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2本目 親友と彼女と女子バスケットボール部
ブルーカラー 23-8
しおりを挟む僕は翠さんの考えた台本通りの内容を答えた。
「以前からスポーツに興味はあったんです。一度だけですが、ミニバスケットボールの見学に連れていってもらったことも。ただ僕は、体格とか体力には自信がありませんでしたし、あとは家のこともあって……保護者が夜勤のある勤めをしていた頃は僕が早く帰って家事をしたかったですし、休日などに送り迎えをしてもらうのも難しかったんです」
家庭状況などの部分は自分で付け足した。
「けれど、アルバイト先で女子バスケ部のみなさんの様子を見たり話を聞かせてもらったりして……やっぱりそういう世界にも関わってみたかったという気持ちに気付かされました。学校の部活動ができる機会なんて、多分もうありませんし……」
先生は頷きながら聴いてくれていた。まるっきりの嘘というわけではないけれど、申し訳ない思いだった。
「もちろん、今から選手としてというのは無茶だと思います。でも翠さんにその気持ちを相談したら、ちょうど女子バスケ部は人数が少ないから、マネージャーとして人手が増えれば助かると言ってもらえて。今は男子バスケ部は活動していないそうなので、そちらでマネージャーをするという選択肢もありません。ですからどうか、お願いします」
暗記した内容を何とか思い出しながら頭を下げると、先生は「よく分かった」と頷いてくれた。
「本来ならば活動内容や費用についての資料を持ち帰って保護者の承諾を得てもらうところだが……あなたの場合は先程、済んでしまった」
その手には、丁寧な字で「小暮伶果」の署名が済んでいる入部届があった。
伶果さんには昨夜、話をした。とても喜んで、応援すると言ってくれたけど……もちろん真相は明かせないままなので、罪悪感があるばかりだ。かかった費用は、いずれ必ず返そうと思う。
自分自身の欄に署名した用紙を先生に手渡して、僕は女子バスケットボール部員になった。
「部室の使用などについては正副部長が調整してくれ。では小暮希、今日からよろしく頼む」
●
そうして始まったマネージャーとしての部活動。
朝は各自の自主練習なので、基本的には参加しない。部員たちの着替える時間もまちまちなので、下手に部室に出入りすることもできないし。
放課後は、まず制服のままで部室棟から体育館まで荷物を運ぶ。籠とボール、それから給水用のジャグなどだ。それを、2階にある部室から階段の下までは女子部員たちが出しておいてくれることになった。
数回に分けて荷物を体育館まで運んだら、ジャグに麦茶を作る。容量いっぱいにすると、なかなか重い。これは練習中も残量を確認して、必要なら注ぎ足していく。
それが済んでコートをモップがけしているうちに、練習着姿の部員たちが体育館にやって来るのだ。
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