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大好きな君が、いつかは
しおりを挟むずっと好きだった女性がいた。
殿下の側近として隣国に行った際、歓迎の夜会で一目惚れした。
だがその女性には想い人がいて、しかも想い人が彼女の婚約者と知った時には絶望した。
いつだったか、未練がましく彼女に会いに行った事がある。
その時の彼女は頬を染めて婚約者の隣でにこにこしていた。
──婚約者の彼は疎ましそうにはしていたが、時折彼女を見るとその瞳に熱を宿していた。
だから一度は諦めたんだ。
だが彼女と想い人の婚約は解消された。
掻い摘んで聞いた話、彼女の想いは婚約者にとって重荷でしかなかったようだ。
それならばと再び婚約を打診するとあっさり了承された。しかもこちらの国に留学して来るらしい。
そんなわけで今、俺の目の前にはその彼女がいる。婚約者だからどうせなら余っている部屋に住めばいいと説得した結果、戸惑いながらも了承してくれた。
それから俺は毎日彼女に愛を囁いた。
失恋したての彼女は中々元婚約者を忘れられないみたいだけど、最近では少しずつ笑顔を見せてくれるようになった。
「これは?」
今日は年に一度の恋人の日。
互いに感謝を告げようという日である。
だから俺は甘いお菓子を彼女に渡した。
「日頃のお礼。あと願掛けかな」
「願掛け?」
きょとんと見上げる彼女を愛おしく想う。
「君が早く俺を好きになってくれますようにってね」
彼女の額に軽く口付けると、ぽかんとしていた彼女は顔を赤くした。
それからごそごそとして。
「私も……。あなたに……」
それは小さな包みだった。
開けてみると甘いお菓子。
「いつもありがとうございます」
そう言って彼女は頬を染めて笑った。
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