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第24話 無人島脱出
しおりを挟む「では、出発しますか!」
ショールは腰に手を当てて、張り切って言った。
「レイフォナー殿下、ショール様、チェザライ様、この度は助けに来てくださってありがとうございました」
「私はアンジュがどこにいようと、助けに行くよ」
レイフォナーはそう言うと、アンジュの頬を両手で包んだ。
「いいなぁ・・・俺もイチャイチャしたい」
「うーん、ショーくんはモテないからねぇ」
レイフォナーは、肩を落としているショールを可哀想な目で見ながら、水魔法で龍を作った。二手に分かれて行くため、チェザライも風魔法で鳥を作る。
アンジュはレイフォナーが作った龍に乗ることになった。
「龍さん、よろしくお願いします」
アンジュが龍の顔を撫でると、目を細めて喜んでいるように見える。
だが、チェザライが作った鳥のように言葉を発しない。言葉を話す生き物を作れるのは上級魔法士だけだ。
四人は龍と鳥に乗って飛び立った。
アンジュは振り返って無人島を見つめた。早くこの島から脱出したいと思っていたのに、いざ離れるとなると名残惜しく感じている。島での生活を回顧しながら、「お世話になりました」と呟いた。
レイフォナーは、アンジュの腰に手を回して支えている。
アンジュは生き物に乗って空を飛ぶのは初めてだ。
「こんなに速いのに、受ける風は全然強くない!心地よくて気持ちいいわ!」
隣で鳥に乗っているチェザライが得意気に言う。
「僕の作ったこの鳥は、もっと速いよ。今はレイくんに合わせてあげてるの」
嫌味に聞こえたレイフォナーは、ムスッとした。
「私も上級を目指すか」
「上級になるためにどんだけ訓練しなきゃいけないんだよ。お前にそんな時間ないだろ」
アンジュは今回のことで初めて海を見た。
海の存在は知っていたが、なんて広くて、青いのだろう。向かっている中央大陸とは別の大陸もあり、その近くにはいくつもの島が海に浮いている。大小様々な船が航海していて、小型の舟よりはるかに大きい魚のような生き物が、群れをなして泳いでいる。初めて見る光景に、瞳を輝かせずにはいられない。
景色を楽しみつつ、他愛もない話をしていると、いつの間にか中央大陸の上空である。
「もう少し行くと街があるから、一度そこで休憩しよう」
しばらく飛んでは、街や村で休憩をとる。
チェザライは魔法を使いっぱなしだが、レイフォナーとショールは魔力の減りが偏らないように、交代で生き物を作った。島の生活では風魔法が役に立ったアンジュだが、この三人といると自分の魔法がさほど役に立たないことに虚しさを感じている。
役に立つことと言えば、宿で入浴後、髪を乾かすことくらいだ。
「風魔法は便利だな」
「同意」
風魔法でレイフォナーとショールの髪を乾かしているアンジュは、褒められてしまった。
チェザライは自分で髪を乾かしている。
「太陽の光に照らされた水魔法は、キラキラと輝いてとても綺麗ですよ」
女子の可愛い意見に、男子三人は思わず顔が綻んでいる。
「私も生き物を作れたら、みなさまのお役に立てたのに・・・」
「訓練すれば、アンジュも作れるよ」
「魔法学校に入学してみれば?」
「魔力をもってれば誰でも入学できるし、寄宿棟もあるよ」
(確か、無償で学べるんだけ・・・一から魔法を勉強してみようかな?)
そして数日かけ、メアソーグの東に隣接するブランネイド帝国まで辿り着いた。皇帝は、レイフォナーの婚約者候補・ユアーミラの父親だ。
「わあ、可愛い!」
初めて見る帝都の景色に、アンジュは目をキョロキョロと動かしている。
中央大陸一の軍事力、広大な国土をもつブランネイドの街は、もっとお堅い雰囲気なのかと思っていた。
実際は、白と赤を基調とした色合いの明るくて可愛らしい街並みだ。
現在、夕日が沈みかけている時間である。
アンジュ以外の三人は魔力をかなり消費しており、今日は帝都に泊まることになった。宿で二つの部屋をとり、一つの部屋に集まってのんびり会話をしていると、なにやら考え込んでいたレイフォナーが突然立ち上がった。
「今からユアーミラ皇女に話を聴きに行く」
「え、今から?」
「明日にしようよ」
「明日まで待てない」
レイフォナーとショールは城に向かい、アンジュはチェザライと宿に残った。
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