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本編〜アリアベル編〜
29.ルール違反 ※
しおりを挟む無理矢理気味です。
~~~~~~~~~
アリアベルが一人で寝ている所へ、テオドールはやって来た。
思い詰めたような表情の彼に、尋常ではない様子を察し出入口に立つ護衛は身構えたが、それが王太子と分かると敬礼をした。
いつもであれば一言声をかける主に訝しく思いつつも、ゆっくりと扉を開け中に入る姿を見送るしかなかった。
アリアベルは穏やかな寝息を立てていた。
柔らかな金の髪、白い肌、伏せられた睫毛に小さな唇、掛布の上からでも分かる曲線美。
どれもがテオドールを誘い、気分を高揚せた。
ギシ……とベッドに膝を突き、ゆっくりと掛布をめくっていくと夜着に身を包んだ愛しい妻の身体が現れる。
細い首筋に膨らみのある上半身。
それを見たテオドールの理性は弾け飛んだ。
アリアベルを包む夜着を力任せに引き裂き、まろび出た胸をわし掴みにすると口に含み、その頂きを貪った。
「――っ!?誰っ」
ジュルジュルと音を立て舌を縦横無尽に這わせ、片方は指で摘み捏ねながら好きなように愛撫する。
その刺激に目を覚ましたアリアベルは、自身が置かれた状況に混乱し身を竦ませた。
「テオ……?どうしてここに……」
小さく発した声に反応したテオドールは、仄暗い目をアリアベルに向け、その唇を喰らい尽くすように口付けた。
「んぅっ!?」
性急で荒々しい口付けに応じつつも、アリアベルは戸惑いを隠せない。
いつもは自分を蕩けさせるように優しく愛を伝えるかのように丁寧にしてくれていたが、今はまるで獣のように食い尽くされるのではないかと怖くなった。
――と、同時にテオドールから薫る自分のものでは無い匂いに気付いた。
(こ、れは……)
テオドールの付けているものでもないそれは、彼が自身でもアリアベルの部屋でも無い場所にいた事を如実に表していた。
つまりそれは。
(まさか、リディア様を抱いた後に来たの……!?)
途端にぞわり、とアリアベルの身体を怖気が走った。
夫から薫る匂いで息苦しくなって、せり上がるものを我慢する。
「テオ、ねぇ、やめて、待って、ねぇ、テオ……」
か弱い力で押し退けようとするが、びくともしない。
それどころかテオドールはアリアベルの身体中に痕を付けながら舌を這わせていた。
やがて蜜口に指をやると、無遠慮に侵入させていく。
「ひっ……」
嫌なのに、止めてほしいのに、五年間テオドールに愛され慣らされた身体は素直に蜜で潤ませる。
「やめ、て……」
「濡れてる」
一言発したテオドールは陰唇を上下に擦りあげた。
「ひぁっ、ゃっ……、やめ、いやあ!」
ぐちゃぐちゃと音が響くのに、アリアベルは羞恥を隠せない。
対してテオドールは歓喜して夢中で指を動かした。
秘芽を掻き、転がし、弾くと蜜は更に溢れてくる。
その蜜と絡めながらくりくりと動かせばアリアベルは腰を浮かせ自然に動いてしまい、それがまた心と裏腹で苦しくなった。
中に指を差し入れられると待ち侘びていたかのように中が蠢き、もっとしてほしいと誘ってしまう。
「テオ、やだ、やめて、お願い、っふ、ぅあっんんっ」
「やめない」
いつもより口数が少なく、お願いしても止めないその態度にどうして、と涙が出てくる。
「テオ、どうしたの……、お願い一度話を……」
あくまで拒否の態勢のアリアベルに苛立ち、テオドールは指を引き抜いたかと思うと自身の夜着を脱ぎ捨て、既に痛い程勃ち上がったものを妻の秘所に一気に突き立てた。
「ひぁああああああっ」
「……っく……」
途端にアリアベルは中を締め付け達してしまい、それに持って行かれたテオドールもぶるりと腰を震わせ中に放った。
だがそれだけでは勿論おさまらず、妻の腰を掴むと貪るように腰を振り始めた。
「やだっ、いや、やめて!あっんんっいやぁ、ひあぁっ」
