35 / 45
第3章 同盟
魔王の居所の件について
しおりを挟む
「勇者様勝手な判断も限度がありますわ!」
地下牢から地上へと戻って、王座の間にいる王女へ結果の伝達を行えば、彼女の怒りに触れた。
その隣では呆れ、「ほら、怒られた」と言わんばかりの表情をする種村さんの表情。
王女へと敵対心をむき出しの元囚人と化したジルがいた。
今のジルは隷属化させ、俺の奴隷であり護衛という立場を利用して連れ出した。
騎士団長も散々言われたが無理やり連れだしたのだ。
「だが、契約上において俺の行動に文句はないだろう」
「ですが、こちらもこちらなりの事情を考えてくださいませ!」
「彼女には外へと出す際はフードと仮面なりをかぶせて身分を伏せさせる。それくらいは行う予定だ」
「それでも、もしもバレた場合はどうなさるつもりですの!」
「その時は責任を取るさ。この国から出ていくなりする」
「そういう話ではありませんの!」
王女の逆鱗はとどまることを知らない。
その怒りに油を注ぐかのようにあざ笑う声。
「ギャハハ、ざまぁないぜ王女。アタイは出てやったぞ!」
「この傭兵風情が! 今すぐ叩き斬るのですノエラ!」
この時俺は初めて騎士団長の名前を知ったが彼女は身動き一つ取らない。
彼女に俺は作戦のすべての概要を離しをして承諾をしてもらっていた。
「悪いけど、騎士団長さんも俺の作戦に承諾をしてもらってるんだ。クレアス宰相だっけか。お前のいうことは全く聞かないと思うぞ」
「宰相である私に対して勇者風情が何という口の利き方を! 王女殿下、裏切者である騎士団長とこの勇者を即刻斬り伏せ――」
しばらくおいて、王女が力強く立ち上がる。
その勢いに、全員が一気に緊張を高めた。
宰相はにこやかな笑顔を向けた。
「そうです、殿下正しいご決断を」
「あなたですわ。正しい決断をするのは」
「え」
「たしかに今回は私も思うところは多々ありますわ。ですが、過去を振り返ればこのくらい大目に見るべきことですわ」
「殿下! 何を言うんですか先ほどまであなたは!」
「黙っていなさい」
この一瞬の間で彼女も何かの決断をしたように俺を睨みつけて大仰にため息をついた。
「勇者様、先ほどしっかりと責任を持つといいましたわね?」
「ああ」
「でしたら、彼女の身元が民間人へ露呈した場合は勇者様には彼女を殺す覚悟を持ってくださいますか?」
「……そういう話は予想していた。覚悟の上だ」
俺の中ではそれは予定の中に組み込まれている。
その覚悟もないのにここへと元は敵の兵士だった彼女を奴隷にして連れてくる横暴な真似はしない。
「そうした後に、俺はこの国を去るよ」
「それは我が国としては困るんです。だから先ほどそういう話ではないと言ったのがわかりませんでしたの?」
「はあ? いや、責任としてそれくらい……」
「それは我が国としては不利益を被ることになるんですわ。第一、あなたは契約として我が国を起点としてこの世界を平和へと導くことを約束いたしましたわ。でしたら、去ることは許しませんわよ」
「ははっ、なるほど。了解しましたアルナ王女殿下」
最後のほうでどうにかこちらの気持ちを汲み取った決断をしてくれたことに心から感謝をして頭を下げた。
当の宰相は納得できず、魔法で姿を消してどこかへと去った。
「はぁ、宰相に関しては私から言い聞かせますわ。彼女がいた建前上に私がああいう意見をも口にしなければならなかったことをご理解してくださいまし」
「その割に最終的には意見をくみ取った判断への急な方向転換は不自然だった気がするけどな」
「わたくし、こういうの実は苦手なんですのよ」
「そういうが俺たちを騙していたじゃないか」
「あら、またその話を掘り返すつもりですの?」
お互いにもう行動には躊躇をしないことをわかりあうかのような視線をぶつけ合う。
おのずと笑いがこぼれた。
「はぁー、びっくりしたわ。やっぱり演技だったのね」
種村さんが今までの流れを呼んでいたかのようにほっと安堵の息を零しながらぼやいた。
「ごめん。こういう建前を踏まえて交渉しないとならないからさ」
「わたくしの王女としての建前を汲み取って話を持ってきたことを最初の勇者様の顔色を窺ってすぐ察しましたわ」
「はぁー、アルナ王女も頭も役者に転職でもすればいいんじゃないかしらね。まったくもう」
呆れるため息を零しつつ、王女が話を切り出してくる。
