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プロローグ
プロローグ3
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森の中でユイカは小さな手作りの墓を作っていた。
砂山を作りその上に石をのせる。
殺されてしまった愛しき友人でペットだった犬の墓だ。
彼女は涙を流しながら何度も謝った。
自分がこんな姿だから。
自分がひろわなければ。
自分が彼女を信頼しなければ。
罪悪感は止まらなく、嗚咽をもらした。
悲しみに浸り続けることを神様は許さないように近くで足音が聞こえてきた。
「この辺で目撃されたって言ってたな」
「本当にいるのか?」
警官が二人近づいてくるのを目撃する。
ユイカは近くの木陰に身を隠した。
警官が二人通り過ぎていくのを待った。
ドキドキと心臓が早鐘をうつ。
「おい、こっちで人影があったらしいぞ」
遠くで警官の一人の呼びかけに近くにいた二人の警官が応じて移動を始めた。
ユイカは遠ざかった二人に安堵した。
「どこか、寝床を探さなくてはな」
深夜にユイカは一件の民家の中でテレビを見ながら食事をしていた。
食事といっても冷蔵庫のモノを勝手にあさり食べているにすぎない。
昨日の残りものだろうか。
冷たいが悪くはない味だった。
もそもそと口を動かしながら食べ続ける。
テレビでは養護施設で起こった惨殺事件を取り上げていた。
『昨夜未明に起こった、養護施設惨殺事件ですが以前、犯人の詳細はつかめず捜査は難航している模様です』
だが、ニュースは施設から一人逃亡した少女の所在を警察が追跡中だと発表した。
ユイカは苦虫をかみつぶした顔をしながらまた明日移動を始めないといけないと思った。
足元にある血だまりを踏みしめながら。
逃亡から数日。
いろんな家を転々としながら、日中にユイカは森に来て座り込み膝を抱え身を縮こまらせていた。
日中の移動は基本的にできない。
警察が見つけてしまうかもしれない。
だからこそ、日中は森の中で過ごすのが日課になっていた。
そうして、この日だけは違った。
何者かの気配がそばから感じ取った。
この森は普段は人が来ないことは調査済みだ。
ユイカは力の解放を行ったがその手をストップさせた。
ユイカより少し上くらいの少年だった。
「君、こんなところでなにしてんの?」
「…………」
おもわず呆気にとられた。
普段、自分を見たらすぐに誰もが驚いて逃げるか悲鳴を上げるかするはずが目の前の少年はそのどれでもなかった。
恐怖を抱かず、興味を示したように自分がここで何をしているかと聞いてきた。
ユイカはそれが無性に気に入らず投げやりに返す。
「お前に関係ないだろう」
「ねぇ、その頭のツノって本物?」
ビクリと肩を震わせる。
やはり、コイツも同じか。
ユイカは殺そうと思った。
周囲にばれる前に殺す。
「かっこいいね、その角」
「なに……」
意外な言葉に殺気がそがれた。
「触ってもいいかな」
彼の手が伸びてきてその手を振り払い拒絶する。
「私に触れるな!」
「あ、ごめん。怒らせる気はなかったんだ」
「おまえ私が怖くないのか?」
「え」
「こんな角を生やしているんだぞ」
「怖くないよ。むしろかっこよくて羨ましい」
ユイカは思わず肩透かしを食らう。
なんなんだ、この男。
すると、少年は手にしていた電話に気付いて慌てて出る。
電話先では少年を心配する人の声が聞こえる。
ユイカとは違う。
彼には家族がいるのだ。
「あ、ごめん。僕戻らないと」
「…………」
ユイカが悲しそうな顔をしていると少年は笑いかけた。
「また、明日も来るよ。ここでまた会える?」
「え」
「今度は遊ぼうよ」
「ッ」
ユイカは初めて遊びに誘われて動揺する。
