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7本目 あの日の女子バスケットボール部
信頼 7-5
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「正直さ、ずっと我慢してるんだ……」
「あ、うん……そうだよね……ゴメン……」
男子の性欲については、それなりに分かっているつもりだったし、友達からも聞いていた。しばらくその気にならなかったので相手をしないでいたら浮気されたとか、逆に体をご褒美にすれば男はコントロールできるとか、そういう話も。
初体験をして以来その気になれないという成美を、健一は理解してくれていた。もう、二人でいても強引に迫ったりすることはない。
それでいて、成美への興味を失う様子は全くなかった。
彼女の事情を、また女性のことを、理解してくれない部分はある。意見が合わないことも多い。
しかし、成美のことを一途に想ってくれていることに関しては、彼女は疑っていなかった。
それさえあれば、あとは一緒に色々と経験して、話し合って、次第に変わっていくことはできると成美は思っていた。
少なくとも、クラスの友達があてがおうとしていた見も知らぬ男たちと寝るくらいなら、健一に対して譲れるところは譲り、我慢できるところは我慢している方が、遥かに幸せになれそうだった。
だからその時も、驚きはしたものの、そんなことまで正直に相談してくれるということに悪い気はしなかった。
「いや、だから何かさせてくれって話じゃない。成美がいいと思うまで今は待つ。たださ……」
実際問題として、成美のことを考えて自分で処理しているのだと彼は言った。
しかしやはり、恋人と一度は経験したにもかかわらず、想像だけで慰めている今の自分は何なのだろうかと虚しく感じる時もあると。
「だから、できたら……成美を感じられるような物を貸してもらうことって、できないか?」
「感じられる物?」
「他の男には触らせないような、彼氏として認めてくれてるって確認できるような……身に着ける物とかさ」
「何それ? ……ハンカチ、とか?」
「いや、まあ方向性としてはそういうことなんだけどさ。使い道から考えて、つまりハッキリ言えばだな……下着とか……」
「はぁ!? ば、バッカじゃないの? 何言ってんの? 下着って……使ったやつ?」
「新品じゃお前のものとはいえないだろ……洗濯は、まあ、してあってもいいけど」
「当たり前でしょ!?」
下着は、無理だった。
ただ、これでもなお性に関しては健一の方が譲歩してくれていると思っていたし、他の女性の写真や動画などを使われるのも癪だった。
だから中学の授業で使っていた水着を渡した。汚れはないし、もう着ることもない。肌が直に触れていた、性を意識させる、身に着ける物だ。
中1の時に母に頼んで、肩の部分に印を縫い付けてもらってあった。今となっては恥ずかしい気もするが、当時はこんなものにも自分だけの特別感が欲しかったのだ。母は器用に、元からそういう製品であるかのように、成美だけの印を縫ってくれた。
健一は喜んで受け取って……その夜の成美は、カーテンの向こう側が気になって仕方がなかった。
●
翌週、部室で香織と翠からスマートフォンの画面を見せられた。
肩の所に印の付いた、成美の水着。それが見知らぬ女性の体と一緒に写っていた。
「どうして……?」
顔は写っていない、仰向けの裸の女性。その胸から股にかけて、ちょうど温泉などに行った時にタオルで隠すように、水着が覆っていた。脚を通して着てはおらず、体の前に当てている。他人の水着を実際に着ることにはさすがに抵抗があったのか、その豊満な体がそもそも収まらなかったのか。
「どうして……!?」
紺色の生地の表面には白い粘液が飛び散って、その周りは色が変わっていた。
成美は顔を覆って泣き崩れた。
「あ、うん……そうだよね……ゴメン……」
男子の性欲については、それなりに分かっているつもりだったし、友達からも聞いていた。しばらくその気にならなかったので相手をしないでいたら浮気されたとか、逆に体をご褒美にすれば男はコントロールできるとか、そういう話も。
初体験をして以来その気になれないという成美を、健一は理解してくれていた。もう、二人でいても強引に迫ったりすることはない。
それでいて、成美への興味を失う様子は全くなかった。
彼女の事情を、また女性のことを、理解してくれない部分はある。意見が合わないことも多い。
しかし、成美のことを一途に想ってくれていることに関しては、彼女は疑っていなかった。
それさえあれば、あとは一緒に色々と経験して、話し合って、次第に変わっていくことはできると成美は思っていた。
少なくとも、クラスの友達があてがおうとしていた見も知らぬ男たちと寝るくらいなら、健一に対して譲れるところは譲り、我慢できるところは我慢している方が、遥かに幸せになれそうだった。
だからその時も、驚きはしたものの、そんなことまで正直に相談してくれるということに悪い気はしなかった。
「いや、だから何かさせてくれって話じゃない。成美がいいと思うまで今は待つ。たださ……」
実際問題として、成美のことを考えて自分で処理しているのだと彼は言った。
しかしやはり、恋人と一度は経験したにもかかわらず、想像だけで慰めている今の自分は何なのだろうかと虚しく感じる時もあると。
「だから、できたら……成美を感じられるような物を貸してもらうことって、できないか?」
「感じられる物?」
「他の男には触らせないような、彼氏として認めてくれてるって確認できるような……身に着ける物とかさ」
「何それ? ……ハンカチ、とか?」
「いや、まあ方向性としてはそういうことなんだけどさ。使い道から考えて、つまりハッキリ言えばだな……下着とか……」
「はぁ!? ば、バッカじゃないの? 何言ってんの? 下着って……使ったやつ?」
「新品じゃお前のものとはいえないだろ……洗濯は、まあ、してあってもいいけど」
「当たり前でしょ!?」
下着は、無理だった。
ただ、これでもなお性に関しては健一の方が譲歩してくれていると思っていたし、他の女性の写真や動画などを使われるのも癪だった。
だから中学の授業で使っていた水着を渡した。汚れはないし、もう着ることもない。肌が直に触れていた、性を意識させる、身に着ける物だ。
中1の時に母に頼んで、肩の部分に印を縫い付けてもらってあった。今となっては恥ずかしい気もするが、当時はこんなものにも自分だけの特別感が欲しかったのだ。母は器用に、元からそういう製品であるかのように、成美だけの印を縫ってくれた。
健一は喜んで受け取って……その夜の成美は、カーテンの向こう側が気になって仕方がなかった。
●
翌週、部室で香織と翠からスマートフォンの画面を見せられた。
肩の所に印の付いた、成美の水着。それが見知らぬ女性の体と一緒に写っていた。
「どうして……?」
顔は写っていない、仰向けの裸の女性。その胸から股にかけて、ちょうど温泉などに行った時にタオルで隠すように、水着が覆っていた。脚を通して着てはおらず、体の前に当てている。他人の水着を実際に着ることにはさすがに抵抗があったのか、その豊満な体がそもそも収まらなかったのか。
「どうして……!?」
紺色の生地の表面には白い粘液が飛び散って、その周りは色が変わっていた。
成美は顔を覆って泣き崩れた。
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