僕が転生した世界で、前世の恋人が元ストーカー男と婚約していたので、命がけで阻止します。

悠木菓子

文字の大きさ
上 下
5 / 37

 5、転入生

しおりを挟む


 教師に紹介され挨拶をするのは、ヴァイス・トリガーという名前の男子生徒だ。

 とびきり美男子で女子たちがザワついている。
 つやのある銀髪、明るい青色の瞳、筋の通った鼻に濃いめの色の唇は形がよい。
 背が高く、スラリと伸びた長い足、纏う厳かな雰囲気は、女子だけでなく男子たちからも羨望の眼差しを向けられている。
 だが、彼のその唇から発する声は穏やかで、聞いている人たちを魅力するかのような安らぎと癒しを与える心地よい声だ。
 
 リフィアも彼から目が離せない。
 魅了されたわけではなく、初めて会うのになぜか懐かしさを感じているからだ。

 空いている席に移動するヴァイスを目で追いかけると、目が合った。
 その瞬間、リフィアに驚いた表情を向けてきた。

「な、何かしら?目を見開いているわ」
 リフィアはそれでもヴァイスの瞳を見つめている。
 彼の目は、何かを訴えているかのように感じるからだ。

 その瞳を知っているような気がする。
 どこかで会ったことがあるのか、知り合いに似ているのか。
 記憶がない今、自分にどんな知り合いがいるのかすらわからないが。

「リフィア」
 小声だが、叱りつけるような声だ。
 ルナントフにそう呼ばれて彼を見ると、頬杖をついて機嫌が悪そうな表情をしている。
「見すぎだよ」
「あ、すみません···」

 どうやらルナントフは、ヴァイスの魅力には全く影響されていないようだ。
 リフィアはヴァイスから目を逸らしたあとも、すっきりしない気持ちで授業を受けた。



 記憶がないリフィアは、授業に全く付いていけないだろうと思っていたが杞憂に終わった。
 どうやら、授業で習った内容は記憶があるようで、教師が話を進めていくと同時に過去の授業が甦ってきて、難なく終えることが出来た。

 休憩時間、見目麗しい転入生は早速、クラスメイトたちに囲まれている。
 ほとんどが女子生徒だ。
 たくさんの質問を投げかけられ戸惑っているように見えるが、一つ一つ丁寧に答えている。  

「彼、すっかり人気者だな」
 そう言ったルナントフの表情はやはり不機嫌だ。
 クラスメイトのほとんどがヴァイスに興味を持っているのに、彼には全くその様子がない。
「転入というのは、よくあることなのですか?」
「いや、滅多にない」
「ではみんな、転入生が珍しくて興味津々なのでしょう」

 ルナントフはリフィアの手を握る。
「リフィアも気になる?あの子たちと一緒に話しかけたい?」
 若干睨むような顔を向けてくるルナントフに、リフィアの体はビクッとした。

 一応、思っていることを正直に話す。

「そうですね・・・クラスメイトなので仲が悪いのは気まずいですし、それなりに親しく出来ればと思います」
「親しくねぇ・・・彼にはあまり近づいたら駄目だよ。会話も最低限で」

 ヴァイスを警戒するような言い方だ。
 彼を目にしてから、なぜか機嫌が悪いルナントフにリフィアは少し首を傾ける。 

「お二人は知り合いなのですか?その、あまり仲が良くないとか?」
「・・・・・・会うのは初めてだ」
 そう言って、ヴァイスを睨んだ。

 なんとなくだが、リフィアはこの二人には相容れない過去やわだかまりがあるのだろう、と感じた。

「とにかく、彼にはあまり関わらないこと。わかった?返事は?」
「はい・・・」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

こんにちは、女嫌いの旦那様!……あれ?

夕立悠理
恋愛
リミカ・ブラウンは前世の記憶があること以外は、いたって普通の伯爵令嬢だ。そんな彼女はある日、超がつくほど女嫌いで有名なチェスター・ロペス公爵と結婚することになる。  しかし、女嫌いのはずのチェスターはリミカのことを溺愛し──!? ※小説家になろう様にも掲載しています ※主人公が肉食系かも?

私はモブ嬢

愛莉
恋愛
レイン・ラグナードは思い出した。 この世界は前世で攻略したゲーム「煌めく世界であなたと」の世界だと! 私はなんと!モブだった!! 生徒Aという役もない存在。 可愛いヒロインでも麗しい悪役令嬢でもない。。 ヒロインと悪役令嬢は今日も元気に喧嘩をしておられます。 遠目でお二人を眺める私の隣には何故貴方がいらっしゃるの?第二王子。。 ちょ!私はモブなの!巻き込まないでぇ!!!!!

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?

陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。 この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。 執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め...... 剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。 本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。 小説家になろう様でも掲載中です。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

処理中です...