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17、甦る記憶②
しおりを挟むヴァイスは侍女に案内され、リフィアの部屋に入った。
「連絡もなしに突然来てごめんね」
目が合った瞬間、リフィアは涙が溢れる。
驚いたヴァイスは、駆け寄って背中を優しく撫でる。
「リフィア!?まだ体調良くない?大丈夫?」
侍女はお茶を用意し、気を利かせてくれたのか、いつの間にか退室している。
部屋には二人きりだ。
リフィアはヴァイスに抱きつき、泣きじゃくる。
「会い、ぐすっ、会いたかっ、た!」
ヴァイスも優しく抱きしめる。
「僕も会いたかったよ。我慢出来なくて、来ちゃった」
「私、記憶、ぐすっ、戻ったよ!リフィアの記憶も、その前の記憶も・・・」
リフィアは腕を緩め、目を見開くヴァイスを見つめた。
「その前って、もしかして・・・」
今までリフィアに前世の記憶がなく、ヴァイスはどこか孤独感に包まれていた。
ついにそれから解放されるのかと、期待が膨らむ。
「ヴァイス様にもあるんでしょ?」
ヴァイスの右目から、一筋の涙が流れる。
「・・・君の昔の名を、呼んでもいい・・・?」
リフィアは頷く。
「・・・カナ、カナ!!」
ヴァイスはもう一度、強く抱きしめる。
「航太!ごめんね。私、死んじゃって、ごめんね!」
「カナ、ごめん!ストーカーから守ってやれなくて、ごめん!一人で怖かったよな、痛かったよな」
「うんっ。でもこの世界で再びあなたに出会えた!こうして記憶が戻って嬉しいわ!」
ヴァイスはついに孤独感から解放された。
「君に記憶が戻って、すごく嬉しい。リフィアもカナも、愛してる」
「私も、ヴァイス様も航太も愛してるわ」
ヴァイスはリフィアの頬を両手で包み、キスをする。
お互い前世の記憶を持っていること、現世で出会えたこと、再び愛し合えたこと、それらの巡り合わせに感謝し、何度も唇を重ねた。
二人掛けのソファに腰を下ろし、手を繋ぎ、前世の思い出を語り合う。
リフィアは久しぶりに笑顔を見せ、ヴァイスはその笑顔を愛おしく眺める。
「航太も転生したってことは、死んだのよね?」
「うん。君が死んで何も手につかなくて。餓死・・・になるのかな」
リフィアは目を丸くする。
「が、餓死!?食べることが大好きだった航太が、餓死!?」
信じられない、と呟く。
航太は好き嫌いがなく、なんでもよく食べた。
特にカナの手料理が大好きでいつも、美味しい、と言っていた。
「ちなみにあいつは、カナの横で死んでいた。持っていたナイフで自ら命を絶ったそうだ。そして三人とも同じ世界に転生した」
「三人とも・・・偶然なのかしら?」
「わからない。でもこれは、神が与えてくれたチャンスだと思ってる。前世で僕たちの奪われた未来を、この世界でやり直せって言われてる気がする」
そして今後について話をする。
お互い両親に事情を説明しており、婚約解消に向けて動き出している。
大人たちが協力してくれることは心強いが、リフィアは上手くいくか不安そうだ。
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「さっき君のご両親とも話をしたんだけど、僕を受け入れてくれてるみたいだった」
「両親は、私に幸せになってほしいって言ってたわ」
リフィアはヴァイスに、ルナントフからの手紙を見せる。
「ルナントフ様とも一度、話をしなきゃ」
「話をしても、あいつはリフィアを諦めないと思うよ。それに、あいつも前世の記憶持ちだと思う」
不安げな表情のリフィアの頬にキスをして、誓いを立てる。
「今度こそ君を守る。この世界で、前世の分も幸せになろう」
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