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2本目 親友と彼女と女子バスケットボール部

置いてくる 12-6

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 これは、もう僕には分からない感覚なので、うなるしかなかった。何しろ僕にはそういう相手がいたこともなく、2度目どころか初めて関係を持つような相手のあてもなかったから。

 セックスレス……というのだろうか。そもそもそういうことをしない恋人同士だっているわけなので、プラトニックと言うべきだろうか。でも一度は、したわけだからなぁ……。

「だからさ、正直に頼んだんだぜ。代わりに成美を感じられるような物を、身に着ける物を貸してくれって。でも下着は嫌だって断られてさ……」

 え、本当に? と僕は内心で驚いた。付き合うと、そういうこともできるのだろうか。いや、自分だったら何を借りたいというわけでもないけれど。

「そんな中で今日、待ち合わせの前に学校でシャワーを浴びてくるって知った時、思い付いちまったんだ。中途半端な時間に部活を早退してシャワーを使うなら、他に誰もいないんじゃないか。更衣室に入っても誰にも見られないんじゃないかってさ……」

 実際、こんな時間帯にこの場所に近付いたのは、部活をやってもいないのに学校を訪れた上、たまたまお使いを頼まれた僕だけだったわけだ。

「彼女でもない他の女子だったら、こんなことをしようとは思わない。成美は恋人関係は続けてくれているわけだし、いつかそっちの方もうまくいくはずだ。そしたら、ちゃんと謝って返す。彼氏でもない赤の他人が持っていくわけじゃない」

 健一は片手を僕の肩へ乗せて、真摯な目で訴えてきた。
「格好悪いところを見せちまったけど、成美には黙っていてくれ……お前だからこそ、頼む。分かってくれ」

「……健一」
 僕は、肩を掴まれていない方の手で、彼がバッグを持っている方の腕に触れた。
「やっぱり、それは返した方がいいよ」

「お前……」

「誰が持って行ったか、成美さんは分からないんでしょ? 学校の中で、自分の下着とかをだよ。可能性のある全ての人を疑わなきゃいけなくなる。自分が特に狙われているのか、誰のものでも良かったのか、生徒なのか大人なのか、性的な興味なのか、それとも嫌がらせやイジメなのか、色んな可能性も考えてしまうと思う。健一は、大切な成美さんにそんな思いをさせたいの?」

 彼はなおも何か言おうと口を開きかけた。けれどそのまま数秒が経って、結局、何も言わずに彼の方から視線を外した。
「お前の言うことは、もっともだ。……でも、もう今回は、こうやって持って来ちまった。こんなことしたって分かったらそれこそ、俺たちは終わっちまうかもしれない……今は、勘弁してくれよ」

 今回だけは、このまま行かせてくれと言うことか。僕は少し考えた。
「いや……まだシャワーを使っている音が聞こえてる。元通りに戻しておけば何もなかったことになる。それ以上は僕も何も言わないよ。急ごう、健一」

「いや、ちょうど出てくるかもしれないだろ。鉢合わせたら……無理だ。ほんとに勘弁してくれ……頼むよ……」

「じゃあ」
 僕は手を伸ばして、その荷物の持ち手に添えた。
「僕が返してくる」

「は……っ!?」

「万が一にも鉢合わせたら、最初から僕が侵入したって言うから大丈夫だ。僕は成美さんがこの時間にシャワーを使っていることを先生から聞いているから、辻褄つじつまは合う。健一のことは口が裂けても言わないよ」

「そんなこと、お前にさせるのは……」

「いいから。僕は成美さんにとって何でもない相手だし。健一との仲に免じて、校内に知られることだけはゆるしてもらうよ。それにそもそも、鉢合わせたらの話だ」

 その時は、限られた時間の中で、それが最善の道だと僕は思ったのだ。

「早く、どこにどう置いてあったか教えて。そうしたら健一はここを離れた方がいい。鉢合わせた時に成美さんが声を上げるかもしれないから。この辺りにいるのに駆け付けないのはおかしいし、そうしたら僕は君に殴られないといけなくなる」


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