「それで、勇者様、彼女を出したことに関しては不服でありますが承諾は致しますわ。ですが、その前に私は王女として彼女にまだ問いただした案件がございますわ。それを解決しない限り城の外へは出すことは許可できませんわ」
「おいおい、承諾しておいてそれはないだろう」
「あくまで地下牢から出すことは許可しても城の外は許可しませんわよ」
「屁理屈かよ!」
まったくもって一杯食わされた気分を味わいながらそっと隣のジルを見た。
彼女は何かを悟った様子でゲヒタ笑みを浮かべていた。
「チッ、三門芝居を見せられたあとになんだってんだい? 今すっごい気分が悪いのさ。最初からアタイを有さ歯が外に出しても良いような気持もちでいたアンタに腹が立ってるんだからねぇ」
「あら? 外へ出たかったのだから気分がよくなったらどうなんですの?」
「ふざけるんじゃないよ! アンタの口車には乗らない!」
「勇者様、今頼めるかしら? 彼女へ魔王の居場所を聞いてくださいませ」
俺は王女からの頼まれごとに目を瞬いた。
「待てよ、魔王の居場所を知らないのか?」
「ええ、そうですわよ。世界のどこにいるのか私は存じ上げていませんわ。魔王は突然としてここから南方の国へと出現しその国を滅ぼし渡り歩いている存在なんですわ」
「そういう話は最初の時に説明をしてほしかったよ……」
今更知った、魔王の出現経緯に頭を抱える。
しかし、最初から考えればよかったのだ。
あらゆる国がどうして魔王に同盟を組んで挑むことをしないのかということに。
(同盟を作ったりしないのは世界全体が喧嘩しているだけじゃなく、魔王の居場所もわからないからか。それに国が魔王に攻撃しているという話もあまりないのは出現場所が不明だということもあったのか)
ファンタジー小説とかでもよく考えると魔王の所在地は不明な時もあればわかっていてもその領域に踏み込むための強さが必要だったりする。
俺はてっきり後者のことを考えてしまっていた。
「というわけで、魔王の居場所はどこだ?」
「勇者ぁ、アンタまでそんなつまらない質問をするんじゃないよ」
「わるいけど、そっちの気持ちを汲み取ってやる気はない。王女との交渉もあるし計画をいち早く進めるために知ってるなら口を割ってくれ」
「はぁー、悟ってるだろう勇者。アタイはずっとあの地下牢で痛めつけられてその情報を吐かなかったと思うのかい?」
「それは……」
なんとなく結果は察している。
彼女はおおよそ、そのじょうほうを――
「アタイは傭兵さ。放浪する兵士。何かいい仕事の話があれば金摘みさえすればなんでだって動く。魔王の傭兵なんてやっていたけど一時的に部下になっただけに過ぎないのさ。わかるかい?」
「…………やっぱり知らないんだな。どっかの国で魔王の兵隊を名乗るやつにでも仕事の話をもらったってところか」
その話を傍で聞き耳をたてながら聞いていた王女が悩まし気な声を出す。
「本当に知らないんですの?」
「さんざんアタイを痛めつけてたようだけどねぇアタイは傭兵だよ! 魔王の傭兵なんて言うけど全員ただその場でやとわれただけに過ぎないのさ! だけどねぇ、魔王の居場所を知ってそうな奴は知ってるさ」
「それはどこの誰ですの?」
「フィレアス王国、神官様さ」
「っ!」
どうやらよほどの大物なのか王女の目が衝撃を受けたように見開いていた。
口元を抑え、歯ぎしりをする。
「やはり、あの国は通じていましたのね」
「そこまではわからないさ。でも、アタイに仕事の話を持ち込んでこの国の勇者を襲うように命じたのはソイツさ」
「本当にその話は事実だって保証はあるのかジル」
「おいおい、勇者ぁ心外な発言だなぁ。アタイは今アンタと隷属魔法で繋がれてる。勇者に不利になる嘘を告げれば死ぬんだぜ」
その言葉の重みを痛感した俺は彼女が嘘を言っていないことを信用する。
王女の反応も見るとその国が魔王の存在を隠匿していてもおかしくはなさそうな雰囲気だった。
「そのフィレアス王国ってのはどんな国なんだよ」
「フィレアス王国は貴族性の強い国で、穀物などの収入が高く他国よりも食料には困っていない国と聞きますわ。ただ、貴族制のために民間人への扱いは酷いものだとかいう話もよく耳にしますわね。特に上流貴族の悪徳な横領や他国への度重なる嫌がらせは後を絶ちませんわ」
「いやがらせ?」
「自らの兵士を他国へと忍ばせて他国の罪へと擦り付けて戦争を仕掛けさせるのですわ」
よく戦争の作戦などに用いられる戦略として耳にする方法だった。
だが、その国は彼女が語る雰囲気から察するに毎度のことでそれをうまくやっているのだろう。