突き立てられたそれが少し前まで他の女性に入っていたと思っているアリアベルは、快楽を得ながらも心はバラバラになりそうだった。
リディアとの閨があった事を知りたくなかった。
自分以外を抱いたあとに来てほしくなかった。
リディアを酔わせただろうそれを、直後に挿れて欲しくなかった。
ルール違反にアリアベルはショックを受け、今すぐここから抜け出したいのに身体はテオドールに抱かれ歓喜し、はしたなくよがってしまう自分に嫌悪が湧いた。
だからテオドールが本当は泣きそうな顔をしているなど気付かない。
「やめ、あっ、ああっいや、も、いや……」
虚しくて、悲しくて、どうしてこうやって組み敷かれているのかと心が凍りついていく。
いつの間にか涙が溢れ、それでもただなすがままされるがままに身体を貪られた。
何度も体位を変え、何度も中に放たれ、何度も絶頂を迎えさせられ、ようやくテオドールが落ち着いた頃には声すら枯れ果てていた。
正気を取り戻したテオドールは、アリアベルの惨状を目の当たりにして青褪めた。
ベッドに力無く横たわる姿、身体中無数についた鬱血痕、泣き腫らした目はどこか虚ろで、己が放った白濁がどろりと垂れている様を見て、叫び出したくなった。
「――ベル……!!ごめん、俺は……なんてことを……」
慌てながら身体を拭くいつもの夫の姿に、アリアベルは手を伸ばし、思いっきり振りかぶった。
ぺちっ。
だが散々貪られた彼女の手は、テオドールの背中を弱々しく叩いただけで何のダメージも与えられない。
「止めてって言ったのに……」
「――っ…ごめん……」
「嫌だって、言ったのに……!!」
「……ごめん……」
「リディア様を抱いたその足で来てほしくなかった……!!」
悲鳴のような声は、どこから出るのか不思議なくらい大きくて。
枯れたはずなのにぼろぼろ溢れる涙は止まらずに。
「ベル……」
「触らないで!!」
テオドールの伸ばした手を、アリアベルは振り払った。
「ベル、待って、聞いて」
「嫌よ」
「頼む、聞いて」
「いや!聞かない!いや!!」
「ベル!これだけは聞いて!」
悲痛に叫ぶテオドールに、アリアベルはたじろいだ。
しかし睨み付けながらテオドールの言葉を渋々聞く事にした。
気まずそうに顔を歪め、目を伏せがちにテオドールは口を開く。
「俺はリディア嬢を一度も抱いていない」
その言葉は到底信じられるものではなかった。
「嘘よ。テオの嘘つき。知ってるわ。七日程前、真夜中に離宮から出て来る貴方の姿を見たって言ってた使用人がいたわ。
一昨日にも、離宮から戻って来たって。
その時に閨があったのでしょう?」
はらはらと涙を流しながらアリアベルはテオドールに吐露した。
「私に言えなかったのは、リディア様を抱いたからでしょう?
いいのよ、気にしなくて。だって子を設ける為に必要だもの。分かってるわ。
今日もそうでしょう?
でもね、リディア様を抱いた事を貴方が知らせてほしくなかったわ……!!」
日頃慎ましく淑やかなアリアベルが感情も顕に泣き続ける姿は、テオドールの胸を刺した。
だが彼はそれでも真実を伝えなければと、アリアベルに向き直る。
嫌だと、触れるなと暴れる妻をシーツで包み、抱き締めた。
「七日前、離宮に行った。リディア嬢との閨の為に。
緊張を解そうとして酒を飲み過ぎてそのままソファで寝てしまった。
起きた時にはリディア嬢は別の部屋で休んだらしくて、そのまま出て来た。
一昨日、もう一度行った。今度は酒を控えた。
けどベッドに上がった途端に吐き気が来て、どうしてもできなかった」
ぎゅ……っと、アリアベルを抱き締める腕の力が強くなり、アリアベルは信じられない気持ちでその腕を掴んだ。
「今日も……、行ったんだ。今日こそはしなきゃいけないって。じゃなきゃ孕みやすい時期を過ぎてしまう。
だから……媚薬を使った。
…………けど、無理だった……」
「え……」
そう言ったテオドールの声は震えていた。
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