少年はにこやかに手を振りながら森の抜け道をたどって走っていった。
ユイカは笑みが初めてこぼれていた。
砂山を作りその上に石をのせる。
殺されてしまった愛しき友人でペットだった犬の墓だ。
彼女は涙を流しながら何度も謝った。
自分がこんな姿だから。
自分がひろわなければ。
自分が彼女を信頼しなければ。
罪悪感は止まらなく、嗚咽をもらした。
悲しみに浸り続けることを神様は許さないように近くで足音が聞こえてきた。
「この辺で目撃されたって言ってたな」
「本当にいるのか?」
警官が二人近づいてくるのを目撃する。
ユイカは近くの木陰に身を隠した。
警官が二人通り過ぎていくのを待った。
ドキドキと心臓が早鐘をうつ。
「おい、こっちで人影があったらしいぞ」
遠くで警官の一人の呼びかけに近くにいた二人の警官が応じて移動を始めた。
ユイカは遠ざかった二人に安堵した。
「どこか、寝床を探さなくてはな」
深夜にユイカは一件の民家の中でテレビを見ながら食事をしていた。
食事といっても冷蔵庫のモノを勝手にあさり食べているにすぎない。
昨日の残りものだろうか。
冷たいが悪くはない味だった。
もそもそと口を動かしながら食べ続ける。
テレビでは養護施設で起こった惨殺事件を取り上げていた。
『昨夜未明に起こった、養護施設惨殺事件ですが以前、犯人の詳細はつかめず捜査は難航している模様です』
だが、ニュースは施設から一人逃亡した少女の所在を警察が追跡中だと発表した。
ユイカは苦虫をかみつぶした顔をしながらまた明日移動を始めないといけないと思った。
足元にある血だまりを踏みしめながら。
逃亡から数日。
いろんな家を転々としながら、日中にユイカは森に来て座り込み膝を抱え身を縮こまらせていた。
日中の移動は基本的にできない。
警察が見つけてしまうかもしれない。
だからこそ、日中は森の中で過ごすのが日課になっていた。
そうして、この日だけは違った。
何者かの気配がそばから感じ取った。
この森は普段は人が来ないことは調査済みだ。
ユイカは力の解放を行ったがその手をストップさせた。
ユイカより少し上くらいの少年だった。
「君、こんなところでなにしてんの?」
「…………」
おもわず呆気にとられた。
普段、自分を見たらすぐに誰もが驚いて逃げるか悲鳴を上げるかするはずが目の前の少年はそのどれでもなかった。
恐怖を抱かず、興味を示したように自分がここで何をしているかと聞いてきた。
ユイカはそれが無性に気に入らず投げやりに返す。
「お前に関係ないだろう」
「ねぇ、その頭のツノって本物?」
ビクリと肩を震わせる。
やはり、コイツも同じか。
ユイカは殺そうと思った。
周囲にばれる前に殺す。
「かっこいいね、その角」
「なに……」
意外な言葉に殺気がそがれた。
「触ってもいいかな」
彼の手が伸びてきてその手を振り払い拒絶する。
「私に触れるな!」
「あ、ごめん。怒らせる気はなかったんだ」
「おまえ私が怖くないのか?」
「え」
「こんな角を生やしているんだぞ」
「怖くないよ。むしろかっこよくて羨ましい」
ユイカは思わず肩透かしを食らう。
なんなんだ、この男。
すると、少年は手にしていた電話に気付いて慌てて出る。
電話先では少年を心配する人の声が聞こえる。
ユイカとは違う。
彼には家族がいるのだ。
「あ、ごめん。僕戻らないと」
「…………」
ユイカが悲しそうな顔をしていると少年は笑いかけた。
「また、明日も来るよ。ここでまた会える?」
「え」
「今度は遊ぼうよ」
「ッ」
ユイカは初めて遊びに誘われて動揺する。
少年はにこやかに手を振りながら森の抜け道をたどって走っていった。
ユイカは笑みが初めてこぼれていた。
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