「あの国は情報を盗むのではなく他国から品物を盗むことを主としていてそれを扱うのがいつも腹立たしいのですわ。我が国も何度となく被害を受けましたわ。まさか、魔王と繋がっていましたのですわね」
今すぐにでも戦争を仕掛けようとする勢いの怒りを滲ませる。
「冷静にならないといけませんわね。戦争を今は行える状況にありませんもの」
すぐに彼女は自制を利かせ、俺のほうを向いた。
「ありがとうございますわ勇者様。もう、あとは彼女をあなたの隙に使って構いませんわ。でも、くれぐれも彼女の身元がわからぬように努力をしてくださいませ」
「わかりました。そうだ、王女様そのフィレアス王国の件だが、もしかしたら後に役立てることになるかもしれない」
「どういう意味ですの? まぁ、今は話すことはできない。あと、騎士団長をしばらくお借りしていいか?」
「騎士団長をなぜですの?」
「ちょっとな」
「ノエラ、あなたは了承していますの?」
「私自身は了承済みです。私自身、勇者の作戦の全容をお聞きしまして私の力を勇者にお貸しできないかと思っています。王女殿下が許可してくださいますのならばぜひにとお願いします」
「わかりました。許可いたしますわ」
「ありがたき幸せにございます」
順調に話は進んだ。
俺は笑みを浮かべて王女へと背中を向けた。
「王女殿下、また厨房を少しお借りします」
「え」
「ちょっと、用事が又あるので。昼休みのほうは順調にやりますので問題なく大丈夫です。では」
俺は王座の間を後にその場から退室したのだった。
地下牢から地上へと戻って、王座の間にいる王女へ結果の伝達を行えば、彼女の怒りに触れた。
その隣では呆れ、「ほら、怒られた」と言わんばかりの表情をする種村さんの表情。
王女へと敵対心をむき出しの元囚人と化したジルがいた。
今のジルは隷属化させ、俺の奴隷であり護衛という立場を利用して連れ出した。
騎士団長も散々言われたが無理やり連れだしたのだ。
「だが、契約上において俺の行動に文句はないだろう」
「ですが、こちらもこちらなりの事情を考えてくださいませ!」
「彼女には外へと出す際はフードと仮面なりをかぶせて身分を伏せさせる。それくらいは行う予定だ」
「それでも、もしもバレた場合はどうなさるつもりですの!」
「その時は責任を取るさ。この国から出ていくなりする」
「そういう話ではありませんの!」
王女の逆鱗はとどまることを知らない。
その怒りに油を注ぐかのようにあざ笑う声。
「ギャハハ、ざまぁないぜ王女。アタイは出てやったぞ!」
「この傭兵風情が! 今すぐ叩き斬るのですノエラ!」
この時俺は初めて騎士団長の名前を知ったが彼女は身動き一つ取らない。
彼女に俺は作戦のすべての概要を離しをして承諾をしてもらっていた。
「悪いけど、騎士団長さんも俺の作戦に承諾をしてもらってるんだ。クレアス宰相だっけか。お前のいうことは全く聞かないと思うぞ」
「宰相である私に対して勇者風情が何という口の利き方を! 王女殿下、裏切者である騎士団長とこの勇者を即刻斬り伏せ――」
しばらくおいて、王女が力強く立ち上がる。
その勢いに、全員が一気に緊張を高めた。
宰相はにこやかな笑顔を向けた。
「そうです、殿下正しいご決断を」
「あなたですわ。正しい決断をするのは」
「え」
「たしかに今回は私も思うところは多々ありますわ。ですが、過去を振り返ればこのくらい大目に見るべきことですわ」
「殿下! 何を言うんですか先ほどまであなたは!」
「黙っていなさい」
この一瞬の間で彼女も何かの決断をしたように俺を睨みつけて大仰にため息をついた。
「勇者様、先ほどしっかりと責任を持つといいましたわね?」
「ああ」
「でしたら、彼女の身元が民間人へ露呈した場合は勇者様には彼女を殺す覚悟を持ってくださいますか?」
「……そういう話は予想していた。覚悟の上だ」
俺の中ではそれは予定の中に組み込まれている。
その覚悟もないのにここへと元は敵の兵士だった彼女を奴隷にして連れてくる横暴な真似はしない。
「そうした後に、俺はこの国を去るよ」
「それは我が国としては困るんです。だから先ほどそういう話ではないと言ったのがわかりませんでしたの?」
「はあ? いや、責任としてそれくらい……」
「それは我が国としては不利益を被ることになるんですわ。第一、あなたは契約として我が国を起点としてこの世界を平和へと導くことを約束いたしましたわ。でしたら、去ることは許しませんわよ」
「ははっ、なるほど。了解しましたアルナ王女殿下」
