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マクー大陸で家造り

砂風呂体験

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 箱の中から黒い粒を取り出した。プニプニとしてひんやりしている。発泡スチロールというよりは、固いグミの様な感触だけど、さらっとしていて面白い。魔力水のせいなのか、ウィン様が何かしら手を加えたのか、静電気なども起きないので、とても扱い安そうな粒状のクッション材が出来た。

「なかなか、いい感じです。これって、地上人でも、加工できますか?」

「簡単、魔術で純水を作り、ソコに付与したい効果の精霊を呼び出しお願いするだけ。成型までその子達がやってくれる。周りを真空にしてあげると、作業がしやすいからやってあげて、でも、真空状態でなくても出来る。ちょっと、時間はかかるけど」

「ん?付与したい効果?」

「ん?夏だし、冷気をまとわせるようにして、作らせた。触って嬉しいひんやりクッション、欲しい」

 あ、ウィン様が欲しいから、先ずは、そういうクッション材を作ったんですね…触ってひんやりするような布ってあったかなぁ?それは、ディルに相談だな。

「成る程…では、先ずは、私が挑戦してもよろしいでしょうか?」

「いいですよ。この箱使ってください」

「ありがとうございます」

 ノワールさんが、ウィン様の説明を聞き、挑戦することになった。
 横穴から、粒を一すくい取ってきて、箱の上で詠唱を始める。ノワールさんは、魔王様とは、違って一定のリズムで優しい感じの詠唱の仕方だ。
 ノワールさんが、出した水球の中でも攪拌され、やがて小さな粒が出てきた。ウィン様のより小さな粒の様に見える。

「うわっ、一回で成功?スゴい!」

「ウィン様が分かりやすく教えて下さいましたし、大精霊が二柱おられますからね。精霊達がとても素直です」

「それでもスゴいです。触ってもいいですか?」

「どうぞ」

「粒が細かいから、ちょっと固く感じますね。でも…冷たくないし、暖かくもない、どんな精霊に頼んだんです?」

「先ずは、タマちゃん用ですからね。地属性の精霊達にお願いしてみました」

「えっ、それってまさか…」

 にぎにぎと触感を楽しんでいた手を広げてみた。手の上に乗っているように見えるけど…

「う、浮いてる?」

「粒と同じ高さだけ浮くようにしてもらいました。ですから、それが多く集まると、少し浮いた状態で漂うことが出来るかと思いまして」

 うわっ、空飛ぶ絨毯じゃなくて、空飛ぶクッション?でも…プニプニのクッションの上に乗ってるタマちゃん?

 それって、めちゃかわいいのでは?

「ノワールさん、良いことこと思い付きますねぇ」

「んん、私にも作って」

 ウィン様は、自分で飛べるのに…

「リョウ、それ関係ない」

「え、ちょっと思ったツッコミにツッコミ返さないで下さい。もう、読まれないようにしますよ」

「それはダメ。だから、気を付ける。ごめんなさい」

 何で、長いこと生きてるのに、こんなたどたどしいんだろ?ウィン様、かわいい…じゃなくて、よし出来るなら、加工してしまおう。


 半魚人属は、水中活動得意な種族で、魔力は、人よりちょっと多いくらい。得意な魔術も水系で他の魔術は、余り得意ではない人が多い。そこで、横穴から粒を取り出してきて、空いてる横穴を借り詰め込んで、ノワールさんが、結界で真空部屋を作製、そこに、純水を出すのを手伝ってもらい、モンディール様やウィン様と協力して、精霊達に指示を出して、どんどんと加工していく。

 やはり大精霊がいると、早い早い、大量にあった玉はあっという間に、粒のクッション材になっていく。

 僕とノワールさんは、付与した効果の違いで分け、採取の時に使うディル特製の一番大きな麻袋に入れていく。

 半魚人族の砂風呂を埋め尽くしていたから、相当出来ると思ったけど、加工すると、五分の一ぐらいに減ってしまって、思ったほど大量にはならなかった。

「え?」

「何ですか?ウィン様」

「こんなに出来たのに…」
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