かなのか? 魔道式ってことは魔道具だよな。
トロッコに興味津々で洞窟を進み、数分。天井の高い広い空間に到着した。
「ここが採掘の拠点です」
「ここが、広いですね……」
「そうですね。ここで基本的に仕事を行なっているので、ちょっと生活感があったりしますね。あ! あれがトロッコですよ」
「「お?」」
フランシャさんが指差した所には、箱の連なった鉄の塊があった。
僕とトウキ君は、トロッコを興味津々に見に行く。
レールの端に停まっていたトロッコと呼ばれる乗り物? は錆びた鉄の色をしており、その体を砂埃で汚していた。触った感じ、鉄——という感想しか出てこない。
トロッコの上部には人が乗れるようになっている場所があり、そこには数多くのボタンがある。
ちょっと押してみたい気持ちになるな。
「これが動くんですか?」
「そうですよ。これは魔石を原動力にして動く乗り物です。これを使って掘り起こした鉱石や、採掘に必要な道具などを運んだりするんです」
魔石って、あの火の魔導具に付いてる赤い石かな?
「へー」
「便利だな」
トウキ君の言葉に「ね」と相槌を打つ。
「そうですよね。これがあれば馬を走らせる必要も無いですし。ただ、馬より高価なのが欠点ですかね」
「いくらくらい、なんですか?」
「たしか……四百万ルーレン?」
「ええっ⁉︎」
高え! これそんなにするの⁉︎ 馬って大体、二~四万ルーレンくらいだよな。
馬の百倍以上? どうりで見慣れないわけだなぁ……。
「ま、そんなもんだろ魔道具なんて。行こうぜ」
「あ、うん」
僕はトロッコから視界を外し、辺りを見回す。採掘道具がチラホラある。
真正面と右と左側に、さらに地下深くに続いてそうな大きな穴。多分だけど、あの先で金採掘をしているのだろう。三つの穴があるわけだけど……どうするんだ?
「どうしますか?」
「私は右の方へ向かいます」
「じゃ、俺は左」
「え、えっ?」
こ、個人で行くの? いやいや、無理無理無理だって!
人喰い蜘蛛なんて僕にどうにかできる訳ないでしょ!
「ぼ、僕は正面? 一人で……?」
「ええ。もしもの時は大声で呼んでください。すぐに向かいます」
マ、マジかぁ。ここは三人で行動するべきなんじゃないのか? 本当に危ないって。人喰い蜘蛛だよ?
四人食べてるって言ってたじゃん! いやいや死ぬよ、マジで。人喰い蜘蛛に喰われちゃうよ、僕が。
あ、足が震えてきた……どうしよう。自身ありげについて来たけど、それはトウキ君が居るからであってだな。子蜘蛛ならまだしも、親は無理だよ。僕一人は無理だって、ここは言うべきだよな……。
「ソラ」
「え?」
僕の怯えた様子に気付いたのか、トウキ君は僕の肩を叩き、笑いかけた。
「お前なら大丈夫だ」
「え、あ、そ、そう、かな……」
「オウ。お前はな、お前が思っているほど弱くないぞ。俺が保証する」
トウキ君……。そ、そうだよな。やってもいないのに弱気になっちゃダメだよな!
エナに、すぐに帰るって言ったろ、僕! 僕はやるぞ……やるぞっ!
さっきまでの足の震えは、もう止まった。僕は気合いを入れるため両頬をパンッと強く叩いた。
「よしっ。ガンバルゾ!」
「ククッ。オウ!」
「頑張りましょう!」
僕は二人と別れ、正面にある穴の方へ向かう。穴の大きさは二メートル以上ある。
横幅も広いし……これを人が掘ったのか。場違いかもだけど、ちょっと感慨深い。
穴の先は階段になっていた。明かりは点いてるけど、火じゃないな。照明の魔導具かぁ……。
『キョエエエエエエエエエエエエエエエッッッ⁉︎』
『グエッ——……』
『うあああああああああああああああああ⁉︎』
うん、いい思い出が無いな。今日初めて見たことにしよう。
「スゲー! これが魔導具かぁ! 便利だなぁ~!」
ふぅ……さて、行くか! 僕はどこまでも続く階段を降りていった。
* * *
地下道は蟻の巣を想起させるほど複雑で、どこまでも下に続いていた。
降りていった先の横道に入ると広い空間があり、その広い空間の先にもまた、別の地下道があった。
金を探って掘り進めているんだろうが、規則性がない。感想は、迷路——この一言に尽きる。
ここさっき通らなかった? と思えるほど風景というか、見た目が何も変わらない。
圧迫感もあるし、蜘蛛が飛び出てくるかもと気を張っているせいで余計に息苦しい……。
一体、どこにいるんだ。さっきから、小石をひっくり返しては安心するを繰り返している。
それにしても、上であんなにワラワラしていた子蜘蛛が、ここには全くいない。
てか、元々あの子蜘蛛たちはどこにいたんだ? 全部地下から出ていったのか?
