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第2章 最初の開拓

契約の破綻と勇者召喚の真相

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 あれから俺らは場所を移動して王座の間に来ていた。 

「そんなの許可できませんわ!」

 あの申し出に王女殿下から返ってきたのは了承の言葉とは真逆の拒否だったのだ。
 それは契約は気にもつながるような言葉だけれども彼女にも心意があっての物言いだと俺は察せられた。
 だけれども、種村さんは察している節を見せていても突っかかる。

「どうしてなのですか王女殿下? 契約したはず。それを放棄することは信頼性を問うけど」
「うぐっ……。わたくしの不徳の致すところでもありますわ。ですが、説明をさせてくださるかしら?」

 王女は深呼吸をして、手元にあるスープを飲みながら言われても説得力皆無なのだけれども彼女は続けた。

「最初、ぶんかのかいかくという言葉がどういうものなのか理解をしていませんでしたわ。でも、このように新たなものを生み出していく行為がそのことにつながるとしたらそれはこの国の危機につながる恐れがありますわ」
「どういう意味ですか?」
「これは世界を大きく揺るがす行動になる。この国を起点に多くの市民たちがこの味を求めて国へと来るでしょう。中にはその味、調理法を知るために他国から戦争を仕掛けてくる悪人もいるかもしれませんわ」
「そんな馬鹿なこと……」
「勇者様方は身をもって経験しましたでしょう。勇者という存在を私が召喚しただけで闇ギルドに潜伏していた魔王の配下があなた方を狙ったことを」

 言われてみて気づいた。
 この世界は『新しいこと』に対して恐怖している。
 国は何かを取り入れていかないと発展しないものだ。
 文明とはそうした変化で成り立ってきた。
 だが、この世界はそれを恐れて文明開化していかなかったのか。
 同時に文明開化を使用ともするが結局は戦争で成り上がってきた世界には戦争から始まって略奪行為へとつながる。

「なんて世界に来てしまったの……」

 その言葉を聞いてなんとなく状況理解の根幹を察した種村さんは額を抑えた。

「あの、この国は一番の魔法が栄えてる国なんですよね? それはどうやって反映していったんですか?」

 俺はまずはそこの議題へとぶつかってみた。
 文明開化が完全になかったとは思えない。
 この世界にはしっかりと戦争の道具となるような技術や生活面の発展と変化はわずかにあったはずなのだ。

「そ、それはこの世界において昔に召喚された勇者による行いがこの国にあったからですわ」
「昔の勇者……」

 種村さんから話をされて聞かされたこの世界イシュラナの歴史を思い出した。
 召喚された最初の勇者の伝説。
 あらゆる国へと文化を導いた勇者。

「遠い過去の話ですわ。ワタクシも先代から伝え聞いた程度の知識でしかありませんわ。その勇者はこの国へと魔法を使用したあらゆる道具の作り方を教えてくださいましたわって説明いたしませんでしたか?」
「あー、聞いたような聞いていないようなぁ……あはは」

 背後から威圧を感じるがそれさえも俺にはご褒美。
 愛するアイドル声優からの睨みとかファンにとってはいいものだ。
 目の前のアルナ王女は険しい顔をしていながら説明をつづけた

「その伝え聞いた魔法の能力を生かして応用していった結果がいまですわ。ですが、この国では道具と建造物しか見どころがないのもまた事実ですわね」

 俺はその説明にどことなく違和感を感じた。
 なんだろう、この感じ。
 疑問符を浮かべてると、王女が尋ねる。

「以上で何かありますか?」
「そうですね。たとえば、その魔法を応用していった際に技術が発展したと思うんですがそれはどうやって隠してきたんですか?」

 何かしらで伏せてきているはずなのだ。
 魔法の技術力に発展はあったという証明を彼女は口にした。
 であるのだとすれば、他国が目をつけていないはずがなかった。

「大変申し上げにくいのですが、応用としましてもそれは微々たるものですわ。ですので、他国はあまり気にはかけていなかったようですわ。ですが、今回は勇者召喚という技術を私たちは行おうとしましたわ。その魔法の技術と勇者を拉致しようと戦争が起こった次第ですわ」
「そういうことか……」

 過去の技術ではさほど他国には影響はないと判断していた。
 他国ではたぶん有力ではないと思っていたのだ。
 だが、イスア国は突然として大きな力に手を伸ばし、拡大していく魔王一派に終止符を打つ行動を起こしてしまった。
 それゆえに戦争を発展する。

「なぜ、こんなタイミングで魔王を打倒しようと考えたのですか? たしかに強大な魔王がいるのはわかりましたが別に魔王は何かをしなければ行動を起こさなかったわけですよね? いくら彼らが暴れていたとしても穏便にすれば……」
「…………」

 アルナ王女は何かを必要に隠している。
 最初の召喚時から受けていた説明と大きく食い違うような感覚をここ数日で感じていた。
 確かに戦争はあるというのもわかった。
 だけれども、戦争を互いに率先して勃発しているわけではない。
 領土戦争の話の真偽は不明だけれども、技術の略奪戦争があるというのは真実味はある。
 
 何を彼女は隠しているというのだろうか。

「わかりましたわ。お話をしますわ」
「殿下!」

 近くにいた騎士数名とお仕えの神官長が心配そうな声を上げた。

「わが国には魔道路があると申しましたことは覚えていますか?」
「ええ、聞きました」
「最近になって魔王が出現したと同時に我が国は平気でしたが他の国ではその魔道路が停止をしたのですわ」
「え……じゃあ、それは……」
「そうです。魔道路は他国では停止し、困窮を極めております。そして、魔道路が無事な国を狙い戦争を今は初めていますの」
「魔道路が無事な国? それって……え?」

 つまりはこの国も該当していたように聞こえた。

「わが国は魔王の侵入に実は気づいていましたわ」
「はあ? おい、それってどういう意味だよ」

 すると種村さんが横を通り、すごい足早に王女へ向かう。
 王族の騎士たちが彼女の前に立ちはだかる。

「種村様、何をするつもりですか!」
「そこをどいて! 今の話ですべて合点がいった。あなた私たちを利用したのね」
「…………」

 王女は答えず奥歯を噛み締めた。
 ぼろぼろと涙を流すと続けた。

「はい。いくつかの国では魔道路が無事でしたわ。ですが、魔道路が無事な国は次から次へと他国と争い魔道路を失いましたわ。その戦争にいち早く我が国も撤退するべくある策を思いついたのですわ」
「まさか……」

 俺はその作戦がわかってしまった。
 勇者召喚、都合よく表れた魔王の兵士、壊れたと思われる魔道路、実は行われていた魔道路の戦争。
 彼女は、イスア国は勇者を――

「俺らを召喚して、魔王の兵と争わせ魔道路を壊されたと思わせたのか……。他国と戦争をしないために……」

 彼女は大粒の涙を流しながらたった一言「すみませんでしたわ」といった。
 だが、種村さんは怒り狂い、その場の流れで最初の食文化の発展はご破算となった。




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