最後のほうでどうにかこちらの気持ちを汲み取った決断をしてくれたことに心から感謝をして頭を下げた。
当の宰相は納得できず、魔法で姿を消してどこかへと去った。
「はぁ、宰相に関しては私から言い聞かせますわ。彼女がいた建前上に私がああいう意見をも口にしなければならなかったことをご理解してくださいまし」
「その割に最終的には意見をくみ取った判断への急な方向転換は不自然だった気がするけどな」
「わたくし、こういうの実は苦手なんですのよ」
「そういうが俺たちを騙していたじゃないか」
「あら、またその話を掘り返すつもりですの?」
お互いにもう行動には躊躇をしないことをわかりあうかのような視線をぶつけ合う。
おのずと笑いがこぼれた。
「はぁー、びっくりしたわ。やっぱり演技だったのね」
種村さんが今までの流れを呼んでいたかのようにほっと安堵の息を零しながらぼやいた。
「ごめん。こういう建前を踏まえて交渉しないとならないからさ」
「わたくしの王女としての建前を汲み取って話を持ってきたことを最初の勇者様の顔色を窺ってすぐ察しましたわ」
「はぁー、アルナ王女も頭も役者に転職でもすればいいんじゃないかしらね。まったくもう」
呆れるため息を零しつつ、王女が話を切り出してくる。
「それで、勇者様、彼女を出したことに関しては不服でありますが承諾は致しますわ。ですが、その前に私は王女として彼女にまだ問いただした案件がございますわ。それを解決しない限り城の外へは出すことは許可できませんわ」
「おいおい、承諾しておいてそれはないだろう」
「あくまで地下牢から出すことは許可しても城の外は許可しませんわよ」
「屁理屈かよ!」
まったくもって一杯食わされた気分を味わいながらそっと隣のジルを見た。
彼女は何かを悟った様子でゲヒタ笑みを浮かべていた。
「チッ、三門芝居を見せられたあとになんだってんだい? 今すっごい気分が悪いのさ。最初からアタイを有さ歯が外に出しても良いような気持もちでいたアンタに腹が立ってるんだからねぇ」
「あら? 外へ出たかったのだから気分がよくなったらどうなんですの?」
「ふざけるんじゃないよ! アンタの口車には乗らない!」
「勇者様、今頼めるかしら? 彼女へ魔王の居場所を聞いてくださいませ」
俺は王女からの頼まれごとに目を瞬いた。
「待てよ、魔王の居場所を知らないのか?」
「ええ、そうですわよ。世界のどこにいるのか私は存じ上げていませんわ。魔王は突然としてここから南方の国へと出現しその国を滅ぼし渡り歩いている存在なんですわ」
「そういう話は最初の時に説明をしてほしかったよ……」
今更知った、魔王の出現経緯に頭を抱える。
しかし、最初から考えればよかったのだ。
あらゆる国がどうして魔王に同盟を組んで挑むことをしないのかということに。
(同盟を作ったりしないのは世界全体が喧嘩しているだけじゃなく、魔王の居場所もわからないからか。それに国が魔王に攻撃しているという話もあまりないのは出現場所が不明だということもあったのか)
ファンタジー小説とかでもよく考えると魔王の所在地は不明な時もあればわかっていてもその領域に踏み込むための強さが必要だったりする。
俺はてっきり後者のことを考えてしまっていた。
「というわけで、魔王の居場所はどこだ?」
「勇者ぁ、アンタまでそんなつまらない質問をするんじゃないよ」
「わるいけど、そっちの気持ちを汲み取ってやる気はない。王女との交渉もあるし計画をいち早く進めるために知ってるなら口を割ってくれ」
「はぁー、悟ってるだろう勇者。アタイはずっとあの地下牢で痛めつけられてその情報を吐かなかったと思うのかい?」
「それは……」
なんとなく結果は察している。
彼女はおおよそ、そのじょうほうを――
「アタイは傭兵さ。放浪する兵士。何かいい仕事の話があれば金摘みさえすればなんでだって動く。魔王の傭兵なんてやっていたけど一時的に部下になっただけに過ぎないのさ。わかるかい?」
「…………やっぱり知らないんだな。どっかの国で魔王の兵隊を名乗るやつにでも仕事の話をもらったってところか」
その話を傍で聞き耳をたてながら聞いていた王女が悩まし気な声を出す。
「本当に知らないんですの?」
「さんざんアタイを痛めつけてたようだけどねぇアタイは傭兵だよ! 魔王の傭兵なんて言うけど全員ただその場でやとわれただけに過ぎないのさ! だけどねぇ、魔王の居場所を知ってそうな奴は知ってるさ」
「それはどこの誰ですの?」
「フィレアス王国、神官様さ」
