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第1章 異世界の勇者

届いた歌

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  この国の人々の視線が私へと注目が集まっているのを肌身で感じ取れた。
 見てくれていることに高揚する。
 ある時期から、私は声を歌を届けてみんなが楽しそうにする笑顔が好きになっていた。
 最初の頃、声優と仕事に明け暮れて闇の営業で圧力を上から掛けられた時に絶望した。
 あの事件が起こった。
 そんな時に私は一人の男の人に救われた。
 その時の救ってくれた男性の服装は馬鹿らしいほどにも笑ってしまう。
 だって、私の演じたキャラの衣服を着込んでいてあまりにもダサイという表現が正しかった。
 だけど、私は笑顔と勇気をもらえてアイドル声優としての道を大きく開けていった。
 歌唱力に目覚め、みんなへと歌を届けることが自分の力にもなっていたあの時の高揚感。
 そんなときに私は好きになった。
 今、まさに歌へ目覚めた時の初心の気持ちになっている。

「ぐぉおおおおお」

 目の前で騎士たちが退治しようとしている元はジルという女の姿をしていた赤いドラゴンがもだえ苦しんでいる。
 まるで、自分の歌に反応しているのか。
 周囲の人たちからはまるで光のオーラが放出されていた。

(何これ……私の歌が引き起こしているの?)

 人々の目は私に奇異の目だったけれども、それは良い方向での視線。
 敵のドラゴンに対しては苦しみを与える。
 誰かが言った。

「女神様だ……」

 笑ってしまうくらいの言葉。
 女神なんて不釣り合いすぎる大きな名称。
 私はサビに強調性をつける。

(どうにか彼に歌が届いて)

 本来の目的はまだ達成できなかった。
 どんなに歌を頑張っても彼が出てくることはない。
 声に張りを利かせてさらにみんなへと熱い歌を届けていく。
 だが、その行為が赤いドラゴンに火種をつけた。
 赤いドラゴンがこちらを向いて大きな尻尾を振るいだしたのだ。

「っ!」

 声も一瞬止まりかける。
 その時、奇跡は起こった。
 瓦礫の山からあふれ出してくる発光。
 光の奔流の柱が天を突き破った。
 それはまるで生き物のように動いて背後からレッドドラゴンを襲撃した。

「ギャァアアアアアアアィ!」

 レッドドラゴンがうつ伏せに倒れていく。
 そのドラゴンの背中へ一人の青年の姿があった。

「おいおい、ライブ中のマナーが悪いのはいけないなジルさんよ」

 私は届いたと確信をもって涙を流しながら歌をつづけた。
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