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9、束縛
しおりを挟むヴァイスが転入して数週間が経った。
ルナントフの機嫌はずっと悪い。
リフィアに対して以前のような明るさも優しさも消え、まるで別人のように冷たく威圧するような目を向けるようになった。
『さっきトリガー様とどんな話をしていたの?』
『昨日、家で何して過ごしたの?』
『明日の休みは何するの?』
『記憶、何か思い出した?』
『授業が終わったあと、どこに行ってたの?』
『トリガー様にはあまり近づくなって言ったよね?』
『君は俺のことだけ考えていればいいんだよ』
休憩時間、リフィアが一人で行動すると、何をしていたのか毎回把握しようとする。
特にヴァイスのこととなると、とても厳しい。
そのためルナントフは一日中、彼女の側からほとんど離れようとしない。
これはもう監視だ。
リフィアは最近、学園に行くことが億劫になっている。
毎日が窮屈で居心地が悪く、胸が締めつけられるように痛む。
すっかりルナントフに恐怖を感じるようになっていた。
ルナントフの監視から逃げるように、化粧室で時間を潰す。
鏡に映った自分を見つめ、自分に問いかける。
「これがずっと続くの?死ぬまで?私、こんなの耐えられる?」
ルナントフに怯え、泣きそうな顔の自分を見ていられない。
「ひどい顔ね・・・」
ルナントフのリフィアへの強い口調の物言いは、人目を気にせず教室だけでなく、廊下や中庭、至る所で見かける。
他クラスや他学年の生徒の間でも、二人は有名になってしまった。
ある日、ルナントフが体調不良で学園を休んだ。
この機を逃すものか、とリフィアはクラスメイトたちに囲まれる。
「リフィア、最近ずっと顔色が悪いわ」
「最近のルナントフ様、ちょっとおかしいよな」
「以前は優しかったのに」
「何も手助け出来なくて、ごめんなさい」
「私でよければ、話聞くからね!」
みんな盛大にリフィアを心配した。
このクラスは公爵家から男爵家、平民も在籍している。
一年のときからほぼ同じ顔ぶれで、身分など関係なくみんな仲が良い。
特に親友のアーラは心配を通り越して、怒っているようだ。
「リフィアにこんな顔させるなんて、許せない!」
と息巻いている。
「みんな、ありがとう」
心配かけていることと、クラスの雰囲気を悪くしていることに申し訳なく思う。
しかしこうして気にかけてくれたことに、感謝の気持ちが溢れる。
優しさが胸に沁みて、涙で瞳が潤む。
ヴァイスは少し離れた場所からリフィアを見つめている。
目が合うと、リフィアの胸が高鳴った。
ヴァイスにだけドキドキする理由・・・その答えはもう決まっていると言っていい。
リフィアはそれを恋だと自覚した。
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