24 / 37
24、デート再び
しおりを挟むヴァイスは今、リフィアと王都の四区でデートの最中だ。
命を狙われていることは、リフィアには伝えていない。
以前、街で襲撃されたことがあるため出歩くのは控えたほうがいいと思っているが、リフィアの誘いを断れるはずがない。
現在二人の後方には、シャッテンが数名、陰から護衛をしている。
週末の午後ということもあり、人通りが多い。
宝飾店に入った二人は、お揃いのピアスを探している。
リフィアは初デートでヴァイスに贈り物をもらい、そのお返しがまだできていない。
「これ、どうかな?」
「きれいね!学園でも着けられそう!」
ヴァイスが指を差したのは、青と緑のマーブル模様のガラス玉のピアスだ。
青はヴァイスの瞳色、緑はリフィアの瞳色である。
リフィアは店員に尋ねる。
「これ、もう一組ありますか?」
店員は「少々お待ち下さい」と言って、在庫を見に行った。
リフィアは伯爵家の娘だが、自由に使えるお金は多くない。
そこで、安価な物が買える平民地区の店にやってきたのだ。
「ございましたよ」
店員は奥から同じ物を持ってきた。
「よかった!着けて帰ってもいいですか?」
「もちろんです」
すると、ヴァイスが支払おうとする。
「ちょ、ちょっと待って!これは私からの贈り物なんだから、私が払うの!」
「お揃いのピアスを探すのが目的だったから、僕が払っても問題ないよ」
贈り物をしたかったリフィアは納得いかなかったが、結局ヴァイスに押し切られてしまった。
「着けてくれる?」
ヴァイスはピアスをリフィアに渡した。
「うん・・・」
ピアスを着けるだけなのに、頰が火照ってしまう。
ヴァイスは少し屈み、リフィアは両耳にピアスを着けた。
「どう?」
「とても似合ってるわ」
銀髪のヴァイスに、青と緑のピアスはよく映える。
艶のあるガラス玉は、宝石のように輝いて見える。
同様に、ヴァイスもリフィアにピアスを着けた。
「リフィアの白い肌に、すごく合ってるよ」
そう言って、リフィアの耳を優しく撫でた。
店を出た二人は手を繋ぎ、次の目的地に向かって歩き出す。
「ふふ、お揃いってなんだか懐かしいわ!」
前世でもキーホルダーや食器など、お揃いの物を買っていた。
それを思い出しているであろうリフィアは上機嫌だ。
ふんわりと跳ね上がるような、舞っているかのような軽い足取りは妖精のように愛らしい。
真っ白のワンピース姿が余計そう思わせるのだろう。
「今日は一段と可愛いね」
リフィアは頬を赤く染め、俯いてしまった。
「あ、ありがとう・・・」
二人は広場にやって来た。
やはり賑わっている。
恋人や友達、親子が楽しそうにお喋りをしたり、遊んだりしている。
絵を描いている人、読者をしている人、楽器を演奏している人もいる。
自分たちが住んでいる貴族地区では見られない光景であり、前世を思い出させる眺めだ。
「私、平民地区好きだなぁ」
「僕も。懐かしく感じる」
広場にはいくつかの屋台があり、ヴァイスとリフィアはお目当ての軽食と飲み物を買った。
アーラが美味しいとオススメしていたものだ。
二人はベンチに座り、それにかぶりつく。
「んんー!美味しい!お肉は柔らかくて、野菜もたくさん入っていて、ソースの辛味が丁度いいわ!」
リフィアは食レポをした。
薄い生地のパンに肉や野菜が挟んであり、ソースがかかっている。
タコスのような見た目だ。
「うまっ!これ、かなり好きかも」
味だけでなく、かぶりつけるのも好みだ。
フォークもナイフもいらず、ここでは大きな口を開けて食べても、口にソースを付けても、誰にも注意されない。
リフィアは驚いている。
「ヴァイスの口から、『うまっ!』って初めて聞いたわ」
「はは、前世に似た食べ物だからかな?口調が航太に戻った」
「飲み物も美味しい!」
「これ、炭酸だ・・・うまいな」
リフィアは懐かしそうに言う。
「前世と同じ食べ物や、似たものを結構見かけるわ」
「そうだね。これからも色んな所に食べに行こう」
「うん!」
その後は、カフェでスイーツを食べ、本屋に行き、手を繋いでのんびり散歩をした。
二人は前世のようなデートを思い切り満喫したのだった。
2
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

こんにちは、女嫌いの旦那様!……あれ?
夕立悠理
恋愛
リミカ・ブラウンは前世の記憶があること以外は、いたって普通の伯爵令嬢だ。そんな彼女はある日、超がつくほど女嫌いで有名なチェスター・ロペス公爵と結婚することになる。
しかし、女嫌いのはずのチェスターはリミカのことを溺愛し──!?
※小説家になろう様にも掲載しています
※主人公が肉食系かも?

私はモブ嬢
愛莉
恋愛
レイン・ラグナードは思い出した。
この世界は前世で攻略したゲーム「煌めく世界であなたと」の世界だと!
私はなんと!モブだった!!
生徒Aという役もない存在。
可愛いヒロインでも麗しい悪役令嬢でもない。。
ヒロインと悪役令嬢は今日も元気に喧嘩をしておられます。
遠目でお二人を眺める私の隣には何故貴方がいらっしゃるの?第二王子。。
ちょ!私はモブなの!巻き込まないでぇ!!!!!

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。


美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる