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第三十三話 大阪、京都編 【2】

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「華ねぇ…な訳ないよ。ない。ない。ない。絶対ない!」

 快と呼ばれた青年は、そう自分に言い聞かせる。

「お前が動揺したの、初めて見たんだけど!すげー!従姉さんの影響力!」

 彼の友人は、驚きを隠せない様子だが、それよりも、彼の方が様子がおかしい。

「華ねぇじゃない…ない。ない。…はず。
なんで、こんなそっくりさんがいるんだ?
愛おしすぎて、幻覚が!?」

 そこに追い打ちをかけるように、こちらへ向かってくる、華達一行。
 そして、すれ違いざまに…
–––快と呼ばれた青年は、次の瞬間絶句する。

「…、好き?」

と、蓮。

「大好き!」

と、華。

「そっか!僕も同じく大好き!でっ、超尊い!」

「同感ねっ!」

 ラブラブな会話、と、彼の目には写ってしまったらしい。彼は明らかに不機嫌になる。そして、友人が火に油を注ぐ言葉をつぶやいてしまう。

「うわー…完全なるカレカノ感!知らないところで、こんな事になるもんなんだな。」

「だれ?」

「はい?」

 彼の唐突な問いに、友人は思わず聞き返してしまう。

「だから、華ねぇの隣にいた奴!」

「え…流石の俺のデータベースにもないわ…
ん?あの顔…どっかで…」

「どこで?」

「あ、どっかの御曹司だ!
 そこらへんだったら、お前の方が知ってんじゃねーの?快御坊ちゃま。」

「御坊ちゃまって、言ったら殺すぞ。
…御曹司?誰だ?」



!ホテル着いたら、自由時間だよね?」

「うん。そうだね!華ちゃん、どこか行きたいの?」

「ううん。今日はゆっくり、まったり。
…出来れば一緒にいてくれればなぁ、と思って。」

 頬を赤らめてながら、そう告げた華に、蓮が華の頭をクシャクシャ撫でて、微笑む。

「もちろん、僕はそのつもりだったんだけど、ね?」

「ま、まあ、衣装合わせとかもあるしね!」

「ふふ、そうだね。」

 リア充真っ盛りの二人を睨む、薫と…


「れん…音嶺?音嶺蓮!」

 不意に名前を呼ばれて振り返る蓮。

「え?誰?僕の名前呼んだの。」

 薫はビクッとしたそぶりを見せる。

「ま、まさか、嫌すぎて幻聴が…!」

「幻聴じゃないよ!クソ薫!」

 そう言って、薫だけを引っ張り出して、物陰に隠れる、青年と薫。

「なんでお前がこんな所にいるんだ!?」

「そんな事どうでもいい!アイツ…音嶺蓮…華ねぇとどう言う関係なの?」

「知るか!こっちが聞きたいわ!」

「本当に使えないね。クソ薫は。」

「うっせー!いつから俺がお前のパシリになったんだよ!」

「もういい。んで、今日の予定は?」

「は?」

「だから!旅行なんでしょ?だったら、どこ行くの?どこに泊まるの?」

 薫はその問いに驚く。

「え…お前、爽から聞いてねぇーの?今日と明日泊まる所は、【快華爽】だぞ。」

 それを聞いた青年は、驚きの表情を見せるとともに、だんだんとその目に怒りが募ってくる。

「は?…え?嘘…
 あの、自意識過剰オネェが!なんで言わないんだよ!クソ薫、あとで、音嶺蓮と華ねぇの関係性、じっくり教えろよ!今は一旦釈放だ。」

  そう言って、青年は薫の膝をやや強く蹴る。

「痛ってーな!なんでこんな奴が、可愛がられるんだか…」

「うっさい、さっさと行け!」

 さっさと怒りながら帰った薫を、一目見た後、青年はスマートフォンを、手にする。

「怒鳴りつけてやる。あの自意識過剰オネェに。」

  そういうと、青年は[爽]と書かれた相手に電話をする。


『はーいっ。もしもしぃ、快くん!珍しいわね、なんかあった…』

「大アリだよ!自意識過剰オネェが! 」

『あら?いきなり誹謗中傷とは、聞き捨てならないわね。なんか気にくわない事でも?』

「なんで、教えてくれなかったんだよ!」

『主語がないから分からないのだけれど。』

「だ、か、ら!華ねぇと、クソ薫たちの学校が、俺たちのホテルにくるって…」

『言ったわよ。アンタが聞いてなかっただけじゃない。まあ、聞いてないなぁとは、思っていたけれど。』

「そんなら!」

『でも、そっちの方が面白そうじゃない!快くんが怒ったのを見れられるなんて…いいネタになるじゃない!』

「何でもかんでものネタにするな!」

『ごめんごめんて。今、折角、ちゃんと君のきゅんきゅんシーンだったのに。やーめよ。』

「やだ。許す。」

『はいよくできました!いいじゃないの。折角はーちゃんに会えるんだから。良い機会じゃないの?』

「うん。ばいばい。」

『素直でよろしい!バイバイね!
 …ほんと、楽しみ。』

「なんか言った?」

『ううん。何にも。バイバイね!』


  この旅行、波乱の予感。
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