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2本目 親友と彼女と女子バスケットボール部
その感覚 22-8
しおりを挟む月曜の朝。
よく眠れなかった僕は、時間ギリギリに登校した。
前の席で友達と喋っている成美さんの姿を見た時に湧き上がった感覚を、何と呼べばいいのだろう。
僕には性行為をさせてくれる異性がいるという優越感。彼女がその体を僕に任せてくれたことを思い出しての征服感。他人が知ることのできない秘密を二人で共有しているという特別感。
べつに彼女のことが好きだったわけでもなく、恋人同士になったというわけでもないのに。僕は胸の高鳴りを快く感じながら、声をかけた。
「な、成美さん、おはよう……!」
この時は、正直なところ彼女に甘えていたのだと思う。
顔を赤らめて挙動不審な僕に、一緒にいた女子は怪訝そうな顔を向けた。
成美さんは眉を寄せながら、目線をゆっくりとこちらに向けて言った。
「何? なんか今日キモいんだけど……健一があたしとどんなことシてるか聞いてるにしてもさ、目の前で妄想すんのやめてくんない?」
女友達は噴き出した。
成美さんの機転によって僕は「男友達から聞かされた彼女との性生活を、その相手の前で思い出して挙動不審になる童貞男子」にされたわけだ。
やがてスマートフォンにメッセージが飛んで来た。
『あんな態度とったら、あたしとアンタに何かあったって周りにバレバレでしょ!? もうクラスでは用もないのに話しかけないで! もしバレたら、アンタが終わりなんだからね!』
その通りだった。健一と成美さんの仲も終わってしまうかもしれないし、僕の学校生活も終わってしまう。どちらも何としても避けなければいけないのに。授業中、僕は一人で猛反省した。
中学時代に先輩に片想いした時も、そこから生まれる衝動によって突き動かされていたと思う。その時はそうすることが一番いいと思った行動であっても、後から思い出すと恥ずかしくなったり。
それと同じかそれ以上のことが、たった1回、しかも体だけの関係を持ったことでも起きるのだと分かった。
健一は、一度は成美さんと結ばれたけれど、その後は拒まれていると言っていた。彼も、そういう何かに突き動かされて、更衣室に忍び込んだのだろうか。
●
家庭科の教員は学校に1人だけなので、その研究室は安斉千華子先生の専用になっており、そして意外と散らかっていた。
僕は、部長の香織さんと副部長の翠さんに連れられて、そこを訪れた。
「正副部長は了解しているということで、いいんだな?」
授業のある日も、もちろん眼鏡にパンツスーツ姿の先生は、僕がマネージャーとして入部することについてそう確認した。そして2人が僕の両脇で『はい』と声を揃えると、頷いて僕に尋ねた。
「なぜ女子バスケットボール部のマネージャーなのか、私にも聴かせてもらっていいか? 面接試験というわけではないから、率直に答えてくれればいい」
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