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プロローグ
プロローグ1
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うすぼんやりとした視界を開け、少女のユイカは目の前の保母さんを見た。
自分をベットの上に寝かせて看病をしてくれている彼女の眼はどことなく自分を毛嫌いしているように見える。
まるで、普通とは違う自分に怯えているように。
保母が部屋へ出れば、部屋の扉越しに聞こえてくる会話。
「やっぱりあの子薄気味悪いわ」
「そうよね」
「それに、あの目に額の角」
「あの子の親も余計なことをしてくれたわよね」
自分を蔑む彼女たちの声に耳をふさぎたくなる。
ユイカがいるのは養護施設『紫荘』。
多くの親に見捨てられた子供たちを引き取り世話をしてくれている。
ユイカもここで暮らしてもう3年近い。
親の顔などもううろ覚えである。
ユイカにとってはあまりい親だった印象はない。
ただ、憐れにみる顔だけが母親の唯一の印象ある記憶。
目を必死で瞑って何もかも忘れるように、聞こえないように眠る。
――そして、次の日の授業。
自分のかばんが牛乳まみれになっていた。
「うっわ、なんだよお前それ」
「くっさ牛乳まみれジャン」
「ぎゃははは」
周囲の同郷の者たちが自分を蔑むように罵倒を浴びせる。
いつものことにユイカは何も思わない。
ああ、コイツらがまた。
「これ、お前らがやったんだろ」
「はあ? どこにしょうこがあるんですかー?」
「お前ら以外に誰がいる」
「うっわ、俺たち心配してんのに」
どこが心配をしているというのか。
ただ、罵ることしかしていないこと。
何よりもそれが証拠じゃないか。
「先生! また庄君たちがユイカちゃんをいじめています!」
教室へ一人の少女が先生を呼びながら入ってくる。
彼女もまた自分と同じこの施設の同郷のモノだ。
少年たちは慌てるように少女を突き飛ばし逃げ出していった。
「ユイカちゃん平気?」
「………」
「うわ、牛乳まみれだね」
ユイカのかばんに手を伸ばす彼女。
自分のモノに触れるな。
そう思い、カバンを抱えて教室を飛び出した。
だが、彼女は追いかけてきて捕まった。
彼女は雑巾をとってくるといい、とってきた雑巾でカバンの牛乳を搾り取っていく。
「これで大丈夫。匂いは残るけど見た目は平気だよ」
「……ありがとう」
「うん、どういたしまして」
この施設で初めて信用してもいいかもと思える親友ができたかもしれなかった。
だが、彼女のやさしさも結局はウソだったのだと後に知ることになるとはこの時のユイカは思わなかった。
自分をベットの上に寝かせて看病をしてくれている彼女の眼はどことなく自分を毛嫌いしているように見える。
まるで、普通とは違う自分に怯えているように。
保母が部屋へ出れば、部屋の扉越しに聞こえてくる会話。
「やっぱりあの子薄気味悪いわ」
「そうよね」
「それに、あの目に額の角」
「あの子の親も余計なことをしてくれたわよね」
自分を蔑む彼女たちの声に耳をふさぎたくなる。
ユイカがいるのは養護施設『紫荘』。
多くの親に見捨てられた子供たちを引き取り世話をしてくれている。
ユイカもここで暮らしてもう3年近い。
親の顔などもううろ覚えである。
ユイカにとってはあまりい親だった印象はない。
ただ、憐れにみる顔だけが母親の唯一の印象ある記憶。
目を必死で瞑って何もかも忘れるように、聞こえないように眠る。
――そして、次の日の授業。
自分のかばんが牛乳まみれになっていた。
「うっわ、なんだよお前それ」
「くっさ牛乳まみれジャン」
「ぎゃははは」
周囲の同郷の者たちが自分を蔑むように罵倒を浴びせる。
いつものことにユイカは何も思わない。
ああ、コイツらがまた。
「これ、お前らがやったんだろ」
「はあ? どこにしょうこがあるんですかー?」
「お前ら以外に誰がいる」
「うっわ、俺たち心配してんのに」
どこが心配をしているというのか。
ただ、罵ることしかしていないこと。
何よりもそれが証拠じゃないか。
「先生! また庄君たちがユイカちゃんをいじめています!」
教室へ一人の少女が先生を呼びながら入ってくる。
彼女もまた自分と同じこの施設の同郷のモノだ。
少年たちは慌てるように少女を突き飛ばし逃げ出していった。
「ユイカちゃん平気?」
「………」
「うわ、牛乳まみれだね」
ユイカのかばんに手を伸ばす彼女。
自分のモノに触れるな。
そう思い、カバンを抱えて教室を飛び出した。
だが、彼女は追いかけてきて捕まった。
彼女は雑巾をとってくるといい、とってきた雑巾でカバンの牛乳を搾り取っていく。
「これで大丈夫。匂いは残るけど見た目は平気だよ」
「……ありがとう」
「うん、どういたしまして」
この施設で初めて信用してもいいかもと思える親友ができたかもしれなかった。
だが、彼女のやさしさも結局はウソだったのだと後に知ることになるとはこの時のユイカは思わなかった。
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