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遊歩道整備
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五月中旬、 常務の飯田 義成が、一応、飯田の飼犬とされているコリーと一緒に出勤してきた。
「おはよう」
皆に向かって挨拶する。
「おはようございます。おや、カイさん、久しぶりです。そろそろ、開店の時期ですか?」
カウンター内で配膳していた保坂が最初に気づき声をかける。
『うむ。琴子が、来月早々に再開したいと言っておったので、修繕を頼みに来た』
「今年は雪が多かったから、かなりやられてないですか?」
『ワシもそう思っておったのだが、昨年来た鼠共が何やら補強してくれたのでな、大きな破損はなかったぞ。ああ、それから、今は、カイではなく「らっしぃ」と呼んでくれんと困るぞ』
「あ、そうでしたね、気を付けます」
飯田家に住むコリーのラッシーは、齢八百を越える志於宇という物の怪だ。昔は群で行動し人々を襲っていたが、長い年月の中で、人と共に暮らすものが出てきた。元々は、赤毛一色で二メートルの巨体であるが、今は、一メートルちょっとというコリー犬に化けている。昔からの名は、カイというが、一年程前にコリーに化けてからはラッシーと呼ばれている。これは、義成の妻である琴子が、ドッグランや小動物の遊び場を併設した動物同伴OKのカフェを開店したのに合わせて、看板動物の一匹という事になっているからだ。
「おや?ラッシーさん、いらっしゃい、ああ、そろそろ開店ですか?今年はどうします?」
『雪が溶けたから、再開したいと言っておるから、敷地の整備を頼みに来た。それと…』
事務所から顔を出して挨拶してきた社長に、仕事の依頼をし始めたが途中で、飯田の顔を見上げ、眉間にシワを寄せた。
「ククッ、それとな、昨年、話題になったから県外からの問い合わせも多くてな。ホームページとか立ち上げたいから、その辺りもウチに頼みたいそうだ」
飯田は楽しげにもう一つの依頼内容を伝える。
「ああ、躾に失敗した犬がカフェで遊ばせたら、わがまま言わず賢い子になったとかなんとか、噂されてましたね」
「ラッシー達の事が見抜けないほど、堕落したヤツラだったからな、あのビビリ方は凄かったなぁ」
『ふん!礼儀も守らぬ愚か者だ。あのようなもの達を又相手するとは…琴子も酔狂な奴だのう』
「なんだかんだ言いつつ、琴子さんの力にはなるんですね」
『うぬ?琴子が我らの頭だからな、その方針に従うのは当たり前ではないか』
「だ、そうですよ。飯田さん」
「…お前達も、結婚すれば分かるぞ。何だかんだ言っても、嫁には敵わんぞ。…いや、神部と保坂は既に分かるか…」
「まぁ、そうですね…」
飯田に言われ、神部と保坂は複雑な表情で笑みを浮かべた。
まぁ、惚れた相手の言動が気になるのは仕方がないし、何かしらワガママを言われても、かわいいと思って、叶えてやりたくなる。それで、自分が幸せなのだから良しとしよう。
神部と保坂が、自分を納得させている間に、飯田とラッシーと社長で仕事の話は進む。
「では、明日の朝、保坂くんと飯田でカフェに行き、修繕箇所やホームページ製作用の写真を撮ってきて下さい」
「遊歩道やドッグランの方もですか?」
「はい。森の中も整備が必要ならやってしまいましょう。日置くんも来た事ですし」
「分かりました」
「おはよう」
皆に向かって挨拶する。
「おはようございます。おや、カイさん、久しぶりです。そろそろ、開店の時期ですか?」
カウンター内で配膳していた保坂が最初に気づき声をかける。
『うむ。琴子が、来月早々に再開したいと言っておったので、修繕を頼みに来た』
「今年は雪が多かったから、かなりやられてないですか?」
『ワシもそう思っておったのだが、昨年来た鼠共が何やら補強してくれたのでな、大きな破損はなかったぞ。ああ、それから、今は、カイではなく「らっしぃ」と呼んでくれんと困るぞ』
「あ、そうでしたね、気を付けます」
飯田家に住むコリーのラッシーは、齢八百を越える志於宇という物の怪だ。昔は群で行動し人々を襲っていたが、長い年月の中で、人と共に暮らすものが出てきた。元々は、赤毛一色で二メートルの巨体であるが、今は、一メートルちょっとというコリー犬に化けている。昔からの名は、カイというが、一年程前にコリーに化けてからはラッシーと呼ばれている。これは、義成の妻である琴子が、ドッグランや小動物の遊び場を併設した動物同伴OKのカフェを開店したのに合わせて、看板動物の一匹という事になっているからだ。
「おや?ラッシーさん、いらっしゃい、ああ、そろそろ開店ですか?今年はどうします?」
『雪が溶けたから、再開したいと言っておるから、敷地の整備を頼みに来た。それと…』
事務所から顔を出して挨拶してきた社長に、仕事の依頼をし始めたが途中で、飯田の顔を見上げ、眉間にシワを寄せた。
「ククッ、それとな、昨年、話題になったから県外からの問い合わせも多くてな。ホームページとか立ち上げたいから、その辺りもウチに頼みたいそうだ」
飯田は楽しげにもう一つの依頼内容を伝える。
「ああ、躾に失敗した犬がカフェで遊ばせたら、わがまま言わず賢い子になったとかなんとか、噂されてましたね」
「ラッシー達の事が見抜けないほど、堕落したヤツラだったからな、あのビビリ方は凄かったなぁ」
『ふん!礼儀も守らぬ愚か者だ。あのようなもの達を又相手するとは…琴子も酔狂な奴だのう』
「なんだかんだ言いつつ、琴子さんの力にはなるんですね」
『うぬ?琴子が我らの頭だからな、その方針に従うのは当たり前ではないか』
「だ、そうですよ。飯田さん」
「…お前達も、結婚すれば分かるぞ。何だかんだ言っても、嫁には敵わんぞ。…いや、神部と保坂は既に分かるか…」
「まぁ、そうですね…」
飯田に言われ、神部と保坂は複雑な表情で笑みを浮かべた。
まぁ、惚れた相手の言動が気になるのは仕方がないし、何かしらワガママを言われても、かわいいと思って、叶えてやりたくなる。それで、自分が幸せなのだから良しとしよう。
神部と保坂が、自分を納得させている間に、飯田とラッシーと社長で仕事の話は進む。
「では、明日の朝、保坂くんと飯田でカフェに行き、修繕箇所やホームページ製作用の写真を撮ってきて下さい」
「遊歩道やドッグランの方もですか?」
「はい。森の中も整備が必要ならやってしまいましょう。日置くんも来た事ですし」
「分かりました」
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