地下を進むこと——数十分。耳を澄ませても、聞こえるのは僕の呼吸と足音だけ。
一向に親蜘蛛が見つかる気配——いや、生き物の気配がしない。
こういう所には多くいそうなのに、鼠もモグラもいないのか。 もしかして蜘蛛に食べられた的な?
怖っ。
さらに奥深くに進むこと——十数分。
「お?」
歩いていると、一際明るく光っている場所が見えた。薄緑色の灯りだ。
魔道照明の灯りは白光だったし、あれは照明じゃない?
行ってみるか。明かりを目指し進むと、さっきまでいた場所より大きな通路に出た。
デカくね? さっきまでの通路の大きさは縦二メートルだったのに対し、この薄緑に光った通路は縦四メートルはある。人力でこの高さまで掘れるものなのか? 道がガタガタだ。これは、もしかして天然の通路? 光ってるのは、この苔だな。薄緑色に光った苔——あっ、見たことあるぞ!
これ、カカさんが薬の材料になるって言って見せてくれたやつだ。こんな所に生えてるのか。
通路にはびっしりと光苔が生えており、視界を確保するのに十分すぎる程、光り輝いている。
持って帰ろうかな……? ま、後ででいいか。
辺りを見回すと、通路の至る所に無数の小さい穴があり、もしかしなくとも、これは人間の手で掘られたものではないと悟る。これを掘って進めたのって、もしかして蜘蛛?
そう考えると、この通路は天然というより蜘蛛が作ったもののように思えてくる。
無数の小さい穴は子蜘蛛。通路の先にある、広そうな空間には……親蜘蛛。
僕は無意識に喉を鳴らした。大声で助けを呼ぶか……? いや、ここからじゃ聞こえないだろうな。
仮に助けを呼んでも、先に気づくのは蜘蛛だろうし、やめておこう。一旦戻ろう。
ここは上に戻って、二人を呼びに行った方が良いと思う。
その方が蜘蛛討伐は着実だろうし、身の危険も少ないだろう。トウキ君なら、蜘蛛なんて一発だろうし。
よし、戻——
『ギキィ』
……ギキィ? 何か今、上から聞こえなかったか? ま、まさかな。全く~冗談キツイぜ~!
僕は自分の頭上——通路の天井をぎこちなく見上げた。
「ギ、ギキィ?」
『ギキッッ、キキキキキキキキキキキキ!』
上からの声の正体は、天井に張り付いていた大岩だった。
その大岩からが八本の足が生えており、岩から出ていた複数の目は、僕を真っ直ぐ見つめていた——!
「ギキャアアアアアアアアアアアアアアアアっ⁉︎」
『ギギャアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎』
岩は僕の叫びと同時に、天井から落ちてきた。
僕が咄嗟に避けると、大岩はドゴンっと大きな音を立て、僕が通ってきた地上へと続く道を、その身で塞いだ。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいぃ!」
嘘だろ? この蜘蛛、道を塞ぎやがったんだがっ⁉︎ え? ヤバくない? 戻れないじゃん……!
「だ、誰かアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ⁉︎」
蜘蛛がいるヨォーーーーーーーー‼︎ 僕の決死の叫びは、二人には届かなかった……。
本格的にヤバイ状況になってしまった。蜘蛛の大きさは、殻になってる岩が二メートルくらい。
本体を合わせて、大きさは二メートル強。あの超重量に押し潰されてたら死んでたな。
よく動けたな、僕! これは成長しているのでは? って、そんなこと考えてる場合じゃねえっ!
「ヤベエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ⁉」
僕はその場から逃走した。脱出口を塞がれたままじゃ、埒が明かない。
あの広い空間に行って、この蜘蛛を撒かないと!
『ギィ・・・・・・ギャアアアアアアア!』
来たっ! ドコドコ、と低い音を鳴らして僕を追ってくる!
あんな岩を背負っているくせに、意外と素早いな!
僕は三十メートルはあるだろう通路を走り、その先にある空間と入った。
その空間には夥しい数の白い球体——蜘蛛の卵と思われるものが壁一面にびっしりとくっついていた。
光苔で覆われたその空間は半径十五メートルはある。
ズザッ、と蜘蛛に追い込まれたような形で、空間中央で急停止する。
僕はすぐさま腰に差していた二本の短剣を抜剣。臨戦体制を取った。
……臨戦体制と言っても、僕は戦うつもりはない。隙を突いて、あの蜘蛛から逃げ出す。
そして上へ行き。トウキ君達を連れて戻る! それが確実にこの蜘蛛を倒す、僕の考え——作戦だ。
まあこの作戦は、僕がこの蜘蛛に勝てると思っていないからなのだが……。
『ギィ……』
「来いよ……」
お互いに、お互いの一挙手一投足を警戒する。しばらくの静観。しばらくの膠着。
先に動いたのは——僕だ!
「こっちから行くからなっ!」
『ギ、ギシャアアアアアアアアアアアアア』
全速力での直進。それを見た蜘蛛は一瞬固まり、すぐさま叫声を上げた。
僕が狙うのは、相手の動きを誘導し、それを回避。相手の行動後の隙を突き、この場から脱出!
この作戦……完璧だろっ⁉︎ 前傾姿勢で直進する僕に、蜘蛛も突撃を開始。
その巨体で⁉︎ と思えるような素早い身のこなし。でも——僕の方が速い。止まって見えるぜっ‼︎
「ふっ!」
『ギギ⁉︎』
僕は地に剣を突き刺して急停止。相手はそれに気づくも、その巨体で急停止はできないようで、凄まじい勢いでこちらに向かった来ている。僕はニヤッと笑い、横に飛んで突進を回避!
『ギギッ』
「ふっ……」
蜘蛛は僕の横を通り、凄まじい勢いで壁に激突した!
ドカンっと、小爆発が起こったような音が空間に響き、凄まじい超重量が激突した壁面は土埃を上げる!
『ギガッギギ…………』
「よっしゃあああ! 見たかぁっ⁉︎」
これは僕の脱出作戦じゃない——蜘蛛の自滅作戦だったんだ! 気付かなったぜ……!
いや、気づいていたことにしよう。
「へへっ」
壁に激突した蜘蛛の殻、大岩は大きな罅が入っていた。ボロボロと小さな岩片が地に落ち、音を鳴らす。
蜘蛛の動きはぎこちなく、かなりのダメージが入ったことが窺える。弱ってるな……。
この勝負——僕の作戦勝ちだ!
『ギィ……』
「まだやるか……?」
弱ってなお、その殺意を僕に向ける岩蜘蛛。正直、負ける気がしない。
このまま戦ってもいいんじゃないか? トウキ君の言う通り、僕って弱くないのでは?
行けるっ行ける! 爺ちゃん! 僕やってみるっ!
僕は背後に脱出口があるにも関わらず、両手の剣を構えて、岩蜘蛛に戦意を向けた。
その戦意に当てられてか、蜘蛛の八つの黒い目が真っ赤に染まった。
先ほど以上の殺意……僕は冷や汗をかき、唇を噛む。
足は震えない。目もしっかり開いている。頭もスッキリだ。
そう。そうだよ。負ける気がしない——コイツには!
