上 下
80 / 112
7本目 あの日の女子バスケットボール部

信頼 7-5

しおりを挟む
「正直さ、ずっと我慢してるんだ……」

「あ、うん……そうだよね……ゴメン……」

 男子の性欲については、それなりに分かっているつもりだったし、友達からも聞いていた。しばらくその気にならなかったので相手をしないでいたら浮気されたとか、逆に体をご褒美にすれば男はコントロールできるとか、そういう話も。

 初体験をして以来その気になれないという成美を、健一は理解してくれていた。もう、二人でいても強引に迫ったりすることはない。

 それでいて、成美への興味を失う様子は全くなかった。

 彼女の事情を、また女性のことを、理解してくれない部分はある。意見が合わないことも多い。

 しかし、成美のことを一途に想ってくれていることに関しては、彼女は疑っていなかった。

 それさえあれば、あとは一緒に色々と経験して、話し合って、次第に変わっていくことはできると成美は思っていた。

 少なくとも、クラスの友達があてがおうとしていた見も知らぬ男たちと寝るくらいなら、健一に対して譲れるところは譲り、我慢できるところは我慢している方が、遥かに幸せになれそうだった。

 だからその時も、驚きはしたものの、そんなことまで正直に相談してくれるということに悪い気はしなかった。

「いや、だから何かさせてくれって話じゃない。成美がいいと思うまで今は待つ。たださ……」

 実際問題として、成美のことを考えて自分で処理しているのだと彼は言った。

 しかしやはり、恋人と一度は経験したにもかかわらず、想像だけで慰めている今の自分は何なのだろうかと虚しく感じる時もあると。

「だから、できたら……成美を感じられるような物を貸してもらうことって、できないか?」

「感じられる物?」

「他の男には触らせないような、彼氏として認めてくれてるって確認できるような……身に着ける物とかさ」

「何それ? ……ハンカチ、とか?」

「いや、まあ方向性としてはそういうことなんだけどさ。使い道から考えて、つまりハッキリ言えばだな……下着とか……」

「はぁ!? ば、バッカじゃないの? 何言ってんの? 下着って……使ったやつ?」

「新品じゃお前のものとはいえないだろ……洗濯は、まあ、してあってもいいけど」

「当たり前でしょ!?」

 下着は、無理だった。

 ただ、これでもなお性に関しては健一の方が譲歩してくれていると思っていたし、他の女性の写真や動画などを使われるのもしゃくだった。

 だから中学の授業で使っていた水着を渡した。汚れはないし、もう着ることもない。肌が直に触れていた、性を意識させる、身に着ける物だ。

 中1の時に母に頼んで、肩の部分に印を縫い付けてもらってあった。今となっては恥ずかしい気もするが、当時はこんなものにも自分だけの特別感が欲しかったのだ。母は器用に、元からそういう製品であるかのように、成美だけの印を縫ってくれた。

 健一は喜んで受け取って……その夜の成美は、カーテンの向こう側が気になって仕方がなかった。

   ●

 翌週、部室で香織とみどりからスマートフォンの画面を見せられた。

 肩の所に印の付いた、成美の水着。それが見知らぬ女性の体と一緒に写っていた。

「どうして……?」

 顔は写っていない、仰向けの裸の女性。その胸から股にかけて、ちょうど温泉などに行った時にタオルで隠すように、水着が覆っていた。脚を通して着てはおらず、体の前に当てている。他人の水着を実際に着ることにはさすがに抵抗があったのか、その豊満な体がそもそも収まらなかったのか。

「どうして……!?」

 紺色の生地の表面には白い粘液が飛び散って、その周りは色が変わっていた。

 成美は顔を覆って泣き崩れた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

処理中です...