僕が転生した世界で、前世の恋人が元ストーカー男と婚約していたので、命がけで阻止します。

悠木菓子

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 37、その後

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 ルナントフとの勝負に決着がついたあと、ヴァイスは姉のクワオラの元へ行き、怪我の治療をしてもらった。
 クワオラは怪我だらけの弟の姿に心配するどころか、『馬鹿やろう!』と激怒していた。
 その後自宅に戻ると、両親やナタリーゼにも、『油断しすぎ』『稽古が足りない』などと、誰も怪我を心配していない様子だったが、ルナントフに勝ったことを喜んでくれた。

 翌日、リフィアとアーラが揃ってトリガー公爵家にやって来た。
 リフィアは、アーラがシャッテンに所属し、学園で護衛してくれていたと聞かされた上、ヴァイスの怪我を見て混乱したのか案の定泣き出してしまった。
 そしてヴァイスは、アーラにガッツリとお叱りを受けたのだった。



 トリガー公爵家に日常が戻っている。
 タリダルは仕事に打ち込み、ジュリアは剣術に精を出しながらも公爵夫人らしい生活を送っている。
 久しぶりにシャッテンの能力を発揮できたナタリーゼはご満悦の様子で、『半年後にまた帰ってくるよ』と言って、再び旅に出た。

 王宮からは、定期的に連絡が届いた。

 フォグは全員捕まり投獄され、裏の仕事の全容が明らかとなり組織は解散した。
 ルナントフは、フォグにヴァイス殺害依頼をしたことは認めたが、終始反省の色は見られなかった。

『俺は悪くない』
『ヴァイスは前世から俺の邪魔をしていた』
『俺とリフィアは愛し合っている』

 などと、取り調べで話していたという。
 ルナントフは国外追放が決まり、他国の修道院に送られる。
 修道院では慎ましい生活を送り、生涯独身を貫くことになる。
 リフィアを想うルナントフにとっては、耐え難い生活だろう。

 父親のハイルトン侯爵も全ての罪を認めた。
 ティアーノウッドの闇商人と接触していたのは、製造禁止のキブエラの栽培や毒製造に加担し、金儲けをするためだった。
 キブエラは希少であり、毒薬にするには手間がかかるため高値でも売れる。
 闇商人から話を持ちかけられたときに貰ったキブエラ毒を、ルナントフに渡したのだ。
 ハイルトン侯爵はティアーノウッドに送られることが決まり、そちらで裁きを受けることになった。
 侯爵家は嫡男が継ぐことになり、ジャックは名誉挽回に協力するという。



 そして、リフィアとルナントフの婚約は解消された。





 ヴァイスは自室のソファで本を読みながら、愛しい人が来るのを待っている。
 そこへ、執事のコールがリフィアを連れてきた。

「リフィア!」
 ヴァイスは立ち上がり、リフィアに歩み寄る。
 頬を撫で、キスをした。
「もう杖がなくても大丈夫なの?」
「うん。ほとんど痛みはないし、普通に歩けるよ」
「よかった!」

 二人は二人掛けのソファに腰を下ろす。
 コールはお茶を用意し、気を利かせて部屋を出た。

「遅かったね?」
「ここに来る前、クワオラお義姉様の所に行ってたから」
 リフィアはすっかり、未来の義姉と仲良くなっていた。
「えっ!?なんで?って聞いてもいい?」
「ふふ、秘密!」

 リフィアは話題を変えようと、持ってきたバスケットを開ける。
「あのね、プリンを作ってきたの」
「えっ!?やった!」
 ヴァイスは以前、リフィアに手作りのものを食べたいとおねだりしていた。
 リフィアは笑顔のヴァイスに、プリンとスプーンを渡す。
「分量や手順は覚えてたんだけど、この世界には電子レンジがないことに気づいてね。火加減や蒸し時間が難しかったわ」
 リフィアは何度か練習を重ねていたようだ。
 電子レンジのありがたさを力説している。

「···懐かしいな。いただきます」
 ヴァイスはスプーンでプリンをすくい口に運ぶ。
 リフィアはどんな反応が返ってくるのかドキドキしていたが、ヴァイスの頰はすぐに綻んだ。
「美味しい!前世と同じ味だ!」
「えへへ、よかった!」



 二人はプリンを食べ終わり、ヴァイスは話を切り出す。
「リフィア、話があるんだけど」
「うん?」
 ヴァイスは立ち上がり、机に向かう。 
 引き出しから何かを取り出して戻ってきた。
 そしてリフィアの前で片膝をつく。

 ヴァイスは手に持っているリングケースを開けると、中には大粒のダイヤモンドリングが輝いていた。
 それは、前世で航太がプロポーズの際にカナに贈った指輪と同じデザインだった。
 ヴァイスは深呼吸をして、リフィアを見つめる。

「リフィア、愛してる。生涯あなた一人を、いや、リフィアとカナを愛し抜くと誓います。僕と結婚してください。そしてこれからも、僕にプリンを作ってくれますか?」

 リフィアはキョトンとしているが、すぐに声を出して笑う。
「そのプロポーズ、前世と同じセリフね!」
 そう言って、ヴァイスに抱きついた。
 嬉しさのあまり、涙が溢れる。
「やっと、やっとあなたの···ヴァイスと航太のお嫁さんになれるのね!すごく嬉しい!」
「うん、ここまで色んなことがあったな···」

 ヴァイスはリフィアの左薬指にダイヤモンドリングをはめる。

 二人はキスを交わし、この世界で前世の分も幸せになると誓った。

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