「来いよ!」
『ギガクァアアアアアアアアアアアアア⁉︎』
「——はっ⁉︎」
蜘蛛が行ったのは、大跳躍。その巨体に見合わぬ身軽さで、天井スレスレまで飛んだ。
蜘蛛が飛んだっ⁉︎ 普通、その巨体で飛べないだろっ! な、おまっ……
「岩背負ってるだろうがアアアアアアアアアア⁉︎」
『ギバアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼︎』
「うわあああああ」と叫びながら緊急回避。ドゴーンっと爆発音が響き、少し地面が揺れた。
蜘蛛の飛びかかりは脱出口に直撃し、ガラガラと崩れて……完全に逃げ道が塞がれた。
「……へ、エエエエエエッッッ⁉」
ととと、閉じ込められたんですけどっ⁉︎ 来た道が無くなってるヨォ!
これじゃあ帰れないじゃねぇかっ! ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイぞッッッ⁉︎
『ギヒシャアアアアアアアア……』
——っ⁉︎ 今コイツ笑わなかったか? ふざけんなぁっ!
「おま、お前っ、ふざけんなよっ!」
『ギギギィ』
あっ! コイツ、完全に殻の岩が砕けてる。もう少し何か当てたら崩れそうだぞ。
……殻の中ってどうなってんの? って、そんなこと考えてる場合かっ! どうすれば——
そう思考した瞬間——足に、ドンっと衝撃が走った。
「ッッッ⁉︎」
咄嗟に足を見ると、白い糸が僕の右足に引っ付いていた。これは、まさか……
『ギガアアアアアアアアアアアア!!』
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉︎」
蜘蛛の叫声と同時、蜘蛛が身を暴れさせ、僕の足に付いた糸が引っ張られる。
蜘蛛の怪力に抗えることなく、僕は宙を舞った。
「ぐうううううううううう⁉︎」
蜘蛛の暴力に振り回され、目が回りそうになる。
ドコッ、と天井に打つかり「グウッ」と苦悶の声を漏らした。
「ヅゥッ——テメエッッッ⁉︎」
僕は咄嗟に右手の剣で、右足に引っ付いた糸を切り裂く。
切った瞬間、僕に掛かっていた重圧は解かれ、その身は自由に——落下した!
「うおわああああああああああああああ⁉︎」
見た感じ十メートルはあるなぁ……高えっ!
この高さから落ちるのは初めてだなぁ……高えっ!
受け身とれるか…………これは痛いっ!
『ソラ、クッキーがあるぞ』
爺ちゃん、クッキーは——って走馬灯じゃねえか! ここで死ねるわけないだろっ!
「ッッッ! 風えええええええええええええええっっ⁉︎」
僕は掌にに暴風を溜め、地に向けて撃つ。その風は瞬く間に空間を満たし、蹂躙する。
僕はその暴風のダメージを受けず、ゆっくりと降下した。
暴れ回る風が壁面に貼り付けられていた蜘蛛の卵を吹き飛ばし、まるで竜巻の中のような光景を作った。
——蜘蛛はっ⁉︎
僕は舞い散る土埃と卵の中から、今もこの空間にいる、あのクソ蜘蛛を探す。
「……いたっ!」
視界の端、風に耐えるように壁に張り付く蜘蛛を発見。僕はこの風の影響を受けない。
無意識に風を纏い、全速力で駆ける。尋常ではない加速を剣に乗せ、蜘蛛に突撃した。
「ッッッ‼︎」
岩殻がこの風で砕けた——それを認め、さらに加速。右手の剣を両手で持ち、刺突の構えで突き進む。
蜘蛛は僕の雄叫びに気づくも、その風で自由な身動きが取れないでいた! 絶好——!
「食らえエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ‼︎」
『ギギャアアアアアアアアアア⁉︎』
僕の一撃は蜘蛛の横っ腹に直撃し、蜘蛛は絶叫を上げた。
そして——風を乗せた刺突は、蜘蛛の腹に風穴を開けた!
『ギギ……ギィ——……』
蜘蛛は臓物を開いた穴から出し、その場にへたり込む。
その体から生気が抜け、丸見えになっている八つの眼球から光を消す。僕は蜘蛛の死を黙って見届けた。
「や、やったよね……? やっ、た。やったああああああああああああああああっ!」
風は僕の勝利と共に落ち着き、ゆっくりと収まった。
嵐の余韻が残る空間には、僕の勝利の雄叫びが響いていた——
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