「っ!」
どうやらよほどの大物なのか王女の目が衝撃を受けたように見開いていた。
口元を抑え、歯ぎしりをする。
「やはり、あの国は通じていましたのね」
「そこまではわからないさ。でも、アタイに仕事の話を持ち込んでこの国の勇者を襲うように命じたのはソイツさ」
「本当にその話は事実だって保証はあるのかジル」
「おいおい、勇者ぁ心外な発言だなぁ。アタイは今アンタと隷属魔法で繋がれてる。勇者に不利になる嘘を告げれば死ぬんだぜ」
その言葉の重みを痛感した俺は彼女が嘘を言っていないことを信用する。
王女の反応も見るとその国が魔王の存在を隠匿していてもおかしくはなさそうな雰囲気だった。
「そのフィレアス王国ってのはどんな国なんだよ」
「フィレアス王国は貴族性の強い国で、穀物などの収入が高く他国よりも食料には困っていない国と聞きますわ。ただ、貴族制のために民間人への扱いは酷いものだとかいう話もよく耳にしますわね。特に上流貴族の悪徳な横領や他国への度重なる嫌がらせは後を絶ちませんわ」
「いやがらせ?」
「自らの兵士を他国へと忍ばせて他国の罪へと擦り付けて戦争を仕掛けさせるのですわ」
よく戦争の作戦などに用いられる戦略として耳にする方法だった。
だが、その国は彼女が語る雰囲気から察するに毎度のことでそれをうまくやっているのだろう。
「あの国は情報を盗むのではなく他国から品物を盗むことを主としていてそれを扱うのがいつも腹立たしいのですわ。我が国も何度となく被害を受けましたわ。まさか、魔王と繋がっていましたのですわね」
今すぐにでも戦争を仕掛けようとする勢いの怒りを滲ませる。
「冷静にならないといけませんわね。戦争を今は行える状況にありませんもの」
すぐに彼女は自制を利かせ、俺のほうを向いた。
「ありがとうございますわ勇者様。もう、あとは彼女をあなたの隙に使って構いませんわ。でも、くれぐれも彼女の身元がわからぬように努力をしてくださいませ」
「わかりました。そうだ、王女様そのフィレアス王国の件だが、もしかしたら後に役立てることになるかもしれない」
「どういう意味ですの? まぁ、今は話すことはできない。あと、騎士団長をしばらくお借りしていいか?」
「騎士団長をなぜですの?」
「ちょっとな」
「ノエラ、あなたは了承していますの?」
「私自身は了承済みです。私自身、勇者の作戦の全容をお聞きしまして私の力を勇者にお貸しできないかと思っています。王女殿下が許可してくださいますのならばぜひにとお願いします」
「わかりました。許可いたしますわ」
「ありがたき幸せにございます」
順調に話は進んだ。
俺は笑みを浮かべて王女へと背中を向けた。
「王女殿下、また厨房を少しお借りします」
「え」
「ちょっと、用事が又あるので。昼休みのほうは順調にやりますので問題なく大丈夫です。では」
俺は王座の間を後にその場から退室したのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!
コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。
何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。
本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。
何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉
何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼
※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。
#更新は不定期になりそう
#一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……)
#感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?)
#頑張るので、暖かく見守ってください笑
#誤字脱字があれば指摘お願いします!
#いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